天星"てんせい"の守護者【リング争奪戦編】
主人公の名前変更
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長い一夜が明けて目が覚める。昨日の修行の時から雨は降っていたけど、昨晩は随分と土砂降りだったように感じた。
昨日サボった分、今日は頑張らなきゃ…と重たい体を無理やり起こしてリビングへと降りる。
「…あれ?」
普段ならいつもそこに鼻歌を奏でて料理を作ってるママが居るはずなのに、今日はもぬけの殻。代わりにテーブルへ一枚の置き手紙が残されていた。
なにが書いてあるのだろう、とその手紙を持ち読み上げる。
「ランボくんが入院するので、しばらく家を行き来しま………す?」
ランボくんが、入院…?
なんで、と思い立つもすぐに脳裏を過ったのは例の争奪戦のこと。昨晩の戦いは確か雷の守護者同士の対決だった気がする。
もしかして、ランボくん…やられたの?
サッと血の気が引いていく。しかし、ママが見舞いに行けるくらいって事はそんな大事にはなっていないはずだよね…といいように自己解釈しながら、僅かに震える体で私はビアンキさんの元へと向かった。
*
「来たのね」
ビアンキさんは昨日と変わらない様子で私を迎え入れる。しかし、昨日一昨日と違って彼女の表情はどこか暗めだ。
「…光奈。アナタ、ランボのことなにか聞いてる?」
"ランボ"と聞いて一瞬、時が止まる。次いでゆっくりと首を横に振ればビアンキさんは静々と昨日の戦いを私に話し始めた。
まだ5歳であるランボくんが雷の守護者として選ばれ、戦いに参加したこと。
10年後、20年後の姿となってヴァリアー側と対等に、またはそれ以上の戦いになろうとしていたことー…勝ち直前で、元の姿に戻ってしまい、意識を飛ばすくらいの重傷を負ってしまったということ。
「それだけじゃない」
と加えて、ツーくんがランボくんを助け、雷のリングのみならず大空のリングまでも奪われてしまったんだとビアンキさんは私に教えてくれた。
「昨日の戦い、見に行かなかったそうね。リボーンから聞いたわ」
彼女の言葉に思わず視線を逸らしてしまう。
「アナタの異変には昨日から気付いていたわ。幼少期からこちらの世界に触れてないアナタにとって、その反応が普通よ……それに私は思っていたの、この世界に飛び込むにはアナタはまだ早い。って」
「………」
「だけどね、光奈。アナタ以上に幼い子がこの戦いに挑んだってこと。それを無かったことにはしないであげて」
「ッ」
「…さ、昨日の分も今日はみっちりやるわよ」
そう言って構えの姿勢をとるビアンキさん。彼女の言葉にどこか引っ掛かりを覚えながら、私も彼女との修行を始めるべくクラブを構えた。
・
・
今日も今日とコテンパンにしてやられて、傷を増やすだけ増やして帰宅する。しかし、家の明かりは付いてなくて、リビングに顔を覗かせたら今朝とは違うご飯が何食分かと"またしばらく家を空ける"と言うパパの置き手紙があった。
「ママ、1回帰ってきたのかな」
少し家が綺麗になってる辺り、知らない間に帰宅してまたすぐにランボくんのお見舞いにでも行ったのだろう。
"アナタ以上に幼い子がこの戦いに挑んだ"
ビアンキさんの言葉が頭を過ぎる。思うことはあっても、まだ心のどこかで私は逃げ続けてしまっている。
今日も、戦いを見に行くことはできなかった。
・
・
「昨日も行かなかったのね」
翌朝、会って早々ビアンキさんは私にそう投げ掛ける。何も返さずただ見つめるだけの私に、彼女は視線を逸らして続けた。
「昨日は隼人が戦ったそうよ」
「獄寺さんが?」
そして、ビアンキさんはまた昨日と同じように静かに昨晩の戦いを私に話し始める。
昨晩の戦いは嵐の守護者同士の戦いだったらしく、こちらからは獄寺さん。ヴァリアーからはベルフェゴールっていう人が戦ったのだそう。
制限時間15分という限られた時間の中で激闘を繰り広げたのだとビアンキさんは言った。
「なんで、制限時間なんか」
「起爆装置」
「え」
「時間が来たら自動的に爆発していく起爆装置が昨日の戦闘で用いられたらしいの。嵐の守護者戦に相応しいようにってね」
「………」
無事、だったんですか?
全てを口にするのははばかられ、視線だけで問うてしまう。だがその視線の意図を汲んでくれた彼女は静かに目を伏せて、口を開いた。
「無事、だったみたい」
その答えに胸を撫で下ろす。
「だけど、リングは向こうに奪われたって」
「え」
待って?それじゃあ、今こちら側のリングの数って…と脳内で勝手に計算を始める。そんな私を一瞥してビアンキさんは構わず続けた。
「隼人は」
「?」
「隼人は…みんなと、生きることを選んだの」
そう言うビアンキさんの表情はすごくお姉さんの表情をしていた。大切な弟を思うー…姉の顔。
「私も実際に見た訳じゃない。この話はリボーンから聞いただけだから……でも。それでも、あの子がって思うと……感慨深いものがあるわ」
「ビアンキ、さん」
どこか目尻に涙を滲ませた彼女は一度瞬きをすると、顔付きが変わったように凛々しくなって私を真っ直ぐに見つめる。そこには先程の獄寺さんを思う一人のお姉さんな彼女ではなくて、私と対峙する一人の人間としての彼女が立っていた。
「光奈」
突然、名前を呼ばれ体が硬直する。
「今から言う言葉は昨日一昨日と戦いから目を背けてきたアナタに言うわ」
「ッ」
「この戦いは誰も"一人で"勝とうなんて思ってないの」
「…!!」
「みんなが、みんなを思って"全員で"勝とうとしているのよ」
真っ直ぐに目を逸らさずビアンキさんが続ける。
「笹川了平が初戦で勝ったのも、ツナがランボを助けるために戦いへ割って入ったのも、隼人がリングを奪われてまで生きて戦いから帰ってきたのも…全部は"みんな"のため」
「この戦いは個人戦だけど個人戦じゃないー…みんなで勝つために、一人ひとりが戦ってるってこと。それだけは忘れないで」
「いい?」と問われるも、はいもいいえも返すことができなかった。その言葉はあまりにも強くてー…少し、胸が痛過ぎるほど私の心に複雑に突き刺さった。
「あ、それと」
修行を開始する前に、とビアンキさんはまだ何かあるように続ける。
「今日は山本武が戦うそうよ」
挙げられたのは私の想い人の名前。目を丸くして彼女を見つめる私に、ビアンキさんは小さく笑みを浮かべて。
「気になるなら行きなさい。行かない後悔よりは行った後悔の方が断然いいわ」
「ッ」
「それを決めるのはアナタよ」
それじゃあ、の合図に今日の修行が始まる。彼女との修行の最中ー…ずっと頭の中を駆け巡るのは私の大好きなあの人の笑顔だった。
-続く-
昨日サボった分、今日は頑張らなきゃ…と重たい体を無理やり起こしてリビングへと降りる。
「…あれ?」
普段ならいつもそこに鼻歌を奏でて料理を作ってるママが居るはずなのに、今日はもぬけの殻。代わりにテーブルへ一枚の置き手紙が残されていた。
なにが書いてあるのだろう、とその手紙を持ち読み上げる。
「ランボくんが入院するので、しばらく家を行き来しま………す?」
ランボくんが、入院…?
なんで、と思い立つもすぐに脳裏を過ったのは例の争奪戦のこと。昨晩の戦いは確か雷の守護者同士の対決だった気がする。
もしかして、ランボくん…やられたの?
サッと血の気が引いていく。しかし、ママが見舞いに行けるくらいって事はそんな大事にはなっていないはずだよね…といいように自己解釈しながら、僅かに震える体で私はビアンキさんの元へと向かった。
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「来たのね」
ビアンキさんは昨日と変わらない様子で私を迎え入れる。しかし、昨日一昨日と違って彼女の表情はどこか暗めだ。
「…光奈。アナタ、ランボのことなにか聞いてる?」
"ランボ"と聞いて一瞬、時が止まる。次いでゆっくりと首を横に振ればビアンキさんは静々と昨日の戦いを私に話し始めた。
まだ5歳であるランボくんが雷の守護者として選ばれ、戦いに参加したこと。
10年後、20年後の姿となってヴァリアー側と対等に、またはそれ以上の戦いになろうとしていたことー…勝ち直前で、元の姿に戻ってしまい、意識を飛ばすくらいの重傷を負ってしまったということ。
「それだけじゃない」
と加えて、ツーくんがランボくんを助け、雷のリングのみならず大空のリングまでも奪われてしまったんだとビアンキさんは私に教えてくれた。
「昨日の戦い、見に行かなかったそうね。リボーンから聞いたわ」
彼女の言葉に思わず視線を逸らしてしまう。
「アナタの異変には昨日から気付いていたわ。幼少期からこちらの世界に触れてないアナタにとって、その反応が普通よ……それに私は思っていたの、この世界に飛び込むにはアナタはまだ早い。って」
「………」
「だけどね、光奈。アナタ以上に幼い子がこの戦いに挑んだってこと。それを無かったことにはしないであげて」
「ッ」
「…さ、昨日の分も今日はみっちりやるわよ」
そう言って構えの姿勢をとるビアンキさん。彼女の言葉にどこか引っ掛かりを覚えながら、私も彼女との修行を始めるべくクラブを構えた。
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今日も今日とコテンパンにしてやられて、傷を増やすだけ増やして帰宅する。しかし、家の明かりは付いてなくて、リビングに顔を覗かせたら今朝とは違うご飯が何食分かと"またしばらく家を空ける"と言うパパの置き手紙があった。
「ママ、1回帰ってきたのかな」
少し家が綺麗になってる辺り、知らない間に帰宅してまたすぐにランボくんのお見舞いにでも行ったのだろう。
"アナタ以上に幼い子がこの戦いに挑んだ"
ビアンキさんの言葉が頭を過ぎる。思うことはあっても、まだ心のどこかで私は逃げ続けてしまっている。
今日も、戦いを見に行くことはできなかった。
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「昨日も行かなかったのね」
翌朝、会って早々ビアンキさんは私にそう投げ掛ける。何も返さずただ見つめるだけの私に、彼女は視線を逸らして続けた。
「昨日は隼人が戦ったそうよ」
「獄寺さんが?」
そして、ビアンキさんはまた昨日と同じように静かに昨晩の戦いを私に話し始める。
昨晩の戦いは嵐の守護者同士の戦いだったらしく、こちらからは獄寺さん。ヴァリアーからはベルフェゴールっていう人が戦ったのだそう。
制限時間15分という限られた時間の中で激闘を繰り広げたのだとビアンキさんは言った。
「なんで、制限時間なんか」
「起爆装置」
「え」
「時間が来たら自動的に爆発していく起爆装置が昨日の戦闘で用いられたらしいの。嵐の守護者戦に相応しいようにってね」
「………」
無事、だったんですか?
全てを口にするのははばかられ、視線だけで問うてしまう。だがその視線の意図を汲んでくれた彼女は静かに目を伏せて、口を開いた。
「無事、だったみたい」
その答えに胸を撫で下ろす。
「だけど、リングは向こうに奪われたって」
「え」
待って?それじゃあ、今こちら側のリングの数って…と脳内で勝手に計算を始める。そんな私を一瞥してビアンキさんは構わず続けた。
「隼人は」
「?」
「隼人は…みんなと、生きることを選んだの」
そう言うビアンキさんの表情はすごくお姉さんの表情をしていた。大切な弟を思うー…姉の顔。
「私も実際に見た訳じゃない。この話はリボーンから聞いただけだから……でも。それでも、あの子がって思うと……感慨深いものがあるわ」
「ビアンキ、さん」
どこか目尻に涙を滲ませた彼女は一度瞬きをすると、顔付きが変わったように凛々しくなって私を真っ直ぐに見つめる。そこには先程の獄寺さんを思う一人のお姉さんな彼女ではなくて、私と対峙する一人の人間としての彼女が立っていた。
「光奈」
突然、名前を呼ばれ体が硬直する。
「今から言う言葉は昨日一昨日と戦いから目を背けてきたアナタに言うわ」
「ッ」
「この戦いは誰も"一人で"勝とうなんて思ってないの」
「…!!」
「みんなが、みんなを思って"全員で"勝とうとしているのよ」
真っ直ぐに目を逸らさずビアンキさんが続ける。
「笹川了平が初戦で勝ったのも、ツナがランボを助けるために戦いへ割って入ったのも、隼人がリングを奪われてまで生きて戦いから帰ってきたのも…全部は"みんな"のため」
「この戦いは個人戦だけど個人戦じゃないー…みんなで勝つために、一人ひとりが戦ってるってこと。それだけは忘れないで」
「いい?」と問われるも、はいもいいえも返すことができなかった。その言葉はあまりにも強くてー…少し、胸が痛過ぎるほど私の心に複雑に突き刺さった。
「あ、それと」
修行を開始する前に、とビアンキさんはまだ何かあるように続ける。
「今日は山本武が戦うそうよ」
挙げられたのは私の想い人の名前。目を丸くして彼女を見つめる私に、ビアンキさんは小さく笑みを浮かべて。
「気になるなら行きなさい。行かない後悔よりは行った後悔の方が断然いいわ」
「ッ」
「それを決めるのはアナタよ」
それじゃあ、の合図に今日の修行が始まる。彼女との修行の最中ー…ずっと頭の中を駆け巡るのは私の大好きなあの人の笑顔だった。
-続く-