天星"てんせい"の守護者【リング争奪戦編】
主人公の名前変更
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朝、目が覚めると向かいであるツーくんの部屋がやけに騒がしい。「10日間」「ヴァリアー」といったよく分からない単語が飛び交っているな、とぼんやり思いながら重たい体をゆっくり起こした。
学校へ行く支度を始めようとベッドを降りれば、バタバタと忙しなくツーくんが駆け出していくのを扉越しに感じる。朝から元気だな、って思いながら私も支度を済ませて一階へ降りる。と同時にパパが玄関から入ってきて私を見るなりニコッと嬉しそうに笑顔を浮かべた。
「お、起きたかミツ」
「おはようパパ。朝から何してたの?」
「んー?障子の張替え」
「キレイになったぞ??」と肩を組まれながらリビングへと足を向け、ママを見つけるなり「奈々ぁ♡」と上機嫌にママの元へ行ってしまった。
「あらミーちゃん、おはよう!昨日は大丈夫だった?」
「え?あ、うん。大丈夫…ごめんね、ご飯」
「いいのよ、全然。今日はお腹空いてる?」
「うん」
「奈々の飯は上手いからな!」
「もーアナタったら!!」
朝からとても仲睦まじい光景を眩しいなんて思いながら、そんな二人が少し羨ましく思う。テーブルに出された朝食を「いただきます」と平らげ、私は早々に学校へと向かった。
*
朝からツーくんはバタバタと忙しなく出て行って、獄寺さんや山本先輩の迎えもなく、初めて一人での登校になった。昨日の出来事を忘れたわけではないし、まだ胸の奥でモヤモヤと引っ掛かて、上手く言い表せない複雑とした気持ちが残っている。
また、あの日みたいになるのかな。
わけも分からず傷を作って帰ってきた彼らを見ていただけのあの日。何があったのかも知らされなくて「何もない」「大丈夫」の言葉だけで済まされた、済まされてしまったー…あの日。
当時は小学生だったから、と自分に言い聞かせてその言葉たちを呑み込んできた。
けれど、今は一つ大人になって、私も中学生になった。ツーくんや山本先輩たちと同じ輪の中に長い時間居られることができるようになったんだよ?
なのに、それでも。
私はまだ"関係ない人"なのかな。
「沢田光奈様でしょうか」
「?!」
俯いて歩いていた私の前に突然現れた二つの影。顔を上げれば、仮面らしきゴーグルをつけた赤褐色の怪しい女性二人が私の前に立っていた。
「だ、誰」
「沢田光奈様。貴女様でお間違えありませんか?」
「え、私…?」
辺りを見回し、振り返ってもこの場所には私以外に人は居ない。真っ直ぐに個人情報である名前を言い当てている辺りが少し恐ろしくて、彼女たちに否定する勇気もなく「…はい」と答えてしまった。
「突然の訪問。誠に申し訳ございません」
「この度は沢田光奈様にある物をお渡しするよう命じられ、我々は光奈様の元へとやって参りました」
「お渡しする、物?」
ドクン、と鼓動が脈を打つ。
「コチラです」と一人の女性から差し出されたのは、小さなリングピローに鎮座しているー…半分に欠けたような指輪。
「なんですか、コレ」
「コチラは天星(てんせい)のボンゴレリング」
「天星の、ボンゴレリング…?」
「貴女様は選ばれたのです」
「選ばれたって、何に?」
「次期ボンゴレの天星の守護者に、です」
ボンゴレリングだ、守護者だ、となんだかよく分からない単語が飛び交う。何言ってるの?と言わんばかりに赤褐色の二人を見つめると「無理もないでしょう」と彼女らは淡々と続けた。
「天星の守護者は幻の守護者」
「初代以降の前例は全くありません」
「このリングを受け取るか受け取らないかは光奈様次第」
それなら、受け取らないって言う選択も。
「しかし、受け取りを拒否すると言うのであれば必然的にこちらのリングは"ヴァリアー側"の物となります」
「ヴァリアー」
それは朝、慌ただしい中でツーくんが発していた単語と全く同じ響きのものー…そこで瞬時に理解する。この指輪が、ツーくんたちと"関係があるもの"なんだと言うという事を。
「如何なさいますか」
相変わらず淡々と聞いてくる女性に、私はうつむき加減に視線だけを寄越して。
「受け取ります」
と答える。声は微かに震えていた。
・
・
結局、今日はツーくんも獄寺さんも山本先輩も学校に来ることはなく一日が終わった。ツーくんの姿がないことに京子ちゃんが「今日ツナくんたちお休み?」って聞いてきたけど、私も事情がよく分からなくて「あ、うん」と曖昧な返答しかできなかった。
朝と同じ、一人で歩く帰り道。
ふと、スカートのポケットに忍ばせていた今朝の指輪を取り出す。
"貴女様は選ばれたのです"
確かに女性はそう言った。
天星のボンゴレリングだとか、天星の守護者だとか。
正直、今ひとつなにもピンと来ていない。
"ボンゴレ"という単語はよくリボーンくんが口にしているから知っている。けれど、情報としてはそれだけ。指輪を受け取ったきっかけである"ヴァリアー"って言葉も、今朝ツーくんが騒ぎながら言っていた言葉のひとつ、というだけで。
受け取ったからと言ってどうしたらいいのかは、私には全く分からない。
そうこうしているうちに目印の赤い屋根が見えてきた。明かりはついているから誰かしら居るのは間違いない。
「ただいま」
玄関を開けて入ると、そこには今から出掛けようとしているパパの姿が。私を見るなりパパはニカッと笑って「おかえり」と返してくれた。
「これからどこか行くの?」
「ちょっと散歩にな」
「散歩?」
「おー、ミツはママといい子にして待ってるんだぞ?」
わしゃわしゃとされるがままに頭を撫でられる。へへへっ、と嬉しそうに笑うパパの声がすると思ったら、急に彼の手が動きを止めた。
「ミツ」
名前を呼ばれる。顔を上げるとどこか真剣な表情をしているパパ。彼が見つめる先にあるのは、今朝怪しい女性たちもらった"天星のボンゴレリング"。
「それ、どうしたんだ?」
「ぇ」
別に何も悪いことをしてないはずなのに、それを指摘されたことが恥ずかしくて、思わず指輪を後ろ手に追いやった。
「変わった形の指輪だな!誰かから貰ったのか?」
「あ、ぇっと」
怒られる、と思って身構えたけど予想した反応とは真逆で嬉々としてパパは私に視線を合わせて続ける。「もしかして男かぁ〜?」なんて言われてカッと赤くなる顔を勢い良く逸らし「違う!」とだけ告げる。
「なんだそっか〜年頃の女の子が色気ずいてきたからてっきりパパそうなのかなぁって思っちまった」
「そ、そんな相手居ないよ」
「ま、ミツはパパが大好きだもんなぁ!」
「い、いだい!!パパ苦しい!!」
ぎゅうっと(思いのほか強く)抱き締められ、大きく抗議する。それが今度は悲しかったのかしょんぼりしたパパが渋々離れて「じゃ、行ってくるな〜」と外へ向かった。
「あ、ミツ」
まだ何かあるの?と振り返る。
「何かあったらすぐ誰かに言うんだぞ。絶対に溜め込むなよ」
やけに落ち着いた声色で、パパは真っ直ぐに私の目を見て言った。それだけを残し今度こそパパは「行ってくる!」と片手を上げて外の世界へと歩いて行った。
-続く-
学校へ行く支度を始めようとベッドを降りれば、バタバタと忙しなくツーくんが駆け出していくのを扉越しに感じる。朝から元気だな、って思いながら私も支度を済ませて一階へ降りる。と同時にパパが玄関から入ってきて私を見るなりニコッと嬉しそうに笑顔を浮かべた。
「お、起きたかミツ」
「おはようパパ。朝から何してたの?」
「んー?障子の張替え」
「キレイになったぞ??」と肩を組まれながらリビングへと足を向け、ママを見つけるなり「奈々ぁ♡」と上機嫌にママの元へ行ってしまった。
「あらミーちゃん、おはよう!昨日は大丈夫だった?」
「え?あ、うん。大丈夫…ごめんね、ご飯」
「いいのよ、全然。今日はお腹空いてる?」
「うん」
「奈々の飯は上手いからな!」
「もーアナタったら!!」
朝からとても仲睦まじい光景を眩しいなんて思いながら、そんな二人が少し羨ましく思う。テーブルに出された朝食を「いただきます」と平らげ、私は早々に学校へと向かった。
*
朝からツーくんはバタバタと忙しなく出て行って、獄寺さんや山本先輩の迎えもなく、初めて一人での登校になった。昨日の出来事を忘れたわけではないし、まだ胸の奥でモヤモヤと引っ掛かて、上手く言い表せない複雑とした気持ちが残っている。
また、あの日みたいになるのかな。
わけも分からず傷を作って帰ってきた彼らを見ていただけのあの日。何があったのかも知らされなくて「何もない」「大丈夫」の言葉だけで済まされた、済まされてしまったー…あの日。
当時は小学生だったから、と自分に言い聞かせてその言葉たちを呑み込んできた。
けれど、今は一つ大人になって、私も中学生になった。ツーくんや山本先輩たちと同じ輪の中に長い時間居られることができるようになったんだよ?
なのに、それでも。
私はまだ"関係ない人"なのかな。
「沢田光奈様でしょうか」
「?!」
俯いて歩いていた私の前に突然現れた二つの影。顔を上げれば、仮面らしきゴーグルをつけた赤褐色の怪しい女性二人が私の前に立っていた。
「だ、誰」
「沢田光奈様。貴女様でお間違えありませんか?」
「え、私…?」
辺りを見回し、振り返ってもこの場所には私以外に人は居ない。真っ直ぐに個人情報である名前を言い当てている辺りが少し恐ろしくて、彼女たちに否定する勇気もなく「…はい」と答えてしまった。
「突然の訪問。誠に申し訳ございません」
「この度は沢田光奈様にある物をお渡しするよう命じられ、我々は光奈様の元へとやって参りました」
「お渡しする、物?」
ドクン、と鼓動が脈を打つ。
「コチラです」と一人の女性から差し出されたのは、小さなリングピローに鎮座しているー…半分に欠けたような指輪。
「なんですか、コレ」
「コチラは天星(てんせい)のボンゴレリング」
「天星の、ボンゴレリング…?」
「貴女様は選ばれたのです」
「選ばれたって、何に?」
「次期ボンゴレの天星の守護者に、です」
ボンゴレリングだ、守護者だ、となんだかよく分からない単語が飛び交う。何言ってるの?と言わんばかりに赤褐色の二人を見つめると「無理もないでしょう」と彼女らは淡々と続けた。
「天星の守護者は幻の守護者」
「初代以降の前例は全くありません」
「このリングを受け取るか受け取らないかは光奈様次第」
それなら、受け取らないって言う選択も。
「しかし、受け取りを拒否すると言うのであれば必然的にこちらのリングは"ヴァリアー側"の物となります」
「ヴァリアー」
それは朝、慌ただしい中でツーくんが発していた単語と全く同じ響きのものー…そこで瞬時に理解する。この指輪が、ツーくんたちと"関係があるもの"なんだと言うという事を。
「如何なさいますか」
相変わらず淡々と聞いてくる女性に、私はうつむき加減に視線だけを寄越して。
「受け取ります」
と答える。声は微かに震えていた。
・
・
結局、今日はツーくんも獄寺さんも山本先輩も学校に来ることはなく一日が終わった。ツーくんの姿がないことに京子ちゃんが「今日ツナくんたちお休み?」って聞いてきたけど、私も事情がよく分からなくて「あ、うん」と曖昧な返答しかできなかった。
朝と同じ、一人で歩く帰り道。
ふと、スカートのポケットに忍ばせていた今朝の指輪を取り出す。
"貴女様は選ばれたのです"
確かに女性はそう言った。
天星のボンゴレリングだとか、天星の守護者だとか。
正直、今ひとつなにもピンと来ていない。
"ボンゴレ"という単語はよくリボーンくんが口にしているから知っている。けれど、情報としてはそれだけ。指輪を受け取ったきっかけである"ヴァリアー"って言葉も、今朝ツーくんが騒ぎながら言っていた言葉のひとつ、というだけで。
受け取ったからと言ってどうしたらいいのかは、私には全く分からない。
そうこうしているうちに目印の赤い屋根が見えてきた。明かりはついているから誰かしら居るのは間違いない。
「ただいま」
玄関を開けて入ると、そこには今から出掛けようとしているパパの姿が。私を見るなりパパはニカッと笑って「おかえり」と返してくれた。
「これからどこか行くの?」
「ちょっと散歩にな」
「散歩?」
「おー、ミツはママといい子にして待ってるんだぞ?」
わしゃわしゃとされるがままに頭を撫でられる。へへへっ、と嬉しそうに笑うパパの声がすると思ったら、急に彼の手が動きを止めた。
「ミツ」
名前を呼ばれる。顔を上げるとどこか真剣な表情をしているパパ。彼が見つめる先にあるのは、今朝怪しい女性たちもらった"天星のボンゴレリング"。
「それ、どうしたんだ?」
「ぇ」
別に何も悪いことをしてないはずなのに、それを指摘されたことが恥ずかしくて、思わず指輪を後ろ手に追いやった。
「変わった形の指輪だな!誰かから貰ったのか?」
「あ、ぇっと」
怒られる、と思って身構えたけど予想した反応とは真逆で嬉々としてパパは私に視線を合わせて続ける。「もしかして男かぁ〜?」なんて言われてカッと赤くなる顔を勢い良く逸らし「違う!」とだけ告げる。
「なんだそっか〜年頃の女の子が色気ずいてきたからてっきりパパそうなのかなぁって思っちまった」
「そ、そんな相手居ないよ」
「ま、ミツはパパが大好きだもんなぁ!」
「い、いだい!!パパ苦しい!!」
ぎゅうっと(思いのほか強く)抱き締められ、大きく抗議する。それが今度は悲しかったのかしょんぼりしたパパが渋々離れて「じゃ、行ってくるな〜」と外へ向かった。
「あ、ミツ」
まだ何かあるの?と振り返る。
「何かあったらすぐ誰かに言うんだぞ。絶対に溜め込むなよ」
やけに落ち着いた声色で、パパは真っ直ぐに私の目を見て言った。それだけを残し今度こそパパは「行ってくる!」と片手を上げて外の世界へと歩いて行った。
-続く-