Away from the Rain



 
「……これってサンズの服じゃない気がする。しかも、この荷物……グリルビーさん?」
 言われた通り取りに来たフリスクは、自分の身に余るほどの荷物を抱えて帰路に着く。いきなり、知らない電話番号から連絡が来て、何事かと思った。しかし、あれはグリルビーのスマホだったんだなと予想をつけた。彼らの関係は不思議なものだった。仲が良さそうに見えるが、それだけじゃないような気がする。ただの常連客と店主以外の、彼らだけの距離というのがあるんだろう。勝手にそう思っていた。ふと寄り道できるような、信頼がおける場所。
 フリスク的には、グリルビーさんは奥手だけど、頑張れば二人、いい感じになると思うのに……。とも思うのだが、計り知れない、信頼以上の何かがあるんだと思っていた。変に刺激をしてしまえば、すぐに崩れてしまうような、繊細な距離感だと分かっていた。
 
 腕にかかる重さと、傘を持つ手が痺れる。けれど嫌な気持ちにはならなかった。そしてふと、雨音がいつの間にか消えていることに気づいた。ここ数週間、ずっと頭にくっついて離れない、囲むような雨音が消えている。傘を頭からずらす。ゆったりと、太陽が光る空を見上げた。
「あ、虹だ」
 
 雨は植物の葉を伝い、屋根を伝い、そして誰かの頬を伝う。柔く、温めるようにして、心を満たすために。
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