転生したレジスタンスのメディック
彼らの再会
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古びた絵画。そこに描かれた一人の少女。人形のように愛らしく、どこか不安げに佇んでいる。
博物館は静かで、靴音だけが響く。
最近やってる『オーストリア展』はマルガリータ君が教えてくれた。あの日、ローレンツさんについてきてもらって、初めて行けた憧れのカフェで働く、可愛い男の子。
マルガリータ君と同じ名前の少女の絵が、彼のオススメ。いつも元気なマルガリータ君が博物館が好きなんて驚いたけど、レオポルトさんが連れて行ったのかしら。なんて考えながら、その少女の絵を眺める。なんだか哀しそうに見えるのは気のせいかな?
「マルガリータ王女はスペインのハプスブルグ家からウィーンのハプスブルグ家に嫁いだんです。この絵はお見合い写真みたいなもので・・・」
「同じ家で結婚するんですか?」
それとも、同じ名前の全然別な一族なのかしら?首をかしげる私にローレンツさんは「昔はそういうこともあったみたいです」と答える。
「ハプスブルグ家は自分たちが神から選ばれた一族だと思っていたんです。だから、血が薄まる婚姻を望まなかった。けれど、近親婚を重ねた結果、遺伝子の病気や流産が増えた、と言われていて、マルガリータ王女も度重なる流産とそれに伴う宮廷内のいじめで早逝しました」
「・・・かわいそう・・・」
そんな悲しい人生を歩んだ人の絵だ、ってマルガリータ君は知っているんだろうか。
私の問いにローレンツさんは「知ってると思いますよ、多分・・・」と気まずそうに答える。なんだか重たい空気がいたたまれなくて、私はわざと明るい笑顔を作った。
「そ、そんなことより、ローレンツさんは本当に物識りなんですね!すごいです!ローレンツさんをお誘いして、本当に良かったです!」
ローレンツさんをデートに誘っちゃえ、っていうのはマルガリータ君の提案。せっかく買ったロマノフのワンピースでおしゃれして、ローレンツさんとデートして、それで告白しちゃえ、なんて私には無茶な提案にしり込みしてたら教えてくれた、ローレンツさんがきっと一緒に行ってくれる場所。
ローレンツさんは歴史が好きで、音楽が好きで、オーストリアが好き。クラシックのコンサートは敷居が高いから、私が誘えるせめてもの場所。ローレンツさんの解説を聞きながらまわる博物館はとても楽しくて、そして、ローレンツさんの距離が近くてドキドキする。もう少し手を伸ばせば、手を繋ぐことだってできそう。
そんなことを考えながら展示を見ていた時だった。
「見覚えがある」と思って、私は首をかしげる。銃なんて、見たことないはずなのに。でも、目の前のショウケースに飾られた古い銃はなんだか懐かしくて、私は一瞬息が止まる。
「・・・ローレンツさん・・・これ・・・」
「あ、ローレンツライフルですね。オーストリア初の国産ライフルで・・・」
「ローレンツ、ライフル・・・」
ローレンツライフルはマスターエリカと恋に堕ちる。
手を繋ぐだけで精一杯の、淡く、儚い恋物語。
そう、頭に過った瞬間的だった。
目の前に広がる廃墟。いや、廃工場だ。軍服を身に纏った男の人。「気をつけて行ってきてくれ」と私に笑いかける。
「・・・きょう・・・さん・・・」
流れこむ映像は洪水のようで、くらくらする。
赤髪の、まるで太陽のような溌剌とした人。その隣に佇む、難しい顔の男の人と、双子の男の子。ドレスを着た、女の子みたいな小さな男の子と、銀の髪が美しい、王子様みたいな男の人。甘い笑顔でウィンクをする、金髪の男の子と、赤い眼鏡の男の子。野球のユニフォームみたいな服を着た男の子に、そっぽを向いたまま、私に紅茶を差し出す男の子。
あれは・・・あの人たちは・・・。
最後に浮かんだのは、困った顔で笑うメガネの男の子。
『大好きですよ、マスターさん』
そう笑う彼は、私の隣にいる・・・。
そこまでで視界は真っ暗になり、体から力が抜ける。倒れこむ私をあわてて抱き上げたローレンツさんが何度も私の名前を呼ぶ頃には、私は意識を手放していた。
→
博物館は静かで、靴音だけが響く。
最近やってる『オーストリア展』はマルガリータ君が教えてくれた。あの日、ローレンツさんについてきてもらって、初めて行けた憧れのカフェで働く、可愛い男の子。
マルガリータ君と同じ名前の少女の絵が、彼のオススメ。いつも元気なマルガリータ君が博物館が好きなんて驚いたけど、レオポルトさんが連れて行ったのかしら。なんて考えながら、その少女の絵を眺める。なんだか哀しそうに見えるのは気のせいかな?
「マルガリータ王女はスペインのハプスブルグ家からウィーンのハプスブルグ家に嫁いだんです。この絵はお見合い写真みたいなもので・・・」
「同じ家で結婚するんですか?」
それとも、同じ名前の全然別な一族なのかしら?首をかしげる私にローレンツさんは「昔はそういうこともあったみたいです」と答える。
「ハプスブルグ家は自分たちが神から選ばれた一族だと思っていたんです。だから、血が薄まる婚姻を望まなかった。けれど、近親婚を重ねた結果、遺伝子の病気や流産が増えた、と言われていて、マルガリータ王女も度重なる流産とそれに伴う宮廷内のいじめで早逝しました」
「・・・かわいそう・・・」
そんな悲しい人生を歩んだ人の絵だ、ってマルガリータ君は知っているんだろうか。
私の問いにローレンツさんは「知ってると思いますよ、多分・・・」と気まずそうに答える。なんだか重たい空気がいたたまれなくて、私はわざと明るい笑顔を作った。
「そ、そんなことより、ローレンツさんは本当に物識りなんですね!すごいです!ローレンツさんをお誘いして、本当に良かったです!」
ローレンツさんをデートに誘っちゃえ、っていうのはマルガリータ君の提案。せっかく買ったロマノフのワンピースでおしゃれして、ローレンツさんとデートして、それで告白しちゃえ、なんて私には無茶な提案にしり込みしてたら教えてくれた、ローレンツさんがきっと一緒に行ってくれる場所。
ローレンツさんは歴史が好きで、音楽が好きで、オーストリアが好き。クラシックのコンサートは敷居が高いから、私が誘えるせめてもの場所。ローレンツさんの解説を聞きながらまわる博物館はとても楽しくて、そして、ローレンツさんの距離が近くてドキドキする。もう少し手を伸ばせば、手を繋ぐことだってできそう。
そんなことを考えながら展示を見ていた時だった。
「見覚えがある」と思って、私は首をかしげる。銃なんて、見たことないはずなのに。でも、目の前のショウケースに飾られた古い銃はなんだか懐かしくて、私は一瞬息が止まる。
「・・・ローレンツさん・・・これ・・・」
「あ、ローレンツライフルですね。オーストリア初の国産ライフルで・・・」
「ローレンツ、ライフル・・・」
ローレンツライフルはマスターエリカと恋に堕ちる。
手を繋ぐだけで精一杯の、淡く、儚い恋物語。
そう、頭に過った瞬間的だった。
目の前に広がる廃墟。いや、廃工場だ。軍服を身に纏った男の人。「気をつけて行ってきてくれ」と私に笑いかける。
「・・・きょう・・・さん・・・」
流れこむ映像は洪水のようで、くらくらする。
赤髪の、まるで太陽のような溌剌とした人。その隣に佇む、難しい顔の男の人と、双子の男の子。ドレスを着た、女の子みたいな小さな男の子と、銀の髪が美しい、王子様みたいな男の人。甘い笑顔でウィンクをする、金髪の男の子と、赤い眼鏡の男の子。野球のユニフォームみたいな服を着た男の子に、そっぽを向いたまま、私に紅茶を差し出す男の子。
あれは・・・あの人たちは・・・。
最後に浮かんだのは、困った顔で笑うメガネの男の子。
『大好きですよ、マスターさん』
そう笑う彼は、私の隣にいる・・・。
そこまでで視界は真っ暗になり、体から力が抜ける。倒れこむ私をあわてて抱き上げたローレンツさんが何度も私の名前を呼ぶ頃には、私は意識を手放していた。
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