天星"てんせい"の守護者【リング争奪戦編】
主人公の名前変更
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校舎前には既に獄寺さんや京子ちゃんのお兄さん、山本先輩が待っていた。私や後ろに居るツーくんを見付けるなり、こちらへと気付いてくれて手を振ったり頭を下げたりしてくれる。
「来たんだな、光奈ちゃんも」
三人の輪の中に溶け込むと笑顔で山本先輩が言う。ツーくんとの先の喧嘩で、モヤモヤしている気持ちがその笑顔のおかげで僅かばかり晴れた気がした。
「静かだね…本当に並中で良かったのかな…」
「やつらまだ来てねーのかな」
ツーくんたちが言うように周りは酷く静まり返っていて、対戦場所があってるのかさえ不安になる。ヴァリアーの人たちの姿も見えない。
彼らが言うようにまだ…
「とっくにスタンバイしてますよ」
不意に声が聞こえ、勢いよく顔を上げる。そこには昨日の女性二人組チェルベッロとヴァリアーが並んで屋根の上に立っていた。
「厳選なる協議の結果」
「今宵のリング争奪戦の対戦カードが決まりました」
淡々とした口調でチェルベッロが続ける。心拍数が少しずつ上昇して、浅くなっていく呼吸にゆっくりと胸元へ手を当てた。
「第一戦は、晴れの守護者同士の対決です」
晴れの守護者、という事は自分ではない。
ホッと胸を撫で下ろしチラッとツーくんたちの方を盗み見る。晴れの守護者はどうやら京子ちゃんのお兄さんになるらしい。ヴァリアー側は、サングラスを掛けたオネェチックな男の人みたい。
発表が済まされチェルベッロとヴァリアーが屋根から飛び降りてくる。結構な高さだと言うのに全く怯まない辺りが少し恐ろしい。
「よくお集まりいただきました」
「それでは只今より後継者の座を賭けリング争奪戦を開始します」
「「あちらをご覧ください」」
チェルベッロが指差す先ー…そこには大きなリングコートが設営されてあった。
こんな大掛かりなものをいつ?!と思うのはツーくんたちも一緒らしい。ヴァリアー側も内輪でリングコートについて軽く話をしている。
「ほ、本当に勝負が…始まるんだ…」
ボソッと呟いたツーくんの声が耳に残って、少しだけ顔を向ける。次いでしゃがみ込み頭を抱えた彼の気持ちが、シンクロしてきそうで早々に視線を逸らした。
自分が戦うんじゃないのに、すごく心臓がドキドキする。
「ねぇ?ボスまだかしら?私の晴れ舞台だっていうのに〜」
「欠席みたいだね」
「あの男が他人に興味あるわきゃねぇ…代わりに来てるコイツでさえ興味ねぇってツラだしなぁ…」
「……………」
「う゛ぉおい!無視すんなノーニス!!」
"ノーニス"と呼ばれた男の子の名前に反応し、チラッとだけ視線を向ける。初めて彼を見た時と受ける印象は全く同じで表情という表情が全くもって削ぎ落とされている。
長髪の人に何かと言われてるが、それも全く気にしていない様子で彼は静かにため息をついて視線を逸らした。
「それでは晴れの守護者、リングの中央へ来てください」
そうこうしているうちに話は進んで、いよいよ戦いが始まろうとしている。「行ってくる!まかせとけ!」と拳を突き上げ、リングへ向かう京子ちゃんのお兄さんをザワザワとした気持ちで見送った。
「なぁツナ、円陣とか組まねーの?」
「あぁ?!」
「え?」
「ふぇ」
と思ったら、突然山本先輩が口を開く。突拍子もない提案に思わずツーくん、獄寺さんと同じような反応が口からついて出た。それに快く応えたは当然、京子ちゃんのお兄さんで「一度やってみたかったんだ!」の言葉と共にツーくんと獄寺さんは容赦なく二人の輪の中へと引っ張られた。
ど、どうしようと一人入り損ねてワタワタしてしまう私。お、男の子同士のだし私なんて…って思ったのも束の間「光奈ちゃんも来いよ!」の声に俯いていた顔を一気にあげる。
「ほら」
目に映る先ツーくんと山本先輩の間に一人分の空間ができていて、早く!と言わんばかりの笑顔で山本先輩が私を招く。ツーくんは少し気まずそうな表情を浮かべながらも私が来ることを拒むことはなくて、大人しくその輪の中へと入り込んだ。
「了平ーッ、ファイッ」
「「オー!!」」
「おー…」
「お、おー!」
「…」
円陣を組み終えた京子ちゃんのお兄さんは今度こそ元気にリングの方へと向かって行く。
*
リングの最終確認が終わり、チェーンを付けてお兄さんはリングを首にぶら下げる。どうやら相手を倒してリングを奪った方が勝ちというシンプルで随分と酷なルールらしい。
お兄さんと対するオネェみたいな男の人・ルッスーリアという人は京子ちゃんのお兄さんとの戦いを心底喜んでいるように見えた。ボクシングをしているお兄さん。それに対しルッスーリアはムエタイの構えをとって、はじまりの合図を待っていた。
「やはりヴァリアーも晴れの守護者は格闘家か」
リボーンくんが確信付くように言う。"ファミリーを襲う逆境を、自らの肉体で砕き、明るく照らす日輪となる"それが晴れの守護者の使命だ、と続けて。
それぞれに使命なんてあるんだ、と彼の言葉をぼんやりと聞きながらリングの方へ視線を向ける。
いよいよバトルが始まるー…
「バトル開始!!」
チェルベッロの合図と共に、戦いの幕が上がった。
「?!?!」
瞬間、辺りがバッと明るく照らされ視界が遮られる。眩しくて思わず目を瞑るとリボーンくんから「これ掛けとけ」とサングラスを渡された。
チェルベッロの話によると、この特設リングは晴れの守護者にふさわしいように設計された日輪のコロシアムになるらしい。疑似太陽によって照らされるリングは眩し過ぎて、視界を守ってくれるものがないと何も見えない。
待って、京子ちゃんのお兄さんサングラス…!!
ヴァリアー側の人は元々サングラスを掛けていた気がする。思い立って改めて二人を確認すると、ルッスーリアはサングラスをしていて、お兄さんはサングラスが無いから目を瞑ってリングに立っていた。
不公平だ…!!
そう思うのはツーくんも同じで、すぐにチェルベッロへ抗議するも戦闘が始まればこちら側の介入はできないと切り捨てられてしまう。もし強行して介入すれば失格扱いでリングも没収されてしまうらしい。
「「そんな…」」
ツーくんと言葉が重なる。
見えないお兄さんと、見えるヴァリアーでは分が悪すぎる。現に的が当たらないお兄さんに対してルッスーリアは的確にお兄さんを攻撃する。
「ッ!!」
見えない攻撃に踏ん張りの利かないお兄さんの体はロープへと向かい、悲痛な叫びを上げて倒れ込む。
目にしている光景が信じられなくて、胸がとても痛い。キリキリなんてものじゃない。ぎゅうって締め付けられるような苦しい痛み。ルッスーリアの物騒な比喩の言葉にさえ、軽く絶望を覚える。
「ふざけるな!」
しかし、お兄さんはしっかりと立ち上がりルッスーリアへと向かい、駆け込んでパンチを繰り出す。どっ!と見事に当たる一撃。
「当たった!」
そう喜んだのも束の間。
「!!!!!!」
お兄さんの繰り出す左腕が今度はルッスーリアの膝によって大きなダメージとなり、反動で下がった体は熱くロープにて熱せられその場へと倒れ込んでしまった。
衝撃だ…衝撃、過ぎる…。
目の前で繰り広げられてる戦いがあまりにも壮絶過ぎて、この世界へ足を踏み入れようとしている自分自身にー…場違い過ぎる感覚を覚えて、一気に血の気が引いた。
・
・
気付けば晴れの守護者の戦いは決着していた。
私の気付かないうちにコロネロくんが来ていたり、京子ちゃんが来ていたり。眩しかった照明も砕け消えていて、ハッとした時にはヴァリアー側の人・ルッスーリアが膝を砕かれ「う…うそよぉ!」と声を上げていた。
「待って!まだお兄ちゃんが…!」
「もう終わりだ。オレはねむいぜ、コラ」
京子ちゃんを引き居なくなるコロネロくんを横目に、ようやく戻った自身の意識をリングへと向ける。息があっているお兄さんの体は凄くボロボロだ。
「緊張感のあるいい試合だったぞ。さぁリングを渡してくれ」
終わった戦い。しかし、ルッスーリアはなぜかそれを酷く拒んでまだ終わってない!とお兄さんに再戦を申し込んだ。すごく必死そうなその様子にどうしたんだろう、と疑問をもつ。
その瞬間。
どんっと言う鈍い音と共にルッスーリアの背中に何かが被弾する。ゆっくりとルッスーリアが倒れる先、ヴァリアー側の機械のような者の指からモクモクと湯気が立ち込めていた。
「え」
目を疑う。
「やる時はやる。さすがボス補佐だね、ゴーラ・モスカ」
リボーンくんと同じ赤ちゃんみたいな子がその機械みたいな者を褒める。その様子からして、ルッスーリアを倒したのはあのゴーラ・モスかという者だと理解した。
「あいつ…味方を!」
「どーなってやがる…」
「なんで」
「弱者は消す。これがヴァリアーが常に最強の部隊である所以の一つだ」
立ち込める疑問の数々、それを淡々とした態度でリボーンくんは話した。
「弱者は…消す…?」
隣でツーくんが呟いた。
今日一日だけで受ける衝撃があまりにも多過ぎるー…「しっかりしろ!」とルッスーリアに言うお兄さんに対して、チェルベッロは極めて冷静にルッスーリアの再起不能を確認して勝敗を言い渡す。
そして今日から明日の対戦も告げられるようになるらしく。
明日は、雷の守護者の対決が決定した。
そこからの記憶はまたショックか何かでごっそりと抜け落ちてー…気付けば私は家に帰って、風呂に入って、布団へと潜り込んでいた。
ふと、思い出すのはビアンキさんの言葉。
"アナタはこういう世界に足を踏み入れようとしているの。ツナたちと同じ世界に飛び込みたいなら、それ相応の覚悟が必要よ"
その意味が、今回の戦いで何となく分かった。
「ッ」
思い出すのは先の激闘。
私の相手はノーニスって言う人だった気がするー…表情を削ぎ落としたような寡黙な男の子。
彼との戦闘を頭の中で簡単にシュミレーションして。
すぐに、絶望した。
「……うぅッ」
彼自身の強さは分からないけれど、今日のルッスーリアという人と同じぐらいの強さだとしたら、と考えてお腹がギュッと痛くなる。
次いで伴う吐き気が気持ち悪くて早々に眠ってしまおうと目を瞑った。
もう、見たくもない。
私は、私の飛び込もうとしている世界の壮絶さに気付いてしまった。リングを受け取ってしまった手前、もう引き返せないのは薄々と気付いている。
だけど、見てしまった。見えてしまった目の前の壁はあまりにも高過ぎて。
私の心はー…逃げるように背中を向けてしまった。
ー続くー
「来たんだな、光奈ちゃんも」
三人の輪の中に溶け込むと笑顔で山本先輩が言う。ツーくんとの先の喧嘩で、モヤモヤしている気持ちがその笑顔のおかげで僅かばかり晴れた気がした。
「静かだね…本当に並中で良かったのかな…」
「やつらまだ来てねーのかな」
ツーくんたちが言うように周りは酷く静まり返っていて、対戦場所があってるのかさえ不安になる。ヴァリアーの人たちの姿も見えない。
彼らが言うようにまだ…
「とっくにスタンバイしてますよ」
不意に声が聞こえ、勢いよく顔を上げる。そこには昨日の女性二人組チェルベッロとヴァリアーが並んで屋根の上に立っていた。
「厳選なる協議の結果」
「今宵のリング争奪戦の対戦カードが決まりました」
淡々とした口調でチェルベッロが続ける。心拍数が少しずつ上昇して、浅くなっていく呼吸にゆっくりと胸元へ手を当てた。
「第一戦は、晴れの守護者同士の対決です」
晴れの守護者、という事は自分ではない。
ホッと胸を撫で下ろしチラッとツーくんたちの方を盗み見る。晴れの守護者はどうやら京子ちゃんのお兄さんになるらしい。ヴァリアー側は、サングラスを掛けたオネェチックな男の人みたい。
発表が済まされチェルベッロとヴァリアーが屋根から飛び降りてくる。結構な高さだと言うのに全く怯まない辺りが少し恐ろしい。
「よくお集まりいただきました」
「それでは只今より後継者の座を賭けリング争奪戦を開始します」
「「あちらをご覧ください」」
チェルベッロが指差す先ー…そこには大きなリングコートが設営されてあった。
こんな大掛かりなものをいつ?!と思うのはツーくんたちも一緒らしい。ヴァリアー側も内輪でリングコートについて軽く話をしている。
「ほ、本当に勝負が…始まるんだ…」
ボソッと呟いたツーくんの声が耳に残って、少しだけ顔を向ける。次いでしゃがみ込み頭を抱えた彼の気持ちが、シンクロしてきそうで早々に視線を逸らした。
自分が戦うんじゃないのに、すごく心臓がドキドキする。
「ねぇ?ボスまだかしら?私の晴れ舞台だっていうのに〜」
「欠席みたいだね」
「あの男が他人に興味あるわきゃねぇ…代わりに来てるコイツでさえ興味ねぇってツラだしなぁ…」
「……………」
「う゛ぉおい!無視すんなノーニス!!」
"ノーニス"と呼ばれた男の子の名前に反応し、チラッとだけ視線を向ける。初めて彼を見た時と受ける印象は全く同じで表情という表情が全くもって削ぎ落とされている。
長髪の人に何かと言われてるが、それも全く気にしていない様子で彼は静かにため息をついて視線を逸らした。
「それでは晴れの守護者、リングの中央へ来てください」
そうこうしているうちに話は進んで、いよいよ戦いが始まろうとしている。「行ってくる!まかせとけ!」と拳を突き上げ、リングへ向かう京子ちゃんのお兄さんをザワザワとした気持ちで見送った。
「なぁツナ、円陣とか組まねーの?」
「あぁ?!」
「え?」
「ふぇ」
と思ったら、突然山本先輩が口を開く。突拍子もない提案に思わずツーくん、獄寺さんと同じような反応が口からついて出た。それに快く応えたは当然、京子ちゃんのお兄さんで「一度やってみたかったんだ!」の言葉と共にツーくんと獄寺さんは容赦なく二人の輪の中へと引っ張られた。
ど、どうしようと一人入り損ねてワタワタしてしまう私。お、男の子同士のだし私なんて…って思ったのも束の間「光奈ちゃんも来いよ!」の声に俯いていた顔を一気にあげる。
「ほら」
目に映る先ツーくんと山本先輩の間に一人分の空間ができていて、早く!と言わんばかりの笑顔で山本先輩が私を招く。ツーくんは少し気まずそうな表情を浮かべながらも私が来ることを拒むことはなくて、大人しくその輪の中へと入り込んだ。
「了平ーッ、ファイッ」
「「オー!!」」
「おー…」
「お、おー!」
「…」
円陣を組み終えた京子ちゃんのお兄さんは今度こそ元気にリングの方へと向かって行く。
*
リングの最終確認が終わり、チェーンを付けてお兄さんはリングを首にぶら下げる。どうやら相手を倒してリングを奪った方が勝ちというシンプルで随分と酷なルールらしい。
お兄さんと対するオネェみたいな男の人・ルッスーリアという人は京子ちゃんのお兄さんとの戦いを心底喜んでいるように見えた。ボクシングをしているお兄さん。それに対しルッスーリアはムエタイの構えをとって、はじまりの合図を待っていた。
「やはりヴァリアーも晴れの守護者は格闘家か」
リボーンくんが確信付くように言う。"ファミリーを襲う逆境を、自らの肉体で砕き、明るく照らす日輪となる"それが晴れの守護者の使命だ、と続けて。
それぞれに使命なんてあるんだ、と彼の言葉をぼんやりと聞きながらリングの方へ視線を向ける。
いよいよバトルが始まるー…
「バトル開始!!」
チェルベッロの合図と共に、戦いの幕が上がった。
「?!?!」
瞬間、辺りがバッと明るく照らされ視界が遮られる。眩しくて思わず目を瞑るとリボーンくんから「これ掛けとけ」とサングラスを渡された。
チェルベッロの話によると、この特設リングは晴れの守護者にふさわしいように設計された日輪のコロシアムになるらしい。疑似太陽によって照らされるリングは眩し過ぎて、視界を守ってくれるものがないと何も見えない。
待って、京子ちゃんのお兄さんサングラス…!!
ヴァリアー側の人は元々サングラスを掛けていた気がする。思い立って改めて二人を確認すると、ルッスーリアはサングラスをしていて、お兄さんはサングラスが無いから目を瞑ってリングに立っていた。
不公平だ…!!
そう思うのはツーくんも同じで、すぐにチェルベッロへ抗議するも戦闘が始まればこちら側の介入はできないと切り捨てられてしまう。もし強行して介入すれば失格扱いでリングも没収されてしまうらしい。
「「そんな…」」
ツーくんと言葉が重なる。
見えないお兄さんと、見えるヴァリアーでは分が悪すぎる。現に的が当たらないお兄さんに対してルッスーリアは的確にお兄さんを攻撃する。
「ッ!!」
見えない攻撃に踏ん張りの利かないお兄さんの体はロープへと向かい、悲痛な叫びを上げて倒れ込む。
目にしている光景が信じられなくて、胸がとても痛い。キリキリなんてものじゃない。ぎゅうって締め付けられるような苦しい痛み。ルッスーリアの物騒な比喩の言葉にさえ、軽く絶望を覚える。
「ふざけるな!」
しかし、お兄さんはしっかりと立ち上がりルッスーリアへと向かい、駆け込んでパンチを繰り出す。どっ!と見事に当たる一撃。
「当たった!」
そう喜んだのも束の間。
「!!!!!!」
お兄さんの繰り出す左腕が今度はルッスーリアの膝によって大きなダメージとなり、反動で下がった体は熱くロープにて熱せられその場へと倒れ込んでしまった。
衝撃だ…衝撃、過ぎる…。
目の前で繰り広げられてる戦いがあまりにも壮絶過ぎて、この世界へ足を踏み入れようとしている自分自身にー…場違い過ぎる感覚を覚えて、一気に血の気が引いた。
・
・
気付けば晴れの守護者の戦いは決着していた。
私の気付かないうちにコロネロくんが来ていたり、京子ちゃんが来ていたり。眩しかった照明も砕け消えていて、ハッとした時にはヴァリアー側の人・ルッスーリアが膝を砕かれ「う…うそよぉ!」と声を上げていた。
「待って!まだお兄ちゃんが…!」
「もう終わりだ。オレはねむいぜ、コラ」
京子ちゃんを引き居なくなるコロネロくんを横目に、ようやく戻った自身の意識をリングへと向ける。息があっているお兄さんの体は凄くボロボロだ。
「緊張感のあるいい試合だったぞ。さぁリングを渡してくれ」
終わった戦い。しかし、ルッスーリアはなぜかそれを酷く拒んでまだ終わってない!とお兄さんに再戦を申し込んだ。すごく必死そうなその様子にどうしたんだろう、と疑問をもつ。
その瞬間。
どんっと言う鈍い音と共にルッスーリアの背中に何かが被弾する。ゆっくりとルッスーリアが倒れる先、ヴァリアー側の機械のような者の指からモクモクと湯気が立ち込めていた。
「え」
目を疑う。
「やる時はやる。さすがボス補佐だね、ゴーラ・モスカ」
リボーンくんと同じ赤ちゃんみたいな子がその機械みたいな者を褒める。その様子からして、ルッスーリアを倒したのはあのゴーラ・モスかという者だと理解した。
「あいつ…味方を!」
「どーなってやがる…」
「なんで」
「弱者は消す。これがヴァリアーが常に最強の部隊である所以の一つだ」
立ち込める疑問の数々、それを淡々とした態度でリボーンくんは話した。
「弱者は…消す…?」
隣でツーくんが呟いた。
今日一日だけで受ける衝撃があまりにも多過ぎるー…「しっかりしろ!」とルッスーリアに言うお兄さんに対して、チェルベッロは極めて冷静にルッスーリアの再起不能を確認して勝敗を言い渡す。
そして今日から明日の対戦も告げられるようになるらしく。
明日は、雷の守護者の対決が決定した。
そこからの記憶はまたショックか何かでごっそりと抜け落ちてー…気付けば私は家に帰って、風呂に入って、布団へと潜り込んでいた。
ふと、思い出すのはビアンキさんの言葉。
"アナタはこういう世界に足を踏み入れようとしているの。ツナたちと同じ世界に飛び込みたいなら、それ相応の覚悟が必要よ"
その意味が、今回の戦いで何となく分かった。
「ッ」
思い出すのは先の激闘。
私の相手はノーニスって言う人だった気がするー…表情を削ぎ落としたような寡黙な男の子。
彼との戦闘を頭の中で簡単にシュミレーションして。
すぐに、絶望した。
「……うぅッ」
彼自身の強さは分からないけれど、今日のルッスーリアという人と同じぐらいの強さだとしたら、と考えてお腹がギュッと痛くなる。
次いで伴う吐き気が気持ち悪くて早々に眠ってしまおうと目を瞑った。
もう、見たくもない。
私は、私の飛び込もうとしている世界の壮絶さに気付いてしまった。リングを受け取ってしまった手前、もう引き返せないのは薄々と気付いている。
だけど、見てしまった。見えてしまった目の前の壁はあまりにも高過ぎて。
私の心はー…逃げるように背中を向けてしまった。
ー続くー