彼らの出会い
レジスタンスのメディック
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
悪いのは私じゃないはずだった。私が男の人が怖いのは、あの夜があったから。私があの夜を過ごさなければならなかったのは、私の家が貧しくて、私の育った町が貧しいから。全部全部、世界帝が悪いんだ。そう思ってた。
なのに、今は自分が嫌いだ。せっかく好きな人ができたのに、その人も私を好きだと笑ってくれたのに、その人に怯えてしまう自分。
ローレンツさんにその全部を話したら、どんな顔をするんだろう。何も知らなかったとはいえ、「商品」として売り飛ばされた私。それは私の意思じゃない。でも、私はきっと「汚れ」ている。
勉強なんかしなきゃ良かった。なにも知らなければ、私がしたことがどんなに醜いかも知らないままだったはずはのに。全部が嫌だ。気づけばローレンツさんから逃げる自分も。
「マスター、どうしたのですか?」
背後から声をかけられて、私はびくりと肩を揺らした。優しい声。アレクサンドルさんだ。
「・・・ロシアンティーを淹れようと思っていたのです。よろしければ、一緒にいかがですか?」
振り返った私に一瞬目を瞠って、アレクサンドルさんは笑った。私が泣いてたことは分かったはずなのに、アレクサンドルさんは優しい。
「どうして森に、と尋ねても?」
食堂の椅子に座り、アレクサンドルさんが聞いてくる。温かな紅茶と甘いジャム。
「・・・私、私が嫌いになったんです」
「理由を聞いても?」
「・・・」
私は黙って下を向いた。理由を話すには、あの夜の話をしなくちゃいけない。でも、あの夜の話を聞けば、みんな私を嫌いになってしまうんじゃないか、って怖かった。
「・・・もし、お話できないのであれば、せめて温かいうちにお茶をどうぞ。ジャムを舐めながら飲むと、美味しいですよ?」
私を咎めるでもなくアレクサンドルさんが言うから、私はこくんと頷いて、紅茶を飲む。思ったより渋いお茶に、ジャムの甘さが美味しい。
温かい紅茶のせいだろうか。なんだか少し体が熱くなってきた。眠気もわいてきて、頭がぼんやりする。
「私、皆さんにずっと内緒にしてることがあるんです・・・」
何故だろう。今なら話せる気がする。紅茶のせい、なのかな・・・。
「私、人見知り、って言ってるけど、本当は男の人が怖かったんです。でも、レジスタンスの人たちは優しいから、だんだん平気になって、好きな人もできたんです。」
なのに、大好きなのに、触れられるのが怖い。
「きっと、理由を話せばローレンツさんに嫌われちゃう。だけど、怖いんです・・・」
どうしたら良いか分からなくて、混乱して、更にローレンツさんを傷つける。嫌いだ。こんな自分なんか大嫌い。
ひっくひっくとしゃくりあげる私に戸惑いながら、アレクサンドルさんが私の髪を撫でる。
「髪を撫でたら不快ですか?」
ふるふると頭を横に振ったら、アレクサンドルさんは安心した顔をした。でも、なんだろう。胸がムカムカする。
「過去を乗り越えるのは辛いものです。私もナポレオンが怖くて仕方ありませんでした。それでも、立ち向かうのです。私がナポレオンと話をすることで彼とチェスをする仲になれたように、きっと、真心を尽くせばローレンツも分かってくれますよ」
「・・・それでも嫌われちゃったら・・・」
「そのときは、またロシアンティーを淹れてさしあげます。今度はウォッカは入れないようにしますね」
「・・・ウォッカ?」
ウォッカって、お酒?ぼんやり見上げた私に困ったように笑うアレクサンドルさんが映ったのは覚えてる。でも、なんだかすごく眠くて、気づけば私は夢の中に迷いこんでいた。
→
なのに、今は自分が嫌いだ。せっかく好きな人ができたのに、その人も私を好きだと笑ってくれたのに、その人に怯えてしまう自分。
ローレンツさんにその全部を話したら、どんな顔をするんだろう。何も知らなかったとはいえ、「商品」として売り飛ばされた私。それは私の意思じゃない。でも、私はきっと「汚れ」ている。
勉強なんかしなきゃ良かった。なにも知らなければ、私がしたことがどんなに醜いかも知らないままだったはずはのに。全部が嫌だ。気づけばローレンツさんから逃げる自分も。
「マスター、どうしたのですか?」
背後から声をかけられて、私はびくりと肩を揺らした。優しい声。アレクサンドルさんだ。
「・・・ロシアンティーを淹れようと思っていたのです。よろしければ、一緒にいかがですか?」
振り返った私に一瞬目を瞠って、アレクサンドルさんは笑った。私が泣いてたことは分かったはずなのに、アレクサンドルさんは優しい。
「どうして森に、と尋ねても?」
食堂の椅子に座り、アレクサンドルさんが聞いてくる。温かな紅茶と甘いジャム。
「・・・私、私が嫌いになったんです」
「理由を聞いても?」
「・・・」
私は黙って下を向いた。理由を話すには、あの夜の話をしなくちゃいけない。でも、あの夜の話を聞けば、みんな私を嫌いになってしまうんじゃないか、って怖かった。
「・・・もし、お話できないのであれば、せめて温かいうちにお茶をどうぞ。ジャムを舐めながら飲むと、美味しいですよ?」
私を咎めるでもなくアレクサンドルさんが言うから、私はこくんと頷いて、紅茶を飲む。思ったより渋いお茶に、ジャムの甘さが美味しい。
温かい紅茶のせいだろうか。なんだか少し体が熱くなってきた。眠気もわいてきて、頭がぼんやりする。
「私、皆さんにずっと内緒にしてることがあるんです・・・」
何故だろう。今なら話せる気がする。紅茶のせい、なのかな・・・。
「私、人見知り、って言ってるけど、本当は男の人が怖かったんです。でも、レジスタンスの人たちは優しいから、だんだん平気になって、好きな人もできたんです。」
なのに、大好きなのに、触れられるのが怖い。
「きっと、理由を話せばローレンツさんに嫌われちゃう。だけど、怖いんです・・・」
どうしたら良いか分からなくて、混乱して、更にローレンツさんを傷つける。嫌いだ。こんな自分なんか大嫌い。
ひっくひっくとしゃくりあげる私に戸惑いながら、アレクサンドルさんが私の髪を撫でる。
「髪を撫でたら不快ですか?」
ふるふると頭を横に振ったら、アレクサンドルさんは安心した顔をした。でも、なんだろう。胸がムカムカする。
「過去を乗り越えるのは辛いものです。私もナポレオンが怖くて仕方ありませんでした。それでも、立ち向かうのです。私がナポレオンと話をすることで彼とチェスをする仲になれたように、きっと、真心を尽くせばローレンツも分かってくれますよ」
「・・・それでも嫌われちゃったら・・・」
「そのときは、またロシアンティーを淹れてさしあげます。今度はウォッカは入れないようにしますね」
「・・・ウォッカ?」
ウォッカって、お酒?ぼんやり見上げた私に困ったように笑うアレクサンドルさんが映ったのは覚えてる。でも、なんだかすごく眠くて、気づけば私は夢の中に迷いこんでいた。
→