彼らの出会い
レジスタンスのメディック
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悲しいときは楽しいことを思い出すの。
それは、お屋敷で少しだけ仲良くなった女の子が教えてくれた。
故郷の綺麗な景色
優しい家族
可愛い動物
美味しいご飯
そんなことを考えて、悲しい気持ちを忘れるんだと、その子は言っていた。
あの子は今もそうやって生きているんだろうか。
そんなことを考えるのは、私が悲しい気持ちだから。
私は、楽しいことを思い出せなかった。綺麗な景色も、優しい家族も、悲しい気持ちを更に増すだけだったから。
今ならば、楽しいことを考えられるかな・・・。
タバティエールさんの美味しいおやつ
エカチェリーナ様からいただいた、綺麗なリボン
シャルル・ヴィルさんが作る可愛い砂糖菓子
不思議と浮かぶのは、ここでの楽しいことばかりで、私の居場所は多分、もうここにしかない。
ニコラさんとノエルさんの綺麗なお歌
フルサトさんの笑顔
キンベエさんの大きな手
レオポルトさんの紅茶
マフムト様のコーヒー、は苦手だけど、お砂糖とミルクを入れたらちょっとは飲めるようになった。
エンフィールドさんのギター
スプリング・フィールドさんとのキャッチボールも少しだけうまくなった。
ケンタッキーさんの仲良しの犬
ゲベールさんになついてた猫
ローレンツさんが教えてくれる、楽しい物語・・・。
そこまで考えて、私はしゅんとうなだれた。ベッドに丸まって、毛布をぎゅっと握る。
「・・・ローレンツさん・・・」
こんなに悲しいのは、ローレンツさんのせいだ。ローレンツさんがレジスタンスの女の人と話していたから。女の人は綺麗で、大人っぽくて、少し恥ずかしそうに笑ったローレンツさんを見ていたら、私は何故だか悲しくなった。
「・・・違うことを考えなくちゃ」
イエヤスさんが教えてくれた、イエヤスさんの国の物語。あの物語のお姫様を、イエヤスさんは私みたいだと言った。月から来たお姫様。綺麗で不思議なお姫様。イエヤスさんが言いたかったことはよくわからない。ただ、あのお姫様も私みたいに男の人を愛せない過去があるのかも知れないと思った。怖い過去。お姫様は「罪」と言った。私がされたあれが「罪」なら、私もこれから誰も愛することは許されないのだろうか・・・。
ローレンツさんが聞かせてくれたレコード。
ローレンツさんの笑顔。
ローレンツさんの声。
ローレンツさん・・・ローレンツさん・・・。
呪文のように繰り返す。私は罪を犯したのだろうか。それならきっと、もうローレンツさんの側にいられない。そう思ったら涙が流れた。苦しい。悲しい。お腹がぎゅっとなる感じ。
ああ、私、きっと病気なんだ。それなら、明日、お薬をもらわなきゃ。そんなことを考えて、私は更に毛布をぎゅっと握りしめた。
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