第四話
名前変換設定
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「っぅ…!」
ハルはこめかみの辺りを片手で押さえ、苦しげに声を漏らしながら背中から倒れそうになる。蹈鞴を踏んだハルを、後ろに立っていたサシャが慌てて支えに入った。
「っハル?大丈夫ですか…?」
心配気に顔を覗き込むようにして問いかけてきたサシャに、ハルは何も答えることができない様子で、両手で頭を押さえたまま顔を伏している。そんなハルをクリスタは心配して歩み寄る。
「ハル…?一体どうしたの…!?」
そうしてハルの肩に触れようとクリスタが手を伸ばした時だった。
「っ」
ハルはびくりと肩を震わせると、サシャの元を離れ荒々しい足取りでクリスタの方へと歩み寄る。それに驚いた顔をしているクリスタの小さな顎を片手で掴み上を向かせると、その黒い透徹した瞳で顔を覗き込んだ。
先ほどまでの穏やかな様子とは打って変わって、ひりつく様な雰囲気を纏っているハルにクリスタは動揺してしまう。
「ハル…?」
不安になって彼女の名前を呼んだ声が、僅かに震えてしまっていた。
一体彼女が何を考えているのか…、懸命に瞳を見つめ返すが、心中までを汲み取ることはできない。
理解できたのは、先程頭に走った電流のようなものが彼女に異変を起こした原因だということと、そして……自分を見つめている双眼に、こちらの喉が熱くなってしまいそうな程に、ひどく哀しげな影が揺らめいている。ということだけだ。
クリスタはその哀しみがどこから来たものなのかを問いかけたくなって、そっとハルの白い頬に触れようとした時だった。
ガラン!ガラン!
辺りに昼食の終わりを告げる鐘の音が響き渡った。
その音に、ハルははっと我に返ったように息を呑み目を見開くと、クリスタの顎から手を離して、数歩後ろに下がった。
「ごっ、ごめんクリスタ…!突然っ…、私は一体何を…」
ハルは自分でした行動に無自覚だったのか、慌てた様子で額を押さえて狼狽る。顔色もあまり良くない。
「ハル、まるで別人みたいだったけれど…大丈夫なの?」
「おいお前!クリスタに何乱暴なことしてやがる!」
「本当に…ごめん」
心配げに顔を覗き込んでくるクリスタと、怒ったように眉を吊り上げて言うユミルに、ハルは肩を落として謝罪を述べる。
そんな中、サシャが慌てたようにハルへ声を掛けた。
「ああ!ハル!午後の対人訓練、鐘の鳴る前に訓練場に整列…でしたよね!?」
「あ!」
サシャに言われて、ハルはやってしまったと頭を抱えて声を上げた。
集合時間に遅れたとなれば今度はまたどんなペナルティを与えられるか分からない。
「ごめん!サシャ!クリスタにユミル!また今度ゆっくり話そう!!」
ハルは三人に手を振りながら、風のように駆けて訓練場へと向かっていく。
バイバイとサシャとクリスタはその背中に向かって手を振るが、ユミルは傍居たクリスタへと視線を落とす。そしてクリスタの頬が少し赤くなっていることに気がついた。
「…おいクリスタ、なんで赤くなってんだ」
そう問いかけると、サシャもクリスタの顔を見て、「本当ですね!どうかしました?」と首を傾げた。
そんな二人に、クリスタは少しボーッとした様子で自身の両頬を掌で軽く挟んで言った。
「…ハルって、間近で見るととても…綺麗な顔してるんだね」
「「え?」」
「…ちょっと、ドキドキしちゃった…」
「「は!?」」
ユミルとサシャは照れながらそんなことを言ったクリスタに向かって、盛大に驚愕の声を上げたのだった。
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