保カフ その他
鳴カフ 『シャッターチャンス』
仕事をしているのかと思いきや、どうやらそうではないらしい。
スマホを見ながら何やらブツブツと言っている。覗き込んでみると、彼の元副官のへんてこな画像がそこにはあった。
「また長谷川さんの加工写真作って遊んでるんすか、隊長」
声をかけるとちらりとこちらを見たが、またすぐにスマホ画面へと向き直る。そして、子どもみたいに口を尖らせて言い訳のような文句を垂れている。
「あいつが悪いんだ。久しぶりに会ったと思ったら、いきなりボク様の頭を叩きやがって……あんな奴はこうして、こうしてやるんだ! よしっ出来たぞ」
そう言ってこちらに見せてきた画像にはハッピーハロウィンという文字が入れられている。そして、可哀想なことに長谷川さんはパンプキンマンへと変身させられていた。
よくこうやって加工写真を作成している彼なのだが、そろそろ俺のも作られる頃合いなのではと密かにわくわくしていたりする。
付き合い始めてしばらく経ったし、彼との距離も幾分か縮まっただろう。何となくだが、あれは仲良い証拠みたいなものに思えるのだ。だったら、きっと俺のもそのうち――
そう期待していたとある日、隊長を訪ねてみると疲れた果てたように机に突っ伏していた。書類も何もかもお構いなしに何かを求めるように伸ばされた手。
このままだと現副官にこっぴどく怒られてしまうかもしれない。しゃあねえなと言いながら、俺は机に散らばった書類をかき集める。すると、書類に挟まっていたであろうものがするりと抜け落ち床へと着地する。何だろうかと拾い上げたところで、隊長が勢いよく起き上がって叫んだ。
「それは駄目だ! 見るな、返せ! それはボク様の大事な――」
制止を振り切り、裏返しになっている写真らしきものを捲って見た。
この慌てようはもしや俺の加工写真なのでは、という淡い期待を込めながら。
「俺のこんな写真作ってどうする……ん? あれ……なんだ、これ」
だが予想に反して、それは至って普通の写真であった。
てっきりへんてこなハロウィン仮装でもした俺の写真だとばかり思っていたのに。
いや、俺の写真ではあったのだ。
ただ、普通に食堂で飯を食ってるだけのもの。特に変な顔してるわけでもない。何の面白みもない日常にありふれた一枚だ。
「なんすか、この写真」
「すまん……つい出来心で……悪いとは思ってる」
はて、何に対しての謝罪なのだろうか。
そう思っていることがそのまま顔に出てしまっていたようだ。彼はさらに言葉を継ぐ。
「よく見ろ、カフカ。その写真のお前はこっち向いてないだろ……だから、その、所謂隠し撮りというやつで……」
ああ、なるほど。
俺に黙って撮ったから、申しわけないとそういうことなのかと合点がいった。
「別に良いですよ、それくらい。減るもんでもねえですし。それより、これを今から加工するんすよね?」
どんな出来になるのだろうか、記念すべき一枚は。
そんな期待の眼差しを向けてみたが、彼には今ひとつぴんとこなかったようで。
「加工……なんでする必要がある? これで充分だろ、寧ろこのままが良い」
かわいくて、気に入ってる
彼は頬を染めながら、そう言った。
参ったな、こりゃ。
どう返せば正解なんだ?
じわじわと嬉しさがこみ上げてきて、じっとしていられない。喜び勇んだ胸がどうしようもなく痛い。
顔、すげえ赤くなってるかもしれない。
「……隠し撮りなんかしないで……一言声をかけてくれれば……あんたのほう見て、笑ったのに」
俺は天井の染みを見つめながら、そう言うので精一杯だった。
「これはちょっと違うんだよなあ」
その後どうなったかというと、彼は俺に一言断りさえ入れればどんな写真でも撮らせてくれると思い込んだようで。
今まさに、鼻息荒く次はこれを頼むと懇願されているところだ。
「次はこの給仕長だ、カフカ!」
「もうはっきり、メイドって言えよ」
仕事をしているのかと思いきや、どうやらそうではないらしい。
スマホを見ながら何やらブツブツと言っている。覗き込んでみると、彼の元副官のへんてこな画像がそこにはあった。
「また長谷川さんの加工写真作って遊んでるんすか、隊長」
声をかけるとちらりとこちらを見たが、またすぐにスマホ画面へと向き直る。そして、子どもみたいに口を尖らせて言い訳のような文句を垂れている。
「あいつが悪いんだ。久しぶりに会ったと思ったら、いきなりボク様の頭を叩きやがって……あんな奴はこうして、こうしてやるんだ! よしっ出来たぞ」
そう言ってこちらに見せてきた画像にはハッピーハロウィンという文字が入れられている。そして、可哀想なことに長谷川さんはパンプキンマンへと変身させられていた。
よくこうやって加工写真を作成している彼なのだが、そろそろ俺のも作られる頃合いなのではと密かにわくわくしていたりする。
付き合い始めてしばらく経ったし、彼との距離も幾分か縮まっただろう。何となくだが、あれは仲良い証拠みたいなものに思えるのだ。だったら、きっと俺のもそのうち――
そう期待していたとある日、隊長を訪ねてみると疲れた果てたように机に突っ伏していた。書類も何もかもお構いなしに何かを求めるように伸ばされた手。
このままだと現副官にこっぴどく怒られてしまうかもしれない。しゃあねえなと言いながら、俺は机に散らばった書類をかき集める。すると、書類に挟まっていたであろうものがするりと抜け落ち床へと着地する。何だろうかと拾い上げたところで、隊長が勢いよく起き上がって叫んだ。
「それは駄目だ! 見るな、返せ! それはボク様の大事な――」
制止を振り切り、裏返しになっている写真らしきものを捲って見た。
この慌てようはもしや俺の加工写真なのでは、という淡い期待を込めながら。
「俺のこんな写真作ってどうする……ん? あれ……なんだ、これ」
だが予想に反して、それは至って普通の写真であった。
てっきりへんてこなハロウィン仮装でもした俺の写真だとばかり思っていたのに。
いや、俺の写真ではあったのだ。
ただ、普通に食堂で飯を食ってるだけのもの。特に変な顔してるわけでもない。何の面白みもない日常にありふれた一枚だ。
「なんすか、この写真」
「すまん……つい出来心で……悪いとは思ってる」
はて、何に対しての謝罪なのだろうか。
そう思っていることがそのまま顔に出てしまっていたようだ。彼はさらに言葉を継ぐ。
「よく見ろ、カフカ。その写真のお前はこっち向いてないだろ……だから、その、所謂隠し撮りというやつで……」
ああ、なるほど。
俺に黙って撮ったから、申しわけないとそういうことなのかと合点がいった。
「別に良いですよ、それくらい。減るもんでもねえですし。それより、これを今から加工するんすよね?」
どんな出来になるのだろうか、記念すべき一枚は。
そんな期待の眼差しを向けてみたが、彼には今ひとつぴんとこなかったようで。
「加工……なんでする必要がある? これで充分だろ、寧ろこのままが良い」
かわいくて、気に入ってる
彼は頬を染めながら、そう言った。
参ったな、こりゃ。
どう返せば正解なんだ?
じわじわと嬉しさがこみ上げてきて、じっとしていられない。喜び勇んだ胸がどうしようもなく痛い。
顔、すげえ赤くなってるかもしれない。
「……隠し撮りなんかしないで……一言声をかけてくれれば……あんたのほう見て、笑ったのに」
俺は天井の染みを見つめながら、そう言うので精一杯だった。
「これはちょっと違うんだよなあ」
その後どうなったかというと、彼は俺に一言断りさえ入れればどんな写真でも撮らせてくれると思い込んだようで。
今まさに、鼻息荒く次はこれを頼むと懇願されているところだ。
「次はこの給仕長だ、カフカ!」
「もうはっきり、メイドって言えよ」
