突然の亀裂【黒曜編】
主人公の名前変更
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目が覚める。あの後、どうやら私は泣いたまま眠ってしまったらしい。涙の跡が肌に残って少しカサついている。カサついた頬を腕で拭い、窓の外を見ると既に日は傾いて夕焼けが綺麗に外の世界を彩り始めていた。
「…ツーくんっ」
瞬間、ハッと思い出すように部屋を飛び出す。勢い良く階段を駆け下りてママを呼びながらリビングへ顔を覗かせた。
「あら、ミーちゃん。目が覚めた?」
「うん…いま目が覚めて」
ママへ返事をしながらひっそりと辺りを見回す。右を見ても左を見てもそこにツーくんの影は無い。
「ママ、ツーくんは」
「ツーくん?それならさっき帰ってきたわよ」
「ほんと?」
てっきりまだなのだと思っていたツーくんの帰宅。彼は私が寝ている間に帰っていたらしい。
トイレにでも行ってるのかな?
戻ったなら「ただいま」ぐらい言ってよ。
どんな気持ちで待っていたか知らないくせに、とツーくんに対して悪態付くような気持ちが芽生える。一方で、もしかしたら部屋を覗きに来たりしたのかも…なんて考えながら「そうなんだ」と小さくママに返した。
「あら、光奈」
ふと背後から声がして振り返る。そこにはビアンキさんが立っていて、私を見るなり僅かに目を丸くして少し驚いている様子。しかし、すぐに目元を優しく緩ませて「ただいま」と彼女は言った。
「おかえりなさい、ビアンキさん」
相変わらず大人の雰囲気漂わせるビアンキさんに、私は少し身を小さくしながら返す。そう言えばビアンキさんも一緒に買い物(という名のアジト乗り込み)に行ったんだっけ、と思い返す。もしかしたら彼女の奥からツーくんが出てくるのでは?と思い至り、少し背伸びをして彼女の奥を確かめようと試みる。
「ツナなら部屋で寝てるわ」
そんな私の心を見透かしてかビアンキさんが淡々とそう答えた。少しだけ冷たさが感じられた物言いに、ビアンキさんの方へ視線を向けた私は歯切れ悪く「そうですか」と返す。
正直、ツーくんには聞きたいことがたくさんある。
並中生襲撃事件のことや、ハルちゃんが襲われそうになったこと。それをランボくんやイーピンちゃんが助けてくれたこと。
そして、
買い物だって聞いていた今日のお出掛けのこと。
「光奈」
ビアンキさんに呼ばれ足が止まる。無意識に彼の部屋へ向かおうとしていたのだろう、気付けば地面を見つめていた顔を持ち上げて彼女の方へと視線を向ける。私と目がかち合ったビアンキさんは少し困ったような顔をしながら「今はツナを寝かせてあげて。疲れているみたいだから」と言った。
「……ビアンキ、さん」
「なに?」
"疲れてるみたいだから"
その言葉に妙な引っ掛かりを覚える。
「本当に、買い物へ行ったんですか…?」
私の問いに場が静まり返った。ただならない雰囲気にママは少し恐縮気味で「ミーちゃんどうしたの。ツーくんたちならちゃんと」と雰囲気を変えようと口を開いた。
しかし、私は彼女の答えを聞き逃さまいとママの声を遮断し、視線を逸らすことなくビアンキさんを見続ける。
「………」
「………」
「………えぇ、買い物よ」
しばらく続いた沈黙を破りビアンキさんはそう答えた。私から目を逸らすことなく、ただただ真剣な表情で彼女は言い切ったんだ。
・
・
ツーくんたちの買い物(と言う名のアジト乗り込み)から早いもので2週間が過ぎた。襲撃事件はすっかりとなりを潜め、また平和な日々が訪れる。
あの日からツーくんは何故か酷い筋肉痛に悩まされ、昨日まで起き上がることも難しかったようで、体の自由が利き始めてもしばらくは「いてぇ〜」と顔を顰めて過ごしていた。しかし今日は久々に学校へ行くみたいで、リボーンくんにあーだこーだ言われながら部屋で準備している様子を廊下で耳にする。
「あ、おはようミツ」
「おはよう、ツーくん」
ツーくんはあの日のことについて何も私に言わなかった。私も彼へ聞くことはなかったし、聞いたとしても「なんでもないよ」とはぐらかされるような気がして、聞くことができなかった。
「おはようございます!10代目!!」
「お、おはよう獄寺くん」
「妹様もおはようございます!!」
「おはよう、ございます」
ツーくんが久し振りの登校ということで、今日は朝から獄寺さんが来ていた。山本さんは野球の試合が近いみたいで朝から部活らしい。
「それじゃあ、行ってくるね」
「行ってきます」
「行ってらっしゃい!ツーくん、ミーちゃん!」
ママに見送られ玄関を出る。塀を出てすぐのところで私たちは互いに背中を向け合った。
「じゃあ、またね。ミツ」
「うん、行ってらっしゃい。ツーくん」
「妹様もお気を付けて!」
勢いよく頭を下げる獄寺さんと並んで歩き出すツーくんを少しだけ見送って私も学校の方へ足を向ける。
1、2、3歩ほど歩いたところでふと襲撃事件のことが脳裏を過ぎって瞬間、上手く言い表せない不安感が一気に私を襲い、思わず別れたばかりの二人を確認するために振り返った。
「………」
振り返った先、ツーくんは獄寺さんと楽しそうに会話をしながら歩いている。二人がこちらを振り返ることはない。
「………」
そんな光景を"元気になって良かった"と思う反面、例の事件で"ツーくんが急に大人びてしまった"ような感じがして、すごく寂しくなった。
「私も…」
早く、大きくなりたい。
ぽつりと溢れた言葉は当然ツーくんたちに届く事はなく、ただただの音となって地面へと落ちていった。
-続く-
「…ツーくんっ」
瞬間、ハッと思い出すように部屋を飛び出す。勢い良く階段を駆け下りてママを呼びながらリビングへ顔を覗かせた。
「あら、ミーちゃん。目が覚めた?」
「うん…いま目が覚めて」
ママへ返事をしながらひっそりと辺りを見回す。右を見ても左を見てもそこにツーくんの影は無い。
「ママ、ツーくんは」
「ツーくん?それならさっき帰ってきたわよ」
「ほんと?」
てっきりまだなのだと思っていたツーくんの帰宅。彼は私が寝ている間に帰っていたらしい。
トイレにでも行ってるのかな?
戻ったなら「ただいま」ぐらい言ってよ。
どんな気持ちで待っていたか知らないくせに、とツーくんに対して悪態付くような気持ちが芽生える。一方で、もしかしたら部屋を覗きに来たりしたのかも…なんて考えながら「そうなんだ」と小さくママに返した。
「あら、光奈」
ふと背後から声がして振り返る。そこにはビアンキさんが立っていて、私を見るなり僅かに目を丸くして少し驚いている様子。しかし、すぐに目元を優しく緩ませて「ただいま」と彼女は言った。
「おかえりなさい、ビアンキさん」
相変わらず大人の雰囲気漂わせるビアンキさんに、私は少し身を小さくしながら返す。そう言えばビアンキさんも一緒に買い物(という名のアジト乗り込み)に行ったんだっけ、と思い返す。もしかしたら彼女の奥からツーくんが出てくるのでは?と思い至り、少し背伸びをして彼女の奥を確かめようと試みる。
「ツナなら部屋で寝てるわ」
そんな私の心を見透かしてかビアンキさんが淡々とそう答えた。少しだけ冷たさが感じられた物言いに、ビアンキさんの方へ視線を向けた私は歯切れ悪く「そうですか」と返す。
正直、ツーくんには聞きたいことがたくさんある。
並中生襲撃事件のことや、ハルちゃんが襲われそうになったこと。それをランボくんやイーピンちゃんが助けてくれたこと。
そして、
買い物だって聞いていた今日のお出掛けのこと。
「光奈」
ビアンキさんに呼ばれ足が止まる。無意識に彼の部屋へ向かおうとしていたのだろう、気付けば地面を見つめていた顔を持ち上げて彼女の方へと視線を向ける。私と目がかち合ったビアンキさんは少し困ったような顔をしながら「今はツナを寝かせてあげて。疲れているみたいだから」と言った。
「……ビアンキ、さん」
「なに?」
"疲れてるみたいだから"
その言葉に妙な引っ掛かりを覚える。
「本当に、買い物へ行ったんですか…?」
私の問いに場が静まり返った。ただならない雰囲気にママは少し恐縮気味で「ミーちゃんどうしたの。ツーくんたちならちゃんと」と雰囲気を変えようと口を開いた。
しかし、私は彼女の答えを聞き逃さまいとママの声を遮断し、視線を逸らすことなくビアンキさんを見続ける。
「………」
「………」
「………えぇ、買い物よ」
しばらく続いた沈黙を破りビアンキさんはそう答えた。私から目を逸らすことなく、ただただ真剣な表情で彼女は言い切ったんだ。
・
・
ツーくんたちの買い物(と言う名のアジト乗り込み)から早いもので2週間が過ぎた。襲撃事件はすっかりとなりを潜め、また平和な日々が訪れる。
あの日からツーくんは何故か酷い筋肉痛に悩まされ、昨日まで起き上がることも難しかったようで、体の自由が利き始めてもしばらくは「いてぇ〜」と顔を顰めて過ごしていた。しかし今日は久々に学校へ行くみたいで、リボーンくんにあーだこーだ言われながら部屋で準備している様子を廊下で耳にする。
「あ、おはようミツ」
「おはよう、ツーくん」
ツーくんはあの日のことについて何も私に言わなかった。私も彼へ聞くことはなかったし、聞いたとしても「なんでもないよ」とはぐらかされるような気がして、聞くことができなかった。
「おはようございます!10代目!!」
「お、おはよう獄寺くん」
「妹様もおはようございます!!」
「おはよう、ございます」
ツーくんが久し振りの登校ということで、今日は朝から獄寺さんが来ていた。山本さんは野球の試合が近いみたいで朝から部活らしい。
「それじゃあ、行ってくるね」
「行ってきます」
「行ってらっしゃい!ツーくん、ミーちゃん!」
ママに見送られ玄関を出る。塀を出てすぐのところで私たちは互いに背中を向け合った。
「じゃあ、またね。ミツ」
「うん、行ってらっしゃい。ツーくん」
「妹様もお気を付けて!」
勢いよく頭を下げる獄寺さんと並んで歩き出すツーくんを少しだけ見送って私も学校の方へ足を向ける。
1、2、3歩ほど歩いたところでふと襲撃事件のことが脳裏を過ぎって瞬間、上手く言い表せない不安感が一気に私を襲い、思わず別れたばかりの二人を確認するために振り返った。
「………」
振り返った先、ツーくんは獄寺さんと楽しそうに会話をしながら歩いている。二人がこちらを振り返ることはない。
「………」
そんな光景を"元気になって良かった"と思う反面、例の事件で"ツーくんが急に大人びてしまった"ような感じがして、すごく寂しくなった。
「私も…」
早く、大きくなりたい。
ぽつりと溢れた言葉は当然ツーくんたちに届く事はなく、ただただの音となって地面へと落ちていった。
-続く-