聴き屋パロディ
「桃本先輩」
急に横から肩を叩かれた。ふわりと甘い匂いが香る。
振り向いてみると、果たして服部くんその人であった。香水までつけているとは、どこまで徹底してるんだ。
わーお、と森里さんの感嘆の声が上がった。
「講堂に残るんじゃなかったの?」
「ほかの連中は残ってます。僕は、その恰好は何だ、表彰式を何だと思ってるんですか、着替えてきなさい、って事務の人にめちゃめちゃ怒られましたよ。もううんざりです、この学部」
服部くんは文芸学科の後輩で、最近純文学の賞をとったから、表彰式に出ていた。しかし、彼は純文学など読まず、もっぱらミステリである。
「いやいや、もっともだと思うよ。とにかく早く着替えなよ」
「着替えなんて持ってきてません」
「あれ、さっきのお客さんじゃないですか。どうしたんですか?2人も手玉に取るなんて桃先輩もやりますね」
服部くんは鴇先生と七森さんを見て言った。
「ちょっと」
変なことを言うのはやめて欲しい。
「あ、こんにちは。七森さやです」
「鴇佐恵子よ。よろしく」
七森さんも鴇先生も平然と挨拶した。なんだろ、この変人慣れは。
「ぼくは服部です。はじめまして」「えっ!」
七森さんが鴇先生を見た。先生もこころなしか驚いている。
「どうかしましたか」
「あ、いえっ!なんでもないです」
ええー、ほんとに後輩だったんだあー......七森さんが小声で呟いた。
「たしかに好みですが、僕のタイプは年下ですね。年下の七森さんみたいな人に、『樹さんったらしょうがないんですから』と」
「ごめん。ぼくが悪かった。気持ち悪いから黙って」
「年下が好きといっても、もちろん桃先輩は例外です。先輩の怯える顔があれば一週間はもちますね」
ぼくはそこを気にしたんじゃない。一体何がもつんだよ!
「桃くん、さっきの演劇、もう始まるんじゃないかしら」
「あ、そうですね!行きましょう桃さん!」
リアル森のくまさん。悪い予感しかしないのに、先生はけっこう楽しみらしい。
「じゃあ、戻りましょうか」
そういった途端、美術棟にサイレンが鳴り響いた。
「待ってくださいっ、そっちは危ないって......」もう聞こえない距離だ。ああ、行くしかないのか.......
僕は二人の後を走り出した。
けっきょく僕はふたりが止まるまで追いつけず、惨めな気持ちになった。途中で作動したスプリンクラーのせいでびしょぬれになったことが惨めさに拍車をかけている。
「先生っ、なんでわざわざ火事がおきたところにっ、」
「ミステリの気配を感じたからでしょう」
「服部君!」なぜいる。
「いやそんなの無いけど。......あ、でも服部くんが犯人かもね」
「ええ!桃さんまで」
「本当ですか?先輩」
服部くんはミステリオタクなので嬉しそうである。
「服部くんが真性の女装癖を持っていたとして、夏、服部くんのシャツが透けてブラジャーが見えているとこるが吉村さんの写真に写り込んでしまった。それを偶然知った服部くんは、その写真を見たかもしれない吉村さんを殺し、写真とともに燃やした。そして火を消すためスプリンクラーをつけた」
「先輩、僕をそんなふうに見ていたんですか?.......残念ながら僕には真性の女装癖は無いので違います。この変態」
ブーメランだけど?
「ちょっと待ってください!あの部屋にはスプリンクラーはありませんでしたよ。私たちで消したんですから」
「そうね。つまり、スプリンクラーをつけたのは殺人現場の火を消すためでは無い。」
急に横から肩を叩かれた。ふわりと甘い匂いが香る。
振り向いてみると、果たして服部くんその人であった。香水までつけているとは、どこまで徹底してるんだ。
わーお、と森里さんの感嘆の声が上がった。
「講堂に残るんじゃなかったの?」
「ほかの連中は残ってます。僕は、その恰好は何だ、表彰式を何だと思ってるんですか、着替えてきなさい、って事務の人にめちゃめちゃ怒られましたよ。もううんざりです、この学部」
服部くんは文芸学科の後輩で、最近純文学の賞をとったから、表彰式に出ていた。しかし、彼は純文学など読まず、もっぱらミステリである。
「いやいや、もっともだと思うよ。とにかく早く着替えなよ」
「着替えなんて持ってきてません」
「あれ、さっきのお客さんじゃないですか。どうしたんですか?2人も手玉に取るなんて桃先輩もやりますね」
服部くんは鴇先生と七森さんを見て言った。
「ちょっと」
変なことを言うのはやめて欲しい。
「あ、こんにちは。七森さやです」
「鴇佐恵子よ。よろしく」
七森さんも鴇先生も平然と挨拶した。なんだろ、この変人慣れは。
「ぼくは服部です。はじめまして」「えっ!」
七森さんが鴇先生を見た。先生もこころなしか驚いている。
「どうかしましたか」
「あ、いえっ!なんでもないです」
ええー、ほんとに後輩だったんだあー......七森さんが小声で呟いた。
「たしかに好みですが、僕のタイプは年下ですね。年下の七森さんみたいな人に、『樹さんったらしょうがないんですから』と」
「ごめん。ぼくが悪かった。気持ち悪いから黙って」
「年下が好きといっても、もちろん桃先輩は例外です。先輩の怯える顔があれば一週間はもちますね」
ぼくはそこを気にしたんじゃない。一体何がもつんだよ!
「桃くん、さっきの演劇、もう始まるんじゃないかしら」
「あ、そうですね!行きましょう桃さん!」
リアル森のくまさん。悪い予感しかしないのに、先生はけっこう楽しみらしい。
「じゃあ、戻りましょうか」
そういった途端、美術棟にサイレンが鳴り響いた。
「待ってくださいっ、そっちは危ないって......」もう聞こえない距離だ。ああ、行くしかないのか.......
僕は二人の後を走り出した。
けっきょく僕はふたりが止まるまで追いつけず、惨めな気持ちになった。途中で作動したスプリンクラーのせいでびしょぬれになったことが惨めさに拍車をかけている。
「先生っ、なんでわざわざ火事がおきたところにっ、」
「ミステリの気配を感じたからでしょう」
「服部君!」なぜいる。
「いやそんなの無いけど。......あ、でも服部くんが犯人かもね」
「ええ!桃さんまで」
「本当ですか?先輩」
服部くんはミステリオタクなので嬉しそうである。
「服部くんが真性の女装癖を持っていたとして、夏、服部くんのシャツが透けてブラジャーが見えているとこるが吉村さんの写真に写り込んでしまった。それを偶然知った服部くんは、その写真を見たかもしれない吉村さんを殺し、写真とともに燃やした。そして火を消すためスプリンクラーをつけた」
「先輩、僕をそんなふうに見ていたんですか?.......残念ながら僕には真性の女装癖は無いので違います。この変態」
ブーメランだけど?
「ちょっと待ってください!あの部屋にはスプリンクラーはありませんでしたよ。私たちで消したんですから」
「そうね。つまり、スプリンクラーをつけたのは殺人現場の火を消すためでは無い。」
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