桃くんたちがRPGの世界に入っちゃう

「あぶないっ!」
女の子の前にたち、モンスターの斬撃を受ける。
って、痛っ!
夢なのに、なんで痛いんだ?血が出ている。
ま、まさかこれ、夢じゃ……
考えてる場合じゃない!早く倒さないと、このままじゃ女の子と二人で大怪我だ!
しかし、剣というより木片をもつ僕と、二本のガチの武器をもつ敵の差は大きく、女の子を守るのに精一杯だった。攻撃を受けようとして体制を崩し、モンスターと目が合う。
終わりだ……
「桃くん!」
安心感のある声が聞こえた瞬間、誰かが僕の前に立ち、敵を殴った。あんなに苦戦した敵があっさり倒れる。
「と、鴇先生!?」
「大丈夫ですか!」
七森さんも駆けてきた。そして目の前が暖かい何かにおおわれる。ディオゲネスもいるのか。なぜ二人と一匹がここに…という質問は一旦飲みこみ、女の子と村に帰った。

広場で集まってお互いの持っている情報を話し合った。七森さんと鴇先生はそれぞれ仕事をしていたらしいがいつの間にかここにいたという。ディオゲネスがいるのに服部くんがいないのがふしぎだが、2人とも知らないという。
「なるほど。ゲームの世界だったのね」
鴇先生はこの手のゲームをやった事がないよらしい。
「この中華服もゲームの設定?」
「鴇先生、たぶん先生は武闘家ですよ!役職があって、それによって服も変わるんです」
そういえば服がそれぞれ違う。
僕はさっき母親っぽい人に言われたように勇者なんだろうけど、鴇先生の方がかなり主人公っぽいな。
「えっ、もしかして、ディオゲネスさん、賢者じゃないですか!?」
「ほ、ほんとだ……この服。この威厳。」
名前だけは仰々しかった犬が遂に本当にすごくなってしまった。それにしても、犬が魔法を使えるのだろうか。
「七森さんは僧侶だよね、その格好」
「じゃあ、回復呪文できるかもですね!」
七森さんが呪文を唱えると、さっきの闘いの傷がしゅーっと音を立てて消えていった。
「すごいわ。ほんとにゲームの世界なのね」
「それで……どうやって元いた世界に戻ればいいんですか?」
そうだった。鴇先生に会って、なんだかもう安心していたが、夢じゃないんだから自分たちで脱出しないといけない。
「普通に考えたら、魔王を倒す、とかじゃないかなあ…」
記憶では、魔王を倒して、裏面もやって、終わりだった気がするが。
「それだけじゃないでしょう。たくさん冒険したりするんじゃないの」
「そういえば、船に乗って海を渡ったり、砂漠をさまよったりした気がします…」
七森さんはだんだん泣きそうになってきている。
「大丈夫よ、七森さん。さっきだって、桃くん普通なら死んでたでしょう。魔法も使えたし、クリアできるくらいにしてあるわよ」
「そ、そうですよね……!」
たしかに、小学生の僕でもクリア出来たんだから大丈夫かもしれない。しかもこっちには普通のLv1の武闘家より遥かに強いだろう鴇先生もいる。
「よし、行きましょう!」
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