保カフ その他 

 保カフ 『白昼堂々』

 とある隊員が保科の執務室を目指してやって来ていた。
 提出書類の期限が迫っていたからである。
 辿り着いたものの部屋の扉が何故か半分開いており、その隊員はドアをノックするのも忘れて思わず中の様子を覗き込んだ。すると、保科が机に突っ伏するように寝ていたのである。起こしてしまうのは忍びないが、書類をここで渡さないという選択肢は残念ながら取ることはできない。もう一度言うが、提出期限が迫っているのだ。
 中に入って声をかけようと扉をさらに開くと、突然真っ白いものが目の前で翻った。

 「日比野……小隊長!?」

 扉に隠れて分からなかったが、部屋にはもう一人いたらしい。分析支援部隊小隊長、その人である。いつも白衣を身につけている彼を知ってはいるが、対面するのは初めてであった。
 当然そんなこと予想だにしなかったその隊員は驚き、思わず大きな声をあげてしまう。すると目の前の彼は口元に指をあて、静かにするようにと促す。

 「今、副隊長寝てっから……後にしてくれるか?」

 優しい笑みを浮かべている彼には若い隊員では到底真似できないような大人の色気があった。それを目の当たりにしたその隊員は思わず分かりましたと頷き、退出せざるを得なかったのだ。
 失礼しましたとその場から逃げるように立ち去ったのだが、廊下の真ん中でふと思い当たる。
 せめて、この書類だけでも保科副隊長へ渡しておいてもらおう。そう思い立った隊員は踵を返し、もう一度執務室の前へとやって来た。
 すると、何やら中から話し声が聞こえる。
 副隊長が起きたのかもしれない。良かったこれできちんと書類を手渡せる。そう喜んだのも束の間、目の前でその扉は無情にも閉められてしまったのだ。
 扉が閉まる瞬間、小隊長と目があった気がする。あちらも驚いた表情をしていたので、確かだろう。
 彼はもう一度口元に指をあてる仕草をしていたように思う。先程よりも愉しげに笑いながら。
 閉め切られたこの扉を自ら開ける、そういう気は何故かおきなかった。しがない平隊員が足を踏み入れてはいけないような何かがあったのだ。
 その隊員は諦めて、とぼとぼと歩いて帰っていった――



 「カフカ、僕は寝てへんぞ。何、勝手なこと言うてんねん」

 「そういうことにしておけば良いじゃないですか。やっとふたりきりになれたんだから」

 「何がやっと、や。扉少し開けて、自衛しとる奴が言うことか」

 「だって……まだこんな真っ昼間っすよ」

 「そんなん関係あるか。僕がどんだけ我慢しとると思うてんねん。ええから、その扉閉めて早く僕んとこ来い」

 「これは俺のせいじゃないっすからね。怒られるなら一人で怒られてくださいよ、副隊長」

 「カフカ……頼むから、名前で呼んでくれ」

 「ふふっ……嫌っすよ。だって、まだ勤務時間内だし?」



 これは白昼堂々起こった、執務室での出来事のほんの一部である。
 
 

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