桃くんたちがRPGの世界に入っちゃう

「開きますね…」
ノートを開くと、中にはつたない文字で文章が書いてあった。絵やらシールやらも入り交じっている。なにか見覚えがある。もしかして、
「これ、僕の昔のノートかもしれません」
なんでここに?というのは置いといて、書いた記憶がうっすらある。たしか中身は……
「えーっと、あるところにゆうしゃ桃本がいました。もももとはとてもつよくて「す、ストップ!!」
七森さんが音読し始めたのをいそいで止める。
思い出した。これ、僕が主人公で無双する、ドラクエを舞台にした自作小説だ。
「えー、ゆうしゃ桃本はとてもかっこよく、おんなのこをたすけました。」
「服部くん!やめて!」
黒歴史を掘り返さないで!
「ちょっと見せて」「ちょ、鴇先生まで……」しかし鴇先生はからかうのではなく真面目に読み始めた。なかなか恥ずかしいのだが、先生は真剣なので止められない。
先生は、読み終えたようでノートをぱたんと閉じた。
「やっぱり。今まで起きたことと内容が同じよ」
「え?ちょっと見せてください」
読んでみると、たしかにそうだった。
女の子をモンスターから守ったり、可愛い僧侶と美人の武闘家と旅をしたり。
昔の僕が自分にさせていたかっこいい役割はほぼ鴇先生がやっているが、今まで起きたこととほぼ同じ内容がここに書いてある。さすがに僕を舐めまくる賢者は書いてないけど。
「でも、最後が……」
「そうよね」
ちょうど今、迷っている剣士と魔法使いを助けたところで文は途切れている。みんな、なんとなく考え込んで黙ってしまった。
「ちょっと、変な事言うみたいなんだけど……」最初に口を開いたのは鴇先生だった。なんか照れている。「なんですか?」
「これ、続き書いたらその通りになるんじゃないかしら」
鴇先生は少し照れながら言った。今までフィクションのようなことしか起きていないし、有り得る。
「やってみましょう」「なんて書けばいいですか?」
みんなも口々に賛成した。さっきの無言のとき、皆同じことを考えていたのかもしれない。
「じゃあ、『ゆうしゃ桃本とその仲間の剣士、武闘家、魔法使い、僧侶、賢者、盗賊は実はゲームの外から来ていました。彼らはゲームの外に戻りました。』」
僕が言われた通りに書いていく。
書き終わって、3秒くらいの間の後、また目の前が真っ白になった。
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起きた。実家だ。戻ってきた!
さっきまであんなファンタジーの世界にいたはずだけど、今となってはぜんぜん現実味がない。
連続して携帯が鳴った。みんながグループLINEで夢じゃないか聞いてる。僕も参加しながら、さっきまでの夢みたいな世界の余韻を味わっていた。
ゲームの中では1ヶ月くらい経ってたのに、こっちではゲーム機を起動してからまだ1時間ぐらいしか経っていなかった。変な時間だったけど、楽しかったな。
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