可愛い洋服は私だって着たい。可愛い服を着て、可愛い靴を履いて。でも、一人でそんなに着飾ったって面白くもないし、気づけばいつも代わり映えのない服を着ている。掃除と洗濯、おつかいばかりの仕事で可愛い洋服なんて着たってバカみたいだし。
そう思ってた。
ファッション雑誌を捲る。今流行りのお洋服に身を包んだモデルさんはキラキラしてて、かわいくて、思わずため息が出た。
可愛くなりたい。モデルさんみたいに、とは言わなくても、今よりちょっと。
「・・・ロマノフ・・・」
雑誌で紹介されてる人気ブランドがすごくかわいくて、思わず印をつける。
「たまにはお洋服買いたいな」
そして、ローレンツさんとお出かけするんだ。
この間のカフェはなにも考えずにお誘いできた。でも、今の私にそんな勇気あるのかな？間近で見たローレンツさんは綺麗で、かわいくて、触れた手は大きくて、あのあとずっとドキドキが止まらなかった。あんなに素敵な人に「二人で出かけませんか？」なんて、きっとうまく言えない。
それに、あの表情。
私の手をとったローレンツさんはどこか苦しそうで、なにか傷つけたんじゃないかと不安に思ってしまう。初めて会ったときにもそうだった。悲しい表情のローレンツさんを見るたびに、私のなかでなにかがざわつく。なにか、とても失礼なことをしてしまったような・・・。その理由を聞かなければならないような衝動に駆られるけど、ローレンツさんはきっと教えてくれない。私は知る必要のないことなのかしら？それとも、ローレンツさんが優しいから隠しているのかしら？考えてみるけど、私なんかに分かるはずもないし、だんだん頭がぼんやりしてくる。なにかが無理やり考えないようにさせてるみたい。
「・・・それとも、全、然関係、ない、のかなぁ・・・」
ただ、本当にダンスが嫌だったの？
重くなる瞼に抗えず、私はふわりとベッドに横になった。


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