第三十話
名前変換設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ウォール・ローゼ東部のカラネス区の街に、外門が開門される際に鳴らされる、銀の鐘の音が鳴り響いた。
街には調査兵団の兵士達が騎乗した状態で、門が開き、出撃の合図がエルヴィン団長によって放たれる時を待っている。
「付近の巨人は粗方遠ざけたっ!開門三十秒前っ!」
壁上から門付近に巨人が居ないか確認をしていた調査兵が、門を上げる役を担う駐屯兵に合図を出すと、ギリギリと大きな音を立てて、分厚い門を引き上げる歯車が稼働をし始めた。
ジャンは愛馬のブーフファルトの首を撫でながら、兵士たちの合間から見える、自分から少し離れた場所に待機しているハルの横顔を見た。
ハルも自身の愛馬であるアグロの首の後ろを撫でていたが、ふとジャンの視線に気がついて、二人は目が合った。
するとハルは徐に左手の操作装置をホルダーから引き抜くと、柄の表をジャンに見せるように顔の高さに掲げて見せる。
ハルの操作装置の柄には、先日マルコの母であるエミリアから託された、マルコの形見のエンブレムが半分、縫い付けられている。
それに応えるように、ジャンも自身の右の操作装置を引き抜いて、マルコのもう半分のエンブレムを、ハルに掲げて見せた。
「いよいよだ!これより人類はまた一歩前進する!お前達の成果を見せてくれっ!」
「「おぉーっ!!」」
兵士達が鬨の声を上げ、ブレードを天に掲げる中、ハルとジャンは、今は亡き仲間達に祈りを捧げるように、マルコのエンブレムが光る柄へ、そっと口元を寄せて触れた。
そして、ウォール・ローゼの外門が最後まで開き切ると、先陣に立ち白馬に乗ったエルヴィン団長が、大きく息を吸い込んで、空高くまで響き渡るような声を上げた。
「進めーっ!!」
エルヴィン団長の馬が嘶き、大きく前足を上げたのを合図にして、兵士たちは次々と馬を走らせ、壁外へと一気に駆け出して行く––––
「これより、第57回壁外調査を開始する!!前進せよっ!!」
完