天星"てんせい"の守護者【リング争奪戦編】
主人公の名前変更
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「う゛お゛ぉい!!邪魔するカスはたたっ斬るぞぉ!!」
長髪の男の人が吠える。あの人の目を見れば只者じゃないって事ぐらいすぐに分かって、早く逃げないと!と心が焦る。肩を叩かれて振り返るとリボーンくんが「女子供は避難するぞ」と京子ちゃんたちを連れて、この場を立ち去ろうとしていた。
「え、でもリボーンくんッ」
他のみんなは?!と聞く前に彼は「アイツらならなんとかする」とだけ答えて私に背を向けた。でも、と渋る私に掴まれる腕。顔を上げれば不安そうな京子ちゃんが真っ直ぐに私の目を見て小さく頷いた。
「行こう、光奈ちゃん」
「……ぅんっ」
後ろ髪を引かれる思いでその場を駆け出す。胸元に残るザワザワとした不穏さに顔を顰めながら、腕を引かれるがまま足を動かした。
・
・
「ここまで来れば安心だろ。京子、ハル。ランボたちを連れて先に帰っててくれ」
「リボーンくんはどうするんですか?!」
「オレはツナたちを迎えに行く」
「迎えに行くって…」
「心配すんな。ちょっとしたお遊びだからな」
「あの怖そうな人もそうなのですか?」
「あぁ」
何ともないと言わんばかりに返すリボーンくんに、これ以上聞くこともなくなったハルちゃんと京子ちゃんは二人して口を閉じる。走り疲れて眠ってしまったランボくん、イーピンちゃん。疲れているフゥ太くんを見てから二人で目配せ合うと「分かりました」とリボーンくんの言葉を呑んだ。
「気を付けてね」
「気にすんな。オレはヒットマンだからな」
「ふふふっ。また言ってる」
「じゃあ」
行こう、と京子ちゃんに誘われ私も大人しく彼女たちについて歩き出す。しかし胸の奥に残るザワザワ感がとても気になって、思わず足を止めリボーンくんの方を振り返った。
「………」
振り返れば既に居なくなっているリボーンくんの姿。遠のいていく京子ちゃんたちの足音も気にせず、彼が居たであろうその一点を見つめ先程の出来事を思い返す。
嫌な、予感がする。
それこそあの時のー…"並中生襲撃事件"の時のような不穏感。小さなきっかけ一つで、突然ツーくんや山本先輩たちの輪の中から外されたあの日。
とても嫌だった。とても寂しかったあの過去。それが今回、繰り返されるような気がしてならなかった。
ふと京子ちゃんたちの方を振り返る。彼女たちは先程のショックで心身ともに疲れているのかこちらを気にする余裕もあまりないらしく、二人で会話をしながら小さな子供たちを連れて帰って行く。
そんな彼女らに心の中で「ごめんなさい」と謝って、私は来た道を引き返すため駆け出した。
*
引き返してきた先、地面に踞る獄寺さんと山本先輩の姿が目に飛び込んできた。
「獄寺さん?!山本先輩!!」
思わず声を張り上げて二人へ駆け寄る。随分と派手にやられた様子でボロボロな二人。酷い怪我はしてないものの、至急に手当てをする必要がある。
「大丈夫ですか?!なんで、こんな」
「なんで戻ってきたんだよ!!!!」
ボロボロに、と言いかけた瞬間鋭い眼孔を光らせた獄寺さんに怒鳴られてしまう。ひぇッ、と言葉を無くすと続けて彼は。
「アイツらと逃げたんじゃねーのか?!」
と、捲し立てた。そんな獄寺さんの覇気に圧されて全身の力が一気に抜けその場にヘタレ込んだ。思わず助けを求めるように山本先輩へと視線を向ける。
しかし、その選択は間違いだった。
酷く悔しがっているような傷付いたような表情を浮かべた山本先輩は私の視線を受けると、ふいっと静かに目を逸らして。
「早く帰れ」
と、言った。いつもの先輩とは掛け離れた冷た過ぎるその言葉、その声が私の心に酷く傷を作る。
抉られたような心の傷は早々に回復なんてしてくれない。ましてや好きな人にあんな態度をとられてしまってはー…しばらく、立ち直れない。
気付けば獄寺さんと山本先輩は立ち上がり、この場に居なくなっているツーくんを探して行ってしまった。私はその背中を見送るだけで「待って!」と言うことも、名前を呼ぶことさえも、できなかったんだ。
・
・
あの後、しばらく放心状態でフラフラと足取りが定まらないまま家へと戻る。ガチャン…と玄関を開けた先、大きく両手を広げた人物に目を見開いた。
「たっだいまー!!ミツ!!」
「ぱ、パパ?!」
いつの間にか帰ってきてたのであろう彼・沢田家光は私を見るなりぎゅうっと抱き締め「久し振りだなぁ!」と頬を擦り寄せてきた。そんなパパの髭がチクチクと頬に当たって痛い。
「帰ってきたの?」
「おー!いま、帰ったところだ」
「寂しかったかぁ〜?ミツ〜」とさらに抱擁を強めてくるから、嬉しいけどちょっと苦しい。「や、やめて」と少し遠慮して言うとパパは大袈裟に寂しがりながら抱擁を解いてくれた。
「大きくなったなぁミツ。もう中一か」
「うん」
「いい男見つけたかぁ?パパみたいな人と結婚するんだーって昔よく言ってただろ」
「っ」
いい男、と言われた瞬間、山本先輩のことが頭に過って気持ちが一気に沈んでいく。明らかに態度が変わった私を「どうした?」と気にかけてくれるパパだが、それに応えるほどの余裕が今はない。
「ぅぅん…なんでもない」
先程のショックからまだ立ち直れていない私は「部屋行くね」とパパへ告げて、逃げるように自室へと向かう。ベッドに飛び込んで、シーツに包まり今日の出来事を振り返っては目に涙を滲ませた。
その日の夜はママが晩ご飯の時間だと呼びに来ても、食べる気力が起きなくて自室に籠ったまま時間を過ごした。ツーくんがいつ帰ってきたのかも分からない。
「…ミツ?」
「っ!!」
時刻は夜の10時を迎えようとしている。そんな中、ドア越しにツーくんの声が響いた。
「晩ご飯まだ食べてないのか?」
「………」
「なぁ、ミツ。どうしたんだよ」
「………なんでも、ない」
「なんでもない、って」
「なんでもないってば!!」
ツーくんが心配して、声を掛けてくれてるっていうのは痛いほど分かる。分かるけど今はその優しさが私にとって悪い刺激にしかならなかった。
どうせ私はー…蚊帳の外、なんでしょ。
「…母さん、心配してたからな」
それだけ言い残してツーくんも自分の部屋に行ったのか、さらなる言葉はなかった。
心配かけてるのなんて分かってる。分かってるけど、この痛む気持ちをどうすればいいかなんてツーくんたちには分かんないでしょ!と苛立つ自分を抑えられない。
一晩寝たら元通り。そんな都合のいいことがあれば、と考えているうちに私は意識を手放した。
-続く-
長髪の男の人が吠える。あの人の目を見れば只者じゃないって事ぐらいすぐに分かって、早く逃げないと!と心が焦る。肩を叩かれて振り返るとリボーンくんが「女子供は避難するぞ」と京子ちゃんたちを連れて、この場を立ち去ろうとしていた。
「え、でもリボーンくんッ」
他のみんなは?!と聞く前に彼は「アイツらならなんとかする」とだけ答えて私に背を向けた。でも、と渋る私に掴まれる腕。顔を上げれば不安そうな京子ちゃんが真っ直ぐに私の目を見て小さく頷いた。
「行こう、光奈ちゃん」
「……ぅんっ」
後ろ髪を引かれる思いでその場を駆け出す。胸元に残るザワザワとした不穏さに顔を顰めながら、腕を引かれるがまま足を動かした。
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「ここまで来れば安心だろ。京子、ハル。ランボたちを連れて先に帰っててくれ」
「リボーンくんはどうするんですか?!」
「オレはツナたちを迎えに行く」
「迎えに行くって…」
「心配すんな。ちょっとしたお遊びだからな」
「あの怖そうな人もそうなのですか?」
「あぁ」
何ともないと言わんばかりに返すリボーンくんに、これ以上聞くこともなくなったハルちゃんと京子ちゃんは二人して口を閉じる。走り疲れて眠ってしまったランボくん、イーピンちゃん。疲れているフゥ太くんを見てから二人で目配せ合うと「分かりました」とリボーンくんの言葉を呑んだ。
「気を付けてね」
「気にすんな。オレはヒットマンだからな」
「ふふふっ。また言ってる」
「じゃあ」
行こう、と京子ちゃんに誘われ私も大人しく彼女たちについて歩き出す。しかし胸の奥に残るザワザワ感がとても気になって、思わず足を止めリボーンくんの方を振り返った。
「………」
振り返れば既に居なくなっているリボーンくんの姿。遠のいていく京子ちゃんたちの足音も気にせず、彼が居たであろうその一点を見つめ先程の出来事を思い返す。
嫌な、予感がする。
それこそあの時のー…"並中生襲撃事件"の時のような不穏感。小さなきっかけ一つで、突然ツーくんや山本先輩たちの輪の中から外されたあの日。
とても嫌だった。とても寂しかったあの過去。それが今回、繰り返されるような気がしてならなかった。
ふと京子ちゃんたちの方を振り返る。彼女たちは先程のショックで心身ともに疲れているのかこちらを気にする余裕もあまりないらしく、二人で会話をしながら小さな子供たちを連れて帰って行く。
そんな彼女らに心の中で「ごめんなさい」と謝って、私は来た道を引き返すため駆け出した。
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引き返してきた先、地面に踞る獄寺さんと山本先輩の姿が目に飛び込んできた。
「獄寺さん?!山本先輩!!」
思わず声を張り上げて二人へ駆け寄る。随分と派手にやられた様子でボロボロな二人。酷い怪我はしてないものの、至急に手当てをする必要がある。
「大丈夫ですか?!なんで、こんな」
「なんで戻ってきたんだよ!!!!」
ボロボロに、と言いかけた瞬間鋭い眼孔を光らせた獄寺さんに怒鳴られてしまう。ひぇッ、と言葉を無くすと続けて彼は。
「アイツらと逃げたんじゃねーのか?!」
と、捲し立てた。そんな獄寺さんの覇気に圧されて全身の力が一気に抜けその場にヘタレ込んだ。思わず助けを求めるように山本先輩へと視線を向ける。
しかし、その選択は間違いだった。
酷く悔しがっているような傷付いたような表情を浮かべた山本先輩は私の視線を受けると、ふいっと静かに目を逸らして。
「早く帰れ」
と、言った。いつもの先輩とは掛け離れた冷た過ぎるその言葉、その声が私の心に酷く傷を作る。
抉られたような心の傷は早々に回復なんてしてくれない。ましてや好きな人にあんな態度をとられてしまってはー…しばらく、立ち直れない。
気付けば獄寺さんと山本先輩は立ち上がり、この場に居なくなっているツーくんを探して行ってしまった。私はその背中を見送るだけで「待って!」と言うことも、名前を呼ぶことさえも、できなかったんだ。
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あの後、しばらく放心状態でフラフラと足取りが定まらないまま家へと戻る。ガチャン…と玄関を開けた先、大きく両手を広げた人物に目を見開いた。
「たっだいまー!!ミツ!!」
「ぱ、パパ?!」
いつの間にか帰ってきてたのであろう彼・沢田家光は私を見るなりぎゅうっと抱き締め「久し振りだなぁ!」と頬を擦り寄せてきた。そんなパパの髭がチクチクと頬に当たって痛い。
「帰ってきたの?」
「おー!いま、帰ったところだ」
「寂しかったかぁ〜?ミツ〜」とさらに抱擁を強めてくるから、嬉しいけどちょっと苦しい。「や、やめて」と少し遠慮して言うとパパは大袈裟に寂しがりながら抱擁を解いてくれた。
「大きくなったなぁミツ。もう中一か」
「うん」
「いい男見つけたかぁ?パパみたいな人と結婚するんだーって昔よく言ってただろ」
「っ」
いい男、と言われた瞬間、山本先輩のことが頭に過って気持ちが一気に沈んでいく。明らかに態度が変わった私を「どうした?」と気にかけてくれるパパだが、それに応えるほどの余裕が今はない。
「ぅぅん…なんでもない」
先程のショックからまだ立ち直れていない私は「部屋行くね」とパパへ告げて、逃げるように自室へと向かう。ベッドに飛び込んで、シーツに包まり今日の出来事を振り返っては目に涙を滲ませた。
その日の夜はママが晩ご飯の時間だと呼びに来ても、食べる気力が起きなくて自室に籠ったまま時間を過ごした。ツーくんがいつ帰ってきたのかも分からない。
「…ミツ?」
「っ!!」
時刻は夜の10時を迎えようとしている。そんな中、ドア越しにツーくんの声が響いた。
「晩ご飯まだ食べてないのか?」
「………」
「なぁ、ミツ。どうしたんだよ」
「………なんでも、ない」
「なんでもない、って」
「なんでもないってば!!」
ツーくんが心配して、声を掛けてくれてるっていうのは痛いほど分かる。分かるけど今はその優しさが私にとって悪い刺激にしかならなかった。
どうせ私はー…蚊帳の外、なんでしょ。
「…母さん、心配してたからな」
それだけ言い残してツーくんも自分の部屋に行ったのか、さらなる言葉はなかった。
心配かけてるのなんて分かってる。分かってるけど、この痛む気持ちをどうすればいいかなんてツーくんたちには分かんないでしょ!と苛立つ自分を抑えられない。
一晩寝たら元通り。そんな都合のいいことがあれば、と考えているうちに私は意識を手放した。
-続く-