突然の亀裂【黒曜編】
主人公の名前変更
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帰り道、並盛商店街の方で並中生が他校の制服を着た生徒とケンカをしていた、という話をすれ違った人たちから小耳に挟む。襲撃関連の事だろうか、ツーくんは大丈夫だったのかな?と色んな不安が胸の中を過っていく。
途中まで一緒だった友だちとは随分前にサヨナラをして、ひとり家へ続く道をひたすら歩く。
友だちとサヨナラをしてからは、例の事件が気掛かりで、前を向いて歩くのも怖く、ずっと下を向いていた。けれど、もう少ししたら目印の赤い屋根が見えてくるはず。
確認のために下を向いていた顔をゆっくりと上げて息を呑む。
「山本さんっ!」
「お、ツナの妹じゃねーか!!今、帰りか?」
私を見掛けるなりいつもの爽やかな笑顔を浮かべてこちらへと山本さんは歩み寄ってくる。ふと横へ視線を向ければ、そこには私の家があった。
「あ、はい。学校が午後からお休みになって…」
「お休み?」
「えっと、並中生が襲われてるっていう」
「あーアレか」
一瞬だけ真剣な顔つきになった山本さん。だけど、すぐにいつもの笑顔を浮かべて「そっかそっか、大変だったな」と返してくれる。
「帰ってくる時なんとも無かったか??変なヤツに会ったとか」
「え?いや、全然。真っ直ぐ家に帰ってきたので」
「なら良かった。…あ、そーだ。コレやるよ!」
そう言って突然山本さんはゴソゴソと持っていた手荷物を漁り始める。「ほい」と差し出したのは、小さな包みに入った寿司とパックのお茶。
「昼飯まだだろ?」
「給食、食べて帰って」
「げっ、マジか!そっかー給食あったんだったな!んじゃあコレは要らねー「貰っていいなら!!!貰い!!!ますっ」
少し残念そうに差し出した寿司を片付けようとする山本さんに思わず被せる勢いで言ってしまう。思った以上の活きの良さに、私自身が恥ずかしくなって語尾が萎んでいく。
だけど、今さら撤回も可笑しくて、熱くなり始めてる顔を感じながら山本さんが差し出すそれを受け取った。
「アハハハ!威勢いいな!貰ってくれてサンキュ。晩ご飯にでもしてくれよ」
「いえ、こちらこそ、ありがとうございます…」
受け取ったそれを大事に抱え込んで、勢い良くお辞儀をする。ランドセルの鍵はちゃんとしていたみたいで、中身が流れ出すこともなく安心した。
「あ、そう言えば山本さんが家に来てるってことは、ツーくんにご用事…ですか?」
「ん?あぁ!そーだぜ」
「じゃあ、上がってってください」
「ツーくん帰ってると思うから」と率先して家に入り込む。私の後ろを着いてくる山本さんを背中に感じながら、逃げ込むようにリビングへ向かった。
「お邪魔しまーす」の声と共に2階へ行く足音を聞いて、私はようやくひと息つく。
「あら、おかえりなさい」
「ただいま、ママ」
「ミーちゃんも早かったのね」と言うママに、うん、とだけ返して2階へ続く階段の方へ視線を向ける。
「ツーくん帰ってた?」
「うん、ついさっきだったかしら。でもお気に入りの服を着て、またどっか行くみたいよ??」
「え」
「今日はやめといたらって言ったんだけど、リボーンくんやビアンキちゃんも一緒に行くから大丈夫だって」
「そう、なんだ」
山本さんの一件で舞い上がっていた気持ちが一気に急降下していく。何故だか確信的な理由は無いけれど、その言葉を聞いて一気に心配な気持ちが心を過った。
「………ママ」
「ん?どうしたの、ミーちゃん」
「ツーくんたち、大丈夫だよね?」
こんな言葉を投げ掛けて、心配なのは私だけじゃないはずなのに。ママは少し困った顔をしながらぎゅうっと私を抱き締める。
「大丈夫よ。心配しなくても」と耳元で優しく囁かれて思わず目に涙が込み上げてきた。
確かにツーくんは言った。
"それにやられてるって言っても風紀委員ばっかりだろ?"
"オレが狙われるってまず無いからさ"って。
そう、言ったんだ。
だから大丈夫。
「行ってきまーす!!」
突然、玄関の方からツーくんの声がして反射的にママの腕から飛び出し彼等の元へ駆ける。
「ツーくん!!!」と名前を呼んで、振り返ってくれた兄は少しだけ驚いた顔をして「ミツ」と小さく微笑んでくれた。
玄関先に居るツーくん、リボーンくん、ビアンキさん。そして、山本さん。
みんなを視界に映して、大丈夫だって言い聞かせてみる。でも、やっぱりどこか心配で、不安で「行ってくるの?」と思わず聞いてしまった。
「え。あ…」
「大丈夫よ、光奈。ちょっとした買い物。アナタはお家でいい子にしてて待ってなさい。すぐに戻るわ」
どこか言い淀んでいるツーくんの代わりにビアンキさんがそう答える。
「……分かった。気を付けて」
「行ってらっしゃい」と見送ると、彼等は背中を向けて行ってしまった。
ツーくんが中学生になって、日常が一気に変わった。
と、同時にツーくんたちと私の間に何か見えない壁ができてしまったようで、凄く寂しかった。
「光奈~!!帰ったんなら、今からランボさんと遊べぇぇ!!」
「ダメ!!光奈、これから宿題!!」
彼らが行ってしまった代わりにランボくんとイーピンちゃんが私の足に絡み付いてくる。その光景だけで、モヤモヤしていた気持ちが少しだけ晴れたような気がした。
「うん、ちょっと待っててね」
無事に皆が帰って来られますようにー…行ってしまった玄関先のドアを見つめ、そう心の中で祈りを込めながら、二人を抱き上げてリビングへ引き返した。
「あ、コレ」
「なんだぁ?なにコレ、べんとう??ランボさん貰っていい??」
「ダメ、ランボ!!勝手食べる!!許さない!!」
「わ、私が山本さんに貰ったの。みんなで食べようね」
-続く-
途中まで一緒だった友だちとは随分前にサヨナラをして、ひとり家へ続く道をひたすら歩く。
友だちとサヨナラをしてからは、例の事件が気掛かりで、前を向いて歩くのも怖く、ずっと下を向いていた。けれど、もう少ししたら目印の赤い屋根が見えてくるはず。
確認のために下を向いていた顔をゆっくりと上げて息を呑む。
「山本さんっ!」
「お、ツナの妹じゃねーか!!今、帰りか?」
私を見掛けるなりいつもの爽やかな笑顔を浮かべてこちらへと山本さんは歩み寄ってくる。ふと横へ視線を向ければ、そこには私の家があった。
「あ、はい。学校が午後からお休みになって…」
「お休み?」
「えっと、並中生が襲われてるっていう」
「あーアレか」
一瞬だけ真剣な顔つきになった山本さん。だけど、すぐにいつもの笑顔を浮かべて「そっかそっか、大変だったな」と返してくれる。
「帰ってくる時なんとも無かったか??変なヤツに会ったとか」
「え?いや、全然。真っ直ぐ家に帰ってきたので」
「なら良かった。…あ、そーだ。コレやるよ!」
そう言って突然山本さんはゴソゴソと持っていた手荷物を漁り始める。「ほい」と差し出したのは、小さな包みに入った寿司とパックのお茶。
「昼飯まだだろ?」
「給食、食べて帰って」
「げっ、マジか!そっかー給食あったんだったな!んじゃあコレは要らねー「貰っていいなら!!!貰い!!!ますっ」
少し残念そうに差し出した寿司を片付けようとする山本さんに思わず被せる勢いで言ってしまう。思った以上の活きの良さに、私自身が恥ずかしくなって語尾が萎んでいく。
だけど、今さら撤回も可笑しくて、熱くなり始めてる顔を感じながら山本さんが差し出すそれを受け取った。
「アハハハ!威勢いいな!貰ってくれてサンキュ。晩ご飯にでもしてくれよ」
「いえ、こちらこそ、ありがとうございます…」
受け取ったそれを大事に抱え込んで、勢い良くお辞儀をする。ランドセルの鍵はちゃんとしていたみたいで、中身が流れ出すこともなく安心した。
「あ、そう言えば山本さんが家に来てるってことは、ツーくんにご用事…ですか?」
「ん?あぁ!そーだぜ」
「じゃあ、上がってってください」
「ツーくん帰ってると思うから」と率先して家に入り込む。私の後ろを着いてくる山本さんを背中に感じながら、逃げ込むようにリビングへ向かった。
「お邪魔しまーす」の声と共に2階へ行く足音を聞いて、私はようやくひと息つく。
「あら、おかえりなさい」
「ただいま、ママ」
「ミーちゃんも早かったのね」と言うママに、うん、とだけ返して2階へ続く階段の方へ視線を向ける。
「ツーくん帰ってた?」
「うん、ついさっきだったかしら。でもお気に入りの服を着て、またどっか行くみたいよ??」
「え」
「今日はやめといたらって言ったんだけど、リボーンくんやビアンキちゃんも一緒に行くから大丈夫だって」
「そう、なんだ」
山本さんの一件で舞い上がっていた気持ちが一気に急降下していく。何故だか確信的な理由は無いけれど、その言葉を聞いて一気に心配な気持ちが心を過った。
「………ママ」
「ん?どうしたの、ミーちゃん」
「ツーくんたち、大丈夫だよね?」
こんな言葉を投げ掛けて、心配なのは私だけじゃないはずなのに。ママは少し困った顔をしながらぎゅうっと私を抱き締める。
「大丈夫よ。心配しなくても」と耳元で優しく囁かれて思わず目に涙が込み上げてきた。
確かにツーくんは言った。
"それにやられてるって言っても風紀委員ばっかりだろ?"
"オレが狙われるってまず無いからさ"って。
そう、言ったんだ。
だから大丈夫。
「行ってきまーす!!」
突然、玄関の方からツーくんの声がして反射的にママの腕から飛び出し彼等の元へ駆ける。
「ツーくん!!!」と名前を呼んで、振り返ってくれた兄は少しだけ驚いた顔をして「ミツ」と小さく微笑んでくれた。
玄関先に居るツーくん、リボーンくん、ビアンキさん。そして、山本さん。
みんなを視界に映して、大丈夫だって言い聞かせてみる。でも、やっぱりどこか心配で、不安で「行ってくるの?」と思わず聞いてしまった。
「え。あ…」
「大丈夫よ、光奈。ちょっとした買い物。アナタはお家でいい子にしてて待ってなさい。すぐに戻るわ」
どこか言い淀んでいるツーくんの代わりにビアンキさんがそう答える。
「……分かった。気を付けて」
「行ってらっしゃい」と見送ると、彼等は背中を向けて行ってしまった。
ツーくんが中学生になって、日常が一気に変わった。
と、同時にツーくんたちと私の間に何か見えない壁ができてしまったようで、凄く寂しかった。
「光奈~!!帰ったんなら、今からランボさんと遊べぇぇ!!」
「ダメ!!光奈、これから宿題!!」
彼らが行ってしまった代わりにランボくんとイーピンちゃんが私の足に絡み付いてくる。その光景だけで、モヤモヤしていた気持ちが少しだけ晴れたような気がした。
「うん、ちょっと待っててね」
無事に皆が帰って来られますようにー…行ってしまった玄関先のドアを見つめ、そう心の中で祈りを込めながら、二人を抱き上げてリビングへ引き返した。
「あ、コレ」
「なんだぁ?なにコレ、べんとう??ランボさん貰っていい??」
「ダメ、ランボ!!勝手食べる!!許さない!!」
「わ、私が山本さんに貰ったの。みんなで食べようね」
-続く-