桃くんたちがRPGの世界に入っちゃう

平尾さんも一緒に行くことに鴇先生は反対だったが、最終的に渋々、味方は多いほうが良いしと言った。そういうことで僕らのパーティは4人と1匹に増えた。平尾さんの職業は盗賊らしい。似合うっちゃ似合う。
鴇先生と平尾さんが純粋な暴力で敵を倒し、怪我をしたら七森さんが回復、村を見つけて宿屋に泊まる。僕が何の役にもたっていないということに目をつむれば、敵がばたばた倒れていくのはけっこう爽快だった。
しかし、元いた世界では僕たちはどうなっているのだろう。
もう1ヶ月くらいたったが、向こうでもそうなのか。
動物たちは元気だろうか、家族が心配していないだろうか、同僚に迷惑かけちゃうな、とか、夜に考え始めると止まらなくなる。
そして、セイと服部くんはまだ見付かっていない。そもそもこっちの世界に来ていないのが一番だけど……
今向かっているのは魔王城の前の洞窟だ。
昔、すごく迷った記憶がある。通り抜けられるかな……
おどろおどろしい洞窟についたとき、これまで僕を舐めることしかしてこなかったディオゲネスが急に吠え始めた。暴れるので地面に下ろすと、ディオゲネスはすごく急いだ様子で洞窟に入っていった。僕達は急いで追いかけた。
「どうしたんでしょう、ディオゲネスさん……」
ディオゲネスを追いかけてもう30分くらいたっているが、ディオゲネスはまだ進むことをやめない。もう何十個目かの角を曲がった時、ディオゲネスが止まった。むこうには人影が見えた。敵ではなさそうだ。
「あ、あのーすみませ「敵意ないです!倒さないで!助けてください!」
ん?もしかしなくてもこの声は…………
「セイ!?」「兄貴!?」
急いで駆け寄ると、彼は人をおぶっていた。
「その人……は「服部さん!怪我してるんだ!どうしよう」

七森さんが呪文をかけて1時間ほどたち、服部くんが目を覚ました。「服部くん!大丈夫!?」カシャッ。「先輩。いい顔です」なぜここにもカメラを持ってきているのだろう……まあいつも通りで何よりだ。

周りを探索していたみんなが戻ってきた。
「服部さん、ありがとうございました……」
セイがお礼を言った。セイと服部くんは初めにこの洞窟で目が覚めたそう(運が悪い)で、ずっと迷っていたようだ。服部くんが魔法使い、セイは剣士だそうだけど、セイはLv1で剣がほぼ棒のためどうしようもなかった。
「服部さんが攻撃も回復も全部しないといけなくて……すいません……」
「いえ、僕は2号さんの苦悶の顔も70点はあると思いますよ。先輩には劣りますが」
なにかズレている。
「服部くんは魔法使いなのよね。助かるわ」
「はい。すごいんですよこれ。パルプンテとか。あ、」
なんか出た。
「パルプンテって何が起こるかわからない呪文だよね?」
そんなのを容易に唱えないで欲しい。
「あ、何か光ってるわ」
行ってみると、そこには1冊のノートがあった。ここの世界観とは合っていない。そして、表紙にもももとと書いてある。
「なんだこれ……」
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