聴き屋パロディ

近づいてみると、「聴き屋」のテントは意外と小さかった。一人でやってるのかな...少し覗いてみると、
「せ、先生!!」
「どうしたの七森さん、って、え!」
鴇先生も覗いて驚く。
「桃さん、ですよね...」
「ええ...たしかに、5年前なら桃くん大学生くらいだし...」
「でも意外ですね!桃さん芸術学部だったんだ!」
「文芸学科なのかな。この並びだと」
聴き屋の小さいテントの横は文芸学科のコーナーで、字が多そうな部誌が売られていた。
たしかに桃さんは読書家で、休み時間もよく分厚い本を読んでたな。
ふたりで、びっくりですねー、なんかイメージじゃないよね、と言い合っていたら、のれんがめくられた。さっきの遊女さんだ。
「あ、先輩。人待たせてますよ」
「お前がいるからだろ」
仲が良さそうな大学生桃さんと遊女さん。
しかし、この遊女さん、声が男な気がする。


「鴇先生、恋愛相談してついでに桃さんのタイプ聞いちゃいましょうよ」
小声で囁いたら鴇先生は赤くなって黙ってしまった。かーわーいーいー。しょうがないから私が聞いてあげた。
「桃さん、鴇先生って好きな人がいるんですけど全然素直じゃなくて」
「職場の同僚とかですか?」
「そうです。でも、絶対に両思いなんですよ!私から見たら、その人、鴇先生にすごいアプローチしてるんです。ね?」
「してるわけない......」
もう。先生はツンデレだから、ぜんぜん認めない。
「相手が告白してくる素振りはあるんですか」
「わかんないですけど、好きなのは確実です。ね?」
「そんなわけない……」
何言ってもだめだ。
「参考にしたいんですけど、桃さんのタイプってどんな感じですか?」
「ぼくですか!え、ぼく?なんで」
「かわいい系か美人系で言うと?」
「美人系...っていうかかっこいい感じが好きですかね...これぼくの好みいります?」
「そこはクリティカルに問題になりますっ!」
「かっこいい系……」
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