束の間の平和【入学と思い出作り編】
主人公の名前変更
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海水浴からさらにしばらくー…時期はもう夏休みの終わりを迎えようとしていた。この日は並盛神社の夏祭りがあるらしく、京子ちゃんとハルちゃんから浴衣を着て一緒に行こうよと誘われていた。
今日のランボくんやイーピンちゃんのお世話係はツーくんだから、私は遠慮することなくそのお誘いを受けて二人と一緒に夏祭りへ参加する事に。髪や着付けも一緒にしよう!と今は京子ちゃんの家へお呼ばれしている。
「今日ツナさんは夏祭り来るんですか?」
「行くんじゃないかな?ランボくんやイーピンちゃんも居るし、昨日もリボーンくんと騒がしくしながら宿題を終わり近くまでしてた気がするし」
「じゃあ並盛神社で会うかもしれないね」
「うん」
会話を弾ませながら着々と準備を進めていく。その中で思うのはやはり山本先輩のこと。
「会えるといいね、山本くんに」
「!!!!」
不意に京子ちゃんに気持ちを言い当てられ顔が一気に火照り始める。しかし、間違いではないから大人しく頷いて答えた。
「飛びっきりキュートでラブリーな光奈ちゃんに仕上げてあげますからね!!」
「え、い、いいよ。普通で」
無駄に張り切るハルちゃんを横目に、応援してくれる人のありがたさを感じながら緩んでいく頬をそのままに「ありがとう」と心の中で呟いた。
・
・
並盛神社。着いたらこそは既に人でごった返している。右を見ても左を見ても人、人、人。祭囃子の音が遠くで聞こえる中、京子ちゃんハルちゃんと三人でゆっくり屋台を回り歩く。
「すごーい人ですね」
「ね。もうこんなにたくさん」
「光奈ちゃん、迷子にならないように気を付けてくださいね?」
「は、はーい!」
浴衣と言うものをちゃんと着たのは今年が初めて。慣れない服に下駄、という不慣れな格好のせいでなかなか二人と同じ歩幅で歩けない。待ってくれてはいるけれど少し申し訳なくて、二人の元へ辿り着くと「ごめんね」が自然と口から出た。
「ふふふ、浴衣慣れないもんね」
「ノープロブレムです!!ハルたちこそ、光奈ちゃんを置いてどんどん行ってしまってすみません」
優しい二人に今一度「ありがとう」を伝えて、屋台を目指す。そう言えばそろそろ小腹が空いてきたなぁ…という頃、ある屋台に見覚えのあるシルエットがひとつ見えた。
「あれ、ツーくん?」
「え、ツナさん?!どこ?!どこですか?!」
「あそこ、チョコバナナの」
「あ、ほんとだ!」
「はひ、よく見れば山本さんや獄寺さんも居ます!!」
「えッ?!」
「わーみんなでお店してるのかな?」
「行ってみましょう!!」
あれよあれよの間に私たちはツーくんたちがいるであろうチョコバナナを売っている屋台へ向かう。「チョコバナナくださーい!」とハルちゃんが声を上げて振り返った三人は確かにツーくんと獄寺さんと山本先輩だった。
「ハル!京子ちゃん!!それにミツまで!!」
ツーくんは私を見るなり「だから昼から居なかったんだな?!」と言ってきたから「うん」と否定することなく返す。彼の心がいいなぁ、と言っている気がした。だが、こっちとしてはそんなツーくんが羨ましい。
「お店してるんだね。すごーい!」
「え、あ。まぁ…うん」
山本先輩がお店してるって知っていたなら真っ先に来ていた。なんで教えてくれなかったの!と心の中でツーくんに訴える。だが、当の本人は京子ちゃんの方に意識が向けられているようでこちらには眼中にない。兄妹ながら恋には少し盲目だなと感じた。私にも言えることだけど。
「今日は浴衣か、光奈ちゃん」
「あ、はい!」
そんなツーくんを他所に山本先輩が気さくに声を掛けてくれる。今回は正面からだから多少は心の準備をしていたため、変に驚くことはない。心拍数だけは確実に上がっているが。
「黒ってイメージ無かったから意外だな」
「え。それって」
「いつもと違ってオトナに見えるな!」
てっきり「似合ってない」と言われると思っていたため、それを優に超えた回答にまた心拍数が急上昇する。大人に見える、なんて最高の褒め言葉。そう見て欲しくて着飾ったからなおのこと、先輩の言葉が嬉しくて胸に染みた。
「はい、チョコバナナ一本な」
「あ。ありがとうございます」
「あ、そうだ光奈ちゃん!!」
「花火一緒に見れないね」と残念がるハルちゃんや京子ちゃん、ツーくんたちの会話を他所に山本先輩からチョコバナナを受け取る。その際に名前を呼ばれ、どうしたんだろ?と目を合わせたら、先輩が前のめりになって私に言った。
「この後さ、ボールの的当て行こうと思ってるんだよ。景品欲しいのあげっから、また後でも会おうな!」
予期せぬ展開ー…山本先輩の方からまた会う約束をして貰えた。「え、あ、ぇ…」と変な言葉しか出なくてまともな返しもできないまま「じゃ、後でな」と手を振られる。せめてもの応答に手を振り返すのがやっとで、ハルちゃんと京子ちゃんに「良かったね」と言われるも正直自覚がなかった。
しかし、彼の言葉・表情に嘘偽りは全くなかった。だから、会えると言うのは確実なる決定事項。それをようやく自覚したのは先輩から直接受けとったチョコバナナを丸々食べ終えてからだった。
*
花火が始まる少し前、リボーンくんに会って穴場だと言う場所を教わり三人で急いで向かう。
あの後、先輩ともう一度会う約束をしていたものの屋台はもぬけの殻で、どこ行ったんだろう?と疑問に思っていた。そのところでリボーンくんに出会い「ツナたちは先に行ったぞ」と声が掛かったのだ。
「あ、おーい!」
「ツナさーん!」
並盛神社の本殿前ー…確かに彼らはそこに居た。何をしたか分からないほどボロボロの姿になってるけれど。
「先輩!」
「光奈ちゃん!ゴメンな?!オレから会おうって話してたのに」
「それは全然!大丈夫!です」
ツーくんたちの元に駆け寄って私はすぐに先輩の隣へとしゃがみ込む。
「その怪我、どうしたんですか?」
「んー…なんでもねぇよ!ちょっと金盗まれただけで!」
「盗まれた?!だ、大丈夫だったんですかそれ!」
「なんとかなー」
おかげでボロボロだけど、と笑う先輩に変に気が抜けてガクッと膝をついた。「な、どうした?!だ、大丈夫か?」そんな私を先輩が大袈裟に心配してくれるから、思わずあはは、と笑いが込み上げた。
「大丈夫です。気が抜けただけ」
そう言って先輩の隣へ座り直した瞬間ー…ドドーン!!と大輪を咲かせる花火が打ち上がる。わぁ…とあまりの綺麗さに目を見張り、口角を上げた。
一発目を皮切りにどんどんどんどん絶え間なく打ち上がる無数の花火。それらを「綺麗」と眺めながら、ひっそりと大好きな彼を盗み見る。そこには同じように花火を見上げ嬉しそうに顔を綻ばせて山本先輩の姿があった。
*
何度も何度も打ち上がる花火ー…みんなで見るのはもちろん、大好きな人の隣で見られるそれは家族みんなで見たものと同じくらい最高に綺麗で、思い出に残る花火だったんだ。
時折脳裏を過ぎる苦い過去の思い出。一年前の自分はこの立ち位置に憧れ、この立ち位置をずっと求めていた。
"何も知らない、何も知らせてくれない。"ひとつの学年差だけで思い悩んで苦しんだあの日ー…近くに居るようで遠かった彼らが、今はすごく近く居るように感じている。何もかもを共有できる仲に私も、ようやく入ることができたんだ。
って、そう思っていたんだ。
ー続くー
今日のランボくんやイーピンちゃんのお世話係はツーくんだから、私は遠慮することなくそのお誘いを受けて二人と一緒に夏祭りへ参加する事に。髪や着付けも一緒にしよう!と今は京子ちゃんの家へお呼ばれしている。
「今日ツナさんは夏祭り来るんですか?」
「行くんじゃないかな?ランボくんやイーピンちゃんも居るし、昨日もリボーンくんと騒がしくしながら宿題を終わり近くまでしてた気がするし」
「じゃあ並盛神社で会うかもしれないね」
「うん」
会話を弾ませながら着々と準備を進めていく。その中で思うのはやはり山本先輩のこと。
「会えるといいね、山本くんに」
「!!!!」
不意に京子ちゃんに気持ちを言い当てられ顔が一気に火照り始める。しかし、間違いではないから大人しく頷いて答えた。
「飛びっきりキュートでラブリーな光奈ちゃんに仕上げてあげますからね!!」
「え、い、いいよ。普通で」
無駄に張り切るハルちゃんを横目に、応援してくれる人のありがたさを感じながら緩んでいく頬をそのままに「ありがとう」と心の中で呟いた。
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並盛神社。着いたらこそは既に人でごった返している。右を見ても左を見ても人、人、人。祭囃子の音が遠くで聞こえる中、京子ちゃんハルちゃんと三人でゆっくり屋台を回り歩く。
「すごーい人ですね」
「ね。もうこんなにたくさん」
「光奈ちゃん、迷子にならないように気を付けてくださいね?」
「は、はーい!」
浴衣と言うものをちゃんと着たのは今年が初めて。慣れない服に下駄、という不慣れな格好のせいでなかなか二人と同じ歩幅で歩けない。待ってくれてはいるけれど少し申し訳なくて、二人の元へ辿り着くと「ごめんね」が自然と口から出た。
「ふふふ、浴衣慣れないもんね」
「ノープロブレムです!!ハルたちこそ、光奈ちゃんを置いてどんどん行ってしまってすみません」
優しい二人に今一度「ありがとう」を伝えて、屋台を目指す。そう言えばそろそろ小腹が空いてきたなぁ…という頃、ある屋台に見覚えのあるシルエットがひとつ見えた。
「あれ、ツーくん?」
「え、ツナさん?!どこ?!どこですか?!」
「あそこ、チョコバナナの」
「あ、ほんとだ!」
「はひ、よく見れば山本さんや獄寺さんも居ます!!」
「えッ?!」
「わーみんなでお店してるのかな?」
「行ってみましょう!!」
あれよあれよの間に私たちはツーくんたちがいるであろうチョコバナナを売っている屋台へ向かう。「チョコバナナくださーい!」とハルちゃんが声を上げて振り返った三人は確かにツーくんと獄寺さんと山本先輩だった。
「ハル!京子ちゃん!!それにミツまで!!」
ツーくんは私を見るなり「だから昼から居なかったんだな?!」と言ってきたから「うん」と否定することなく返す。彼の心がいいなぁ、と言っている気がした。だが、こっちとしてはそんなツーくんが羨ましい。
「お店してるんだね。すごーい!」
「え、あ。まぁ…うん」
山本先輩がお店してるって知っていたなら真っ先に来ていた。なんで教えてくれなかったの!と心の中でツーくんに訴える。だが、当の本人は京子ちゃんの方に意識が向けられているようでこちらには眼中にない。兄妹ながら恋には少し盲目だなと感じた。私にも言えることだけど。
「今日は浴衣か、光奈ちゃん」
「あ、はい!」
そんなツーくんを他所に山本先輩が気さくに声を掛けてくれる。今回は正面からだから多少は心の準備をしていたため、変に驚くことはない。心拍数だけは確実に上がっているが。
「黒ってイメージ無かったから意外だな」
「え。それって」
「いつもと違ってオトナに見えるな!」
てっきり「似合ってない」と言われると思っていたため、それを優に超えた回答にまた心拍数が急上昇する。大人に見える、なんて最高の褒め言葉。そう見て欲しくて着飾ったからなおのこと、先輩の言葉が嬉しくて胸に染みた。
「はい、チョコバナナ一本な」
「あ。ありがとうございます」
「あ、そうだ光奈ちゃん!!」
「花火一緒に見れないね」と残念がるハルちゃんや京子ちゃん、ツーくんたちの会話を他所に山本先輩からチョコバナナを受け取る。その際に名前を呼ばれ、どうしたんだろ?と目を合わせたら、先輩が前のめりになって私に言った。
「この後さ、ボールの的当て行こうと思ってるんだよ。景品欲しいのあげっから、また後でも会おうな!」
予期せぬ展開ー…山本先輩の方からまた会う約束をして貰えた。「え、あ、ぇ…」と変な言葉しか出なくてまともな返しもできないまま「じゃ、後でな」と手を振られる。せめてもの応答に手を振り返すのがやっとで、ハルちゃんと京子ちゃんに「良かったね」と言われるも正直自覚がなかった。
しかし、彼の言葉・表情に嘘偽りは全くなかった。だから、会えると言うのは確実なる決定事項。それをようやく自覚したのは先輩から直接受けとったチョコバナナを丸々食べ終えてからだった。
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花火が始まる少し前、リボーンくんに会って穴場だと言う場所を教わり三人で急いで向かう。
あの後、先輩ともう一度会う約束をしていたものの屋台はもぬけの殻で、どこ行ったんだろう?と疑問に思っていた。そのところでリボーンくんに出会い「ツナたちは先に行ったぞ」と声が掛かったのだ。
「あ、おーい!」
「ツナさーん!」
並盛神社の本殿前ー…確かに彼らはそこに居た。何をしたか分からないほどボロボロの姿になってるけれど。
「先輩!」
「光奈ちゃん!ゴメンな?!オレから会おうって話してたのに」
「それは全然!大丈夫!です」
ツーくんたちの元に駆け寄って私はすぐに先輩の隣へとしゃがみ込む。
「その怪我、どうしたんですか?」
「んー…なんでもねぇよ!ちょっと金盗まれただけで!」
「盗まれた?!だ、大丈夫だったんですかそれ!」
「なんとかなー」
おかげでボロボロだけど、と笑う先輩に変に気が抜けてガクッと膝をついた。「な、どうした?!だ、大丈夫か?」そんな私を先輩が大袈裟に心配してくれるから、思わずあはは、と笑いが込み上げた。
「大丈夫です。気が抜けただけ」
そう言って先輩の隣へ座り直した瞬間ー…ドドーン!!と大輪を咲かせる花火が打ち上がる。わぁ…とあまりの綺麗さに目を見張り、口角を上げた。
一発目を皮切りにどんどんどんどん絶え間なく打ち上がる無数の花火。それらを「綺麗」と眺めながら、ひっそりと大好きな彼を盗み見る。そこには同じように花火を見上げ嬉しそうに顔を綻ばせて山本先輩の姿があった。
*
何度も何度も打ち上がる花火ー…みんなで見るのはもちろん、大好きな人の隣で見られるそれは家族みんなで見たものと同じくらい最高に綺麗で、思い出に残る花火だったんだ。
時折脳裏を過ぎる苦い過去の思い出。一年前の自分はこの立ち位置に憧れ、この立ち位置をずっと求めていた。
"何も知らない、何も知らせてくれない。"ひとつの学年差だけで思い悩んで苦しんだあの日ー…近くに居るようで遠かった彼らが、今はすごく近く居るように感じている。何もかもを共有できる仲に私も、ようやく入ることができたんだ。
って、そう思っていたんだ。
ー続くー