天星"てんせい"の守護者【リング争奪戦編】
主人公の名前変更
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朝、目が覚め簡単に身支度を済ませて自室の扉を開ける。部屋を出る際にツーくんとばったり会ったが、少し気まずそうな雰囲気を漂わせた彼に私は視線をすぐ逸らせて足早に1階へ降りた。
「あら、ミーちゃんご飯は!?」
「いらない!行ってきます!!」
1階へ降りてもリビングには顔を覗かせず、真っ直ぐにビアンキさんとの修行へ向かった。
場所は並盛神社。寝起きの枕元にビアンキさんからの書置きがあったから、場所はすぐに分かったし迷わずに行くことができる。階段を駆け上がって鳥居をくぐると、そこにはビアンキさんとリボーンくんが既に待っていて私を見るなり「待ってたわ」と小さく笑みを浮かべた。
「よく来たな、光奈」
「うん」
「おまえには昨日言った通り、今日からビアンキとの修行を始めてもらう。ハッキリ言って時間がねぇ。限られた時間の中でおまえには強くなってもらうぞ」
昨晩とはまた違ったピリピリ感が辺りを包んで、肌が痛い。私を見るビアンキさんの目も普段より…すごく、怖い。
「受け取れ」
「?!」
突然、リボーンくんから何かを投げ付けられる。投げ付けられたそれを落とさず受け取ると、手元には見慣れた新体操のクラブが握られていた。
「それがおまえの武器だ」
「私の、武器」
「使い方はおまえ次第だ。それじゃあビアンキ、始めてくれ」
「分かったわ。リボーン」
ビアンキさんの肩からリボーンくんが飛び降りた瞬間、一気に周りの空気が変わってビアンキさんが私の元へと駆け込んでくる。
「え」
当然、反応なんてできなくて腹部に重い蹴りを入れられてしまった。
「うぐッ!!」
一瞬にして吹き飛ばされる体。受け止めたのは生い茂る木々の大木で、背中を強打して私はその場にしゃがみ込む。お腹には何も入れずにやって来たから固形物が出てくることは無かったけど、急な衝撃に胃液が逆流して地面を汚した。
ゴホッ、ゴホッ…と激しく咳き込む。そんな私を見下ろしビアンキさんが冷たく告げる。
「立ちなさい、光奈」
「ッ」
「修行はこれからなのよ」
ゆっくりと顔を上げビアンキさんを見返す。冷酷非道な瞳はいつもの"優しいお姉さん"の雰囲気なんて全くなく、いくつもの修羅場をくぐり抜けた…"殺し屋"のような怖さを感じさせた。
痛むお腹を押えフラフラと立ち上がる。上がる息をそのままに、クラブを握り締めるとビアンキさんは再び動き出した。
繰り出されるであろうパンチから身を守るため、予測される方向に腕を構えるも瞬間的に彼女は起動を変えて、空いた反対側の腹部へと再び蹴りを入れる。
「い゛ッ!!」
ようやく立ったと言うのにすぐにしゃがみ込んでしまう。思っていた以上に容赦ないビアンキさんの猛攻に思わず涙がじわっと溜まり始めた。
「泣いても仕方ないわよ」
頭上で声が降って視線だけを上げる。
「ツナたちはもっと過酷な修行をしてきてるの。こんな修行、比にもならないくらい」
「ぇ」
「アナタはこういう世界に足を踏み入れようとしているの。ツナたちと同じ世界に飛び込みたいなら、それ相応の覚悟が必要よ」
いつになく真剣な表情、真剣な声色で告げられる。
真っ直ぐに見つめられる彼女の瞳に、試されてる気がした。
私はその瞳から視線を外すことなくゆっくりと立ち上がり、もう一度お願いします。と心の中で呟いてクラブを構えた。
・
・
ビアンキさんとの修行初日を終え、クタクタの体でシャワーを浴び身支度をして初戦までの時間を潰す。私の姿を見てママはすごく驚いて気絶しそうになってたけど、派手に転んだんだって話をしたらなんとか信じてもらうことができた。
家に帰ってからは昨日のこと、今日のことが頭をグルグルぐるぐる駆け巡って少し混乱しそう。だけど、総じて言えるのはー…"ようやくツーくんたちの力になれる"だった。
ずっとずっと気掛かりだった。並盛中学生襲撃事件が起こったあの日ー…ボロボロになって帰ってきたツーくんやビアンキさん、毎朝ツーくんを迎えに来てはしばらくどこか疲れてそうな様子を見せていた獄寺さん。知らないところで傷を作って腕にしばらく包帯を巻いていた山本先輩。
何を聞いてもはぐらかされて、いつも一緒だった輪の中から突然追い出されたような疎外感を覚えた。
心配したくてもさせてくれない。何があったのかも教えてくれない。それは私が"幼かったから"ってずっと思ってた。
だけど、あの長髪の人が来たあの日ー…同じ中学生になって、みんなと居られる時間も長くなって、ようやく大人になった!って思ってたのに。あの日、獄寺さんや山本先輩は私を突き放した。また、あの日々が繰り返されちゃうかもしれないって恐怖したんだ。
あんな思いは二度としたくない。
だから今回、天星の指輪を私は受け取った。
昨日も言ったがこれは自分が望んで選んだ道。
昨日今日でへこたれる訳にはいかない。
「ここで折れたらダメだよ、私」
そう自分に言い聞かせて約束の時間までを自室で過ごす。
*
「おまえも守護者の一人なんだから見に行けよ」と修行の帰りにリボーンくんに言われ、迫る時刻を確認し、そろそろかな、と出掛ける準備を始める。いつ私の番が来てもいいようにリングとクラブを最終確認して、手持ち鞄の中へと詰め込んだ。
コンコンコンー…
突然、自室の扉がノックされる。ママかな?と振り返り「はーい」と極めて明るく返事を返す。返事を返してすぐに入って来たのはママではなく、パパでもなくて。
「ツー、くん」
思い詰めたような表情を浮かべた兄だった。
「ど、どうしたの」
今朝方ぶりのツーくん。しかし、こうして面と向かって会話をするのは約1週間振りになると思う。
変に緊張してしまって溢れ出す唾液を一度飲み込んだ。
部屋に入ってきてしばらく俯いていたツーくん。何も言わないのならもう行ってしまおうか、と鞄に手を掛けた瞬間「ミツ」と拳を握り締めた彼が意を決したように顔を上げ、私の名を呼んだ。
「その指輪、オレに渡して」
ゆっくりと目が見開いていく。
言われた言葉の意味を、理解し兼ねた。
「え、なに」
「ミツの持ってる指輪。オレに渡して」
すごく真剣な表情で真っ直ぐに私を見つめ彼は言う。
渡してって、どういうこと…?
「その指輪。今日、あの人たちに返すから」
「なんで」
なんで急にそんなこと言うの。
だって私は。
「ミツは関係ないんだよ」
「ッ」
関係、ない…?関係ないってどういうこと。
だって私は選ばれたって。
「ミツがこんな事に巻き込まれる必要なんて無いんだよ!ボンゴレだマフィアだなんて、元々オレは反対なんだ!こんな戦いに参加する必要なんて「巻き込まれる必要ないって、なんで私だけに言うの?」
「ッ!」
彼の言葉を遮るように言い放つ。グツグツと胸の中が煮え滾るような怒り、悲しみが言葉となって私の口から溢れ出た。
「っ、ミツは」
「女の子だから?最近まで中学生じゃなかったから?!」
「そうじゃなくて」
「じゃあなに?!獄寺さんや山本先輩は良くて!!なんで私だけ参加しちゃダメなの?!」
「オレはミツを危険な目に!」
「危険な目にってなに!?今日、ビアンキさんと初めて修行したけど、ツーくんたちはあれ以上のことをしてるんでしょ?!」
「ッ」
「関係ないって突き放さないで!!私だって、みんなの力になりたい…!!選ばれたんだよ?!天星の守護者に!!私、選ばれたの!!」
「なぁミツ!!」
「毎日ツーくんがボロボロになって帰って来てるの知ってる!!何してるかなんてもう分かってる!!ママや京子ちゃんたちは騙せても、私は騙されないッ!!」
「聞けって!!」
「ツーくんたちが頑張って、私だけが頑張らないなんてイヤ!!」
声を張り上げ訴えた。はぁ…はぁ…と息が上がる。
私の言葉を受けてツーくんは何か言いたそうにグッと唇を噛み締め、私を見つめていた。
「ミツっ」
「私、行くから」
「ま、待てってミツ!!」
彼の制止も聞かず私は鞄を持って並盛中学へと足を向けた。後ろを追うツーくんとは一言も言葉を交わすことなく、なんとも言えない時間だけが過ぎていく。
そして、私たちは目的地へと辿り着いた。
-続く-
「あら、ミーちゃんご飯は!?」
「いらない!行ってきます!!」
1階へ降りてもリビングには顔を覗かせず、真っ直ぐにビアンキさんとの修行へ向かった。
場所は並盛神社。寝起きの枕元にビアンキさんからの書置きがあったから、場所はすぐに分かったし迷わずに行くことができる。階段を駆け上がって鳥居をくぐると、そこにはビアンキさんとリボーンくんが既に待っていて私を見るなり「待ってたわ」と小さく笑みを浮かべた。
「よく来たな、光奈」
「うん」
「おまえには昨日言った通り、今日からビアンキとの修行を始めてもらう。ハッキリ言って時間がねぇ。限られた時間の中でおまえには強くなってもらうぞ」
昨晩とはまた違ったピリピリ感が辺りを包んで、肌が痛い。私を見るビアンキさんの目も普段より…すごく、怖い。
「受け取れ」
「?!」
突然、リボーンくんから何かを投げ付けられる。投げ付けられたそれを落とさず受け取ると、手元には見慣れた新体操のクラブが握られていた。
「それがおまえの武器だ」
「私の、武器」
「使い方はおまえ次第だ。それじゃあビアンキ、始めてくれ」
「分かったわ。リボーン」
ビアンキさんの肩からリボーンくんが飛び降りた瞬間、一気に周りの空気が変わってビアンキさんが私の元へと駆け込んでくる。
「え」
当然、反応なんてできなくて腹部に重い蹴りを入れられてしまった。
「うぐッ!!」
一瞬にして吹き飛ばされる体。受け止めたのは生い茂る木々の大木で、背中を強打して私はその場にしゃがみ込む。お腹には何も入れずにやって来たから固形物が出てくることは無かったけど、急な衝撃に胃液が逆流して地面を汚した。
ゴホッ、ゴホッ…と激しく咳き込む。そんな私を見下ろしビアンキさんが冷たく告げる。
「立ちなさい、光奈」
「ッ」
「修行はこれからなのよ」
ゆっくりと顔を上げビアンキさんを見返す。冷酷非道な瞳はいつもの"優しいお姉さん"の雰囲気なんて全くなく、いくつもの修羅場をくぐり抜けた…"殺し屋"のような怖さを感じさせた。
痛むお腹を押えフラフラと立ち上がる。上がる息をそのままに、クラブを握り締めるとビアンキさんは再び動き出した。
繰り出されるであろうパンチから身を守るため、予測される方向に腕を構えるも瞬間的に彼女は起動を変えて、空いた反対側の腹部へと再び蹴りを入れる。
「い゛ッ!!」
ようやく立ったと言うのにすぐにしゃがみ込んでしまう。思っていた以上に容赦ないビアンキさんの猛攻に思わず涙がじわっと溜まり始めた。
「泣いても仕方ないわよ」
頭上で声が降って視線だけを上げる。
「ツナたちはもっと過酷な修行をしてきてるの。こんな修行、比にもならないくらい」
「ぇ」
「アナタはこういう世界に足を踏み入れようとしているの。ツナたちと同じ世界に飛び込みたいなら、それ相応の覚悟が必要よ」
いつになく真剣な表情、真剣な声色で告げられる。
真っ直ぐに見つめられる彼女の瞳に、試されてる気がした。
私はその瞳から視線を外すことなくゆっくりと立ち上がり、もう一度お願いします。と心の中で呟いてクラブを構えた。
・
・
ビアンキさんとの修行初日を終え、クタクタの体でシャワーを浴び身支度をして初戦までの時間を潰す。私の姿を見てママはすごく驚いて気絶しそうになってたけど、派手に転んだんだって話をしたらなんとか信じてもらうことができた。
家に帰ってからは昨日のこと、今日のことが頭をグルグルぐるぐる駆け巡って少し混乱しそう。だけど、総じて言えるのはー…"ようやくツーくんたちの力になれる"だった。
ずっとずっと気掛かりだった。並盛中学生襲撃事件が起こったあの日ー…ボロボロになって帰ってきたツーくんやビアンキさん、毎朝ツーくんを迎えに来てはしばらくどこか疲れてそうな様子を見せていた獄寺さん。知らないところで傷を作って腕にしばらく包帯を巻いていた山本先輩。
何を聞いてもはぐらかされて、いつも一緒だった輪の中から突然追い出されたような疎外感を覚えた。
心配したくてもさせてくれない。何があったのかも教えてくれない。それは私が"幼かったから"ってずっと思ってた。
だけど、あの長髪の人が来たあの日ー…同じ中学生になって、みんなと居られる時間も長くなって、ようやく大人になった!って思ってたのに。あの日、獄寺さんや山本先輩は私を突き放した。また、あの日々が繰り返されちゃうかもしれないって恐怖したんだ。
あんな思いは二度としたくない。
だから今回、天星の指輪を私は受け取った。
昨日も言ったがこれは自分が望んで選んだ道。
昨日今日でへこたれる訳にはいかない。
「ここで折れたらダメだよ、私」
そう自分に言い聞かせて約束の時間までを自室で過ごす。
*
「おまえも守護者の一人なんだから見に行けよ」と修行の帰りにリボーンくんに言われ、迫る時刻を確認し、そろそろかな、と出掛ける準備を始める。いつ私の番が来てもいいようにリングとクラブを最終確認して、手持ち鞄の中へと詰め込んだ。
コンコンコンー…
突然、自室の扉がノックされる。ママかな?と振り返り「はーい」と極めて明るく返事を返す。返事を返してすぐに入って来たのはママではなく、パパでもなくて。
「ツー、くん」
思い詰めたような表情を浮かべた兄だった。
「ど、どうしたの」
今朝方ぶりのツーくん。しかし、こうして面と向かって会話をするのは約1週間振りになると思う。
変に緊張してしまって溢れ出す唾液を一度飲み込んだ。
部屋に入ってきてしばらく俯いていたツーくん。何も言わないのならもう行ってしまおうか、と鞄に手を掛けた瞬間「ミツ」と拳を握り締めた彼が意を決したように顔を上げ、私の名を呼んだ。
「その指輪、オレに渡して」
ゆっくりと目が見開いていく。
言われた言葉の意味を、理解し兼ねた。
「え、なに」
「ミツの持ってる指輪。オレに渡して」
すごく真剣な表情で真っ直ぐに私を見つめ彼は言う。
渡してって、どういうこと…?
「その指輪。今日、あの人たちに返すから」
「なんで」
なんで急にそんなこと言うの。
だって私は。
「ミツは関係ないんだよ」
「ッ」
関係、ない…?関係ないってどういうこと。
だって私は選ばれたって。
「ミツがこんな事に巻き込まれる必要なんて無いんだよ!ボンゴレだマフィアだなんて、元々オレは反対なんだ!こんな戦いに参加する必要なんて「巻き込まれる必要ないって、なんで私だけに言うの?」
「ッ!」
彼の言葉を遮るように言い放つ。グツグツと胸の中が煮え滾るような怒り、悲しみが言葉となって私の口から溢れ出た。
「っ、ミツは」
「女の子だから?最近まで中学生じゃなかったから?!」
「そうじゃなくて」
「じゃあなに?!獄寺さんや山本先輩は良くて!!なんで私だけ参加しちゃダメなの?!」
「オレはミツを危険な目に!」
「危険な目にってなに!?今日、ビアンキさんと初めて修行したけど、ツーくんたちはあれ以上のことをしてるんでしょ?!」
「ッ」
「関係ないって突き放さないで!!私だって、みんなの力になりたい…!!選ばれたんだよ?!天星の守護者に!!私、選ばれたの!!」
「なぁミツ!!」
「毎日ツーくんがボロボロになって帰って来てるの知ってる!!何してるかなんてもう分かってる!!ママや京子ちゃんたちは騙せても、私は騙されないッ!!」
「聞けって!!」
「ツーくんたちが頑張って、私だけが頑張らないなんてイヤ!!」
声を張り上げ訴えた。はぁ…はぁ…と息が上がる。
私の言葉を受けてツーくんは何か言いたそうにグッと唇を噛み締め、私を見つめていた。
「ミツっ」
「私、行くから」
「ま、待てってミツ!!」
彼の制止も聞かず私は鞄を持って並盛中学へと足を向けた。後ろを追うツーくんとは一言も言葉を交わすことなく、なんとも言えない時間だけが過ぎていく。
そして、私たちは目的地へと辿り着いた。
-続く-