天星"てんせい"の守護者【リング争奪戦編】
主人公の名前変更
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息を切らしながら並中へと駆け込む。校門を潜り、聞き耳を立てて僅かな音を拾い上げながら会場となっている場所を探し走った。
「ぁ……あれだっ…!!」
少し走ったところで目に飛び込んでくる、校舎に掲げられた巨大スクリーン。それを目標にひた走ると、それを見上げるツーくんや獄寺さん、京子ちゃんのお兄さんやヴァリアーの人たちが目に入った。
その輪の中に遅れて飛び込む勇気は無くて、ちょうどあちら側から死角になる場所で足を止める。
はぁ…はぁ…とあがる息をそのままに、近くにあったフェンスへ手を添えて改めてスクリーンを見上げた。
スクリーンに映るのはヴァリアー側の長髪の人と、
「山本先輩ッ」
私の好きな人。
『それでは雨のリング、S・スクアーロ vs 山本武ー…勝負開始!!』
私の到着と同時に始まった対決。『とばすぜぇ!』の声にスクアーロと呼ばれた長髪の人が一気に山本先輩へと駆け込んで行く。
画面越しだと言うのにそれだけでビリッと肌が痛くなって体が硬直する。駆け込んだスクアーロが一太刀を振るうと同時に、山本先輩は身を低くして攻撃を交わした。
「あっ!!」
と思えば、相手の剣先から小さい何かが飛んでいく。当たる!と思った瞬間、また先輩が軌道を変えて寸前のところで交わすのを見て胸を撫で下ろした。
瞬間、ドゴォン!と大きい音を立てて水飛沫をあげる。どうやらあれは爆発するものらしい。
『ほう、避けたか』
一瞬一瞬、展開が変わるだけで心臓が止まりそう。
野球をしている先輩だから体力や反射神経は全然いい方だと分かってはいても初戦のような戦いを目の当たりにするのは、とても怖い。ずっと心臓がドクドクと鳴っている。
『あっぶねぇ〜あんたに負けてから毎日やってたイメトレのおかげだな』
『イメトレだぁ?』
先輩の一言でまた戦いが動く。
スクアーロが何かを話したかと思えば、突然姿が画面から消えた。
「消えたッ」
突然なくなった彼の姿に驚いたのは私だけじゃなくて、先輩も驚いたように体を硬直させていて。
「!!後ろッ!!」
次いで先輩の背後から出てきたスクアーロの姿に思わず声を上げてしまった。こちらの声は当然届かず、先輩の反射神経がそれに反応して竹刀を振るう。
拮抗する両者の剣と竹刀ー…だがスクアーロが『大間違いだぁ!』なんだ叫んでる最中に剣先からまた先程の爆発物が飛んでいく。
「先輩!!」
あの近さじゃあ逃げられない!!
目を見開いてフェンスを掴む手にギュッと力が込められる。ドォン!!と大きな音を立て、先輩は水飛沫と共に爆発の中へ。
「そんなっ………!?」
先輩が、と絶望し掛けたその時ー…爆発に伴って作られていた煙が突然大きな雲となって形を変える。その様子に目を見開いていると、中から無傷の山本先輩が姿を現した。
その姿に目の奥がキラッと希望を持って輝くのを感じる。同時に「すごい」と言葉が勝手に零れていた。
「あれが、山本先輩の力……!!」
大丈夫かな、ってさっきまで不安で心配していた気持ちが嘘だったかのように晴れていく。単純にすごい力を見て感動しているだけかも知れないけれど、これなら大丈夫!って、思える気がした。
ビュンと刀を振り鳴らすその仕草さえも、カッコよくて眩し過ぎる。
しかし、この展開を良しとしない者が。
『う゛お゛ぉい!!図に乗るなぁ!!ヒヨッ子がぁ!!』
スクアーロは攻撃の手を止めず再び駆け込みながら爆発物を打ち込んでいく。爆発と共に今度は先輩の左右の方向が水によって道を塞がれてしまった。
しかし、先輩も冷静に判断しすぐに水柱を立ち上げ、先程とは違う技を使って自分の身を防御していた。
スクアーロと対等に渡り合う先輩に、緊張や不安とは違うドキドキが芽生えてくる。「いけそう!!」「勝てるかも!!」って心が踊る感覚がした。
『う゛お゛ぉい小僧!!なぜ防御の後、打ち込んでこなかった!!』
そう言えば、とスクアーロの指摘を耳にして思う。しかし、立て続けに『オレに唯一傷をつけることができた最後のチャンスを潰したんだぞぉ!!』と言うスクアーロに思わずムッと小さく頬を膨らませた。
「最後って、よく言うよ」
先輩はきっとまだまだこれからなのに。
すると、今度は画面の中の山本先輩が『ハハッ』と笑顔を見せる。久しく見た彼の笑顔に思わず釘付けになって真っ直ぐにスクリーンを見つめり。
『最後ってずいぶん言ってくれるな。言っとくけど、時雨蒼燕流はこれだけじゃないんだぜ』
"時雨蒼燕流"
きっとそれは先輩が使ってる技のことを言ってるのだろう。負けん気の一切ない強気な視線に、また胸が高鳴っていくのを感じた。
先輩がまた刀を構えるー…そして、守ってばっかりだった先輩が初めてスクアーロの方へと駆け込んで行く。
*
スクリーンに釘付けになり、開いた口が塞がらない。
駆け込んで行った山本先輩は確かにスクアーロを切り付けた…はずだった。はずだったけど、当の彼は傷一つ付いてないし『効かねぇぞ』なんて言う始末。
「なんで…確かに先輩の攻撃は…」
『う゛お゛ぉい。お前の使う無敵の流派とやらはこんなものかぁ!?』
高鳴っていた胸の鼓動が別の意味をもってドクドクと音を立てる。僅かに見えていた希望が一気に絶望へと変わった気がしている。
『それとは別にひとつ腑に落ちねぇことがある。貴様、なぜ今の一太刀に刃ではなく峰を使った?』
峰…??峰打ちって、こと、だよね。斬ってるように見えるけど本当は斬れてない、みたいな…でも、先輩なんで。
スクアーロの言葉に頭がグルグルと最適解を求め処理を始める。が、答えは意外とすんなり先輩の口から聞かされ。
『そりゃあオレはあんたに勝つためにやってんで、殺すつもりじゃねーからな』
「勝つ、ため」
ストン、とその言葉が心に落ちる。
ビアンキさんからも聞いたような意味をもった先輩の言葉に、ハッとさせられたような感覚を覚える。
しかし、そんな私とは反対にスクアーロはその答えに激昂した様子を見せ、また戦いは一気に動き出そうとしていて。
「先輩ッ!!」
勢いよく動き出したスクアーロに対抗すべく水柱を打ち上げた先輩。だけど、全く同じような水柱を相手も打ち上げて…目まぐるしく展開される戦いを目で追うのがやっと。水柱によって見えなくなっていた二人の姿がようやく見えたと思った時には先輩の体に深い傷ができていた。
瞬間的に起こった出来事を先輩も理解できてないみたいで、すごく驚いた顔をしながらその場に座り込んでしまう。
フェンスを掴んでいた手が離れ自分の胸元へとやってくる。ギュッと拳を握り締めて想い人の名前を呼んでみても、私の声は届かない。今すぐにでも駆け出したいが、それもできないもどかしさ。
じわっと目に涙が溜まるのを感じながら見守ることしかできない。
そんな中、スクアーロが口にした。
『時雨蒼燕流は、昔ひねりつぶした流派だからなぁ!!』
その言葉にサァッと血の気が引いてしまった。
ー続くー
「ぁ……あれだっ…!!」
少し走ったところで目に飛び込んでくる、校舎に掲げられた巨大スクリーン。それを目標にひた走ると、それを見上げるツーくんや獄寺さん、京子ちゃんのお兄さんやヴァリアーの人たちが目に入った。
その輪の中に遅れて飛び込む勇気は無くて、ちょうどあちら側から死角になる場所で足を止める。
はぁ…はぁ…とあがる息をそのままに、近くにあったフェンスへ手を添えて改めてスクリーンを見上げた。
スクリーンに映るのはヴァリアー側の長髪の人と、
「山本先輩ッ」
私の好きな人。
『それでは雨のリング、S・スクアーロ vs 山本武ー…勝負開始!!』
私の到着と同時に始まった対決。『とばすぜぇ!』の声にスクアーロと呼ばれた長髪の人が一気に山本先輩へと駆け込んで行く。
画面越しだと言うのにそれだけでビリッと肌が痛くなって体が硬直する。駆け込んだスクアーロが一太刀を振るうと同時に、山本先輩は身を低くして攻撃を交わした。
「あっ!!」
と思えば、相手の剣先から小さい何かが飛んでいく。当たる!と思った瞬間、また先輩が軌道を変えて寸前のところで交わすのを見て胸を撫で下ろした。
瞬間、ドゴォン!と大きい音を立てて水飛沫をあげる。どうやらあれは爆発するものらしい。
『ほう、避けたか』
一瞬一瞬、展開が変わるだけで心臓が止まりそう。
野球をしている先輩だから体力や反射神経は全然いい方だと分かってはいても初戦のような戦いを目の当たりにするのは、とても怖い。ずっと心臓がドクドクと鳴っている。
『あっぶねぇ〜あんたに負けてから毎日やってたイメトレのおかげだな』
『イメトレだぁ?』
先輩の一言でまた戦いが動く。
スクアーロが何かを話したかと思えば、突然姿が画面から消えた。
「消えたッ」
突然なくなった彼の姿に驚いたのは私だけじゃなくて、先輩も驚いたように体を硬直させていて。
「!!後ろッ!!」
次いで先輩の背後から出てきたスクアーロの姿に思わず声を上げてしまった。こちらの声は当然届かず、先輩の反射神経がそれに反応して竹刀を振るう。
拮抗する両者の剣と竹刀ー…だがスクアーロが『大間違いだぁ!』なんだ叫んでる最中に剣先からまた先程の爆発物が飛んでいく。
「先輩!!」
あの近さじゃあ逃げられない!!
目を見開いてフェンスを掴む手にギュッと力が込められる。ドォン!!と大きな音を立て、先輩は水飛沫と共に爆発の中へ。
「そんなっ………!?」
先輩が、と絶望し掛けたその時ー…爆発に伴って作られていた煙が突然大きな雲となって形を変える。その様子に目を見開いていると、中から無傷の山本先輩が姿を現した。
その姿に目の奥がキラッと希望を持って輝くのを感じる。同時に「すごい」と言葉が勝手に零れていた。
「あれが、山本先輩の力……!!」
大丈夫かな、ってさっきまで不安で心配していた気持ちが嘘だったかのように晴れていく。単純にすごい力を見て感動しているだけかも知れないけれど、これなら大丈夫!って、思える気がした。
ビュンと刀を振り鳴らすその仕草さえも、カッコよくて眩し過ぎる。
しかし、この展開を良しとしない者が。
『う゛お゛ぉい!!図に乗るなぁ!!ヒヨッ子がぁ!!』
スクアーロは攻撃の手を止めず再び駆け込みながら爆発物を打ち込んでいく。爆発と共に今度は先輩の左右の方向が水によって道を塞がれてしまった。
しかし、先輩も冷静に判断しすぐに水柱を立ち上げ、先程とは違う技を使って自分の身を防御していた。
スクアーロと対等に渡り合う先輩に、緊張や不安とは違うドキドキが芽生えてくる。「いけそう!!」「勝てるかも!!」って心が踊る感覚がした。
『う゛お゛ぉい小僧!!なぜ防御の後、打ち込んでこなかった!!』
そう言えば、とスクアーロの指摘を耳にして思う。しかし、立て続けに『オレに唯一傷をつけることができた最後のチャンスを潰したんだぞぉ!!』と言うスクアーロに思わずムッと小さく頬を膨らませた。
「最後って、よく言うよ」
先輩はきっとまだまだこれからなのに。
すると、今度は画面の中の山本先輩が『ハハッ』と笑顔を見せる。久しく見た彼の笑顔に思わず釘付けになって真っ直ぐにスクリーンを見つめり。
『最後ってずいぶん言ってくれるな。言っとくけど、時雨蒼燕流はこれだけじゃないんだぜ』
"時雨蒼燕流"
きっとそれは先輩が使ってる技のことを言ってるのだろう。負けん気の一切ない強気な視線に、また胸が高鳴っていくのを感じた。
先輩がまた刀を構えるー…そして、守ってばっかりだった先輩が初めてスクアーロの方へと駆け込んで行く。
*
スクリーンに釘付けになり、開いた口が塞がらない。
駆け込んで行った山本先輩は確かにスクアーロを切り付けた…はずだった。はずだったけど、当の彼は傷一つ付いてないし『効かねぇぞ』なんて言う始末。
「なんで…確かに先輩の攻撃は…」
『う゛お゛ぉい。お前の使う無敵の流派とやらはこんなものかぁ!?』
高鳴っていた胸の鼓動が別の意味をもってドクドクと音を立てる。僅かに見えていた希望が一気に絶望へと変わった気がしている。
『それとは別にひとつ腑に落ちねぇことがある。貴様、なぜ今の一太刀に刃ではなく峰を使った?』
峰…??峰打ちって、こと、だよね。斬ってるように見えるけど本当は斬れてない、みたいな…でも、先輩なんで。
スクアーロの言葉に頭がグルグルと最適解を求め処理を始める。が、答えは意外とすんなり先輩の口から聞かされ。
『そりゃあオレはあんたに勝つためにやってんで、殺すつもりじゃねーからな』
「勝つ、ため」
ストン、とその言葉が心に落ちる。
ビアンキさんからも聞いたような意味をもった先輩の言葉に、ハッとさせられたような感覚を覚える。
しかし、そんな私とは反対にスクアーロはその答えに激昂した様子を見せ、また戦いは一気に動き出そうとしていて。
「先輩ッ!!」
勢いよく動き出したスクアーロに対抗すべく水柱を打ち上げた先輩。だけど、全く同じような水柱を相手も打ち上げて…目まぐるしく展開される戦いを目で追うのがやっと。水柱によって見えなくなっていた二人の姿がようやく見えたと思った時には先輩の体に深い傷ができていた。
瞬間的に起こった出来事を先輩も理解できてないみたいで、すごく驚いた顔をしながらその場に座り込んでしまう。
フェンスを掴んでいた手が離れ自分の胸元へとやってくる。ギュッと拳を握り締めて想い人の名前を呼んでみても、私の声は届かない。今すぐにでも駆け出したいが、それもできないもどかしさ。
じわっと目に涙が溜まるのを感じながら見守ることしかできない。
そんな中、スクアーロが口にした。
『時雨蒼燕流は、昔ひねりつぶした流派だからなぁ!!』
その言葉にサァッと血の気が引いてしまった。
ー続くー
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