保カフ その他
保カフ、兄カフ(兄弟サンド) 『西の最強様には通用しない』
「よぉ来たなあカフ……なんや、宗四郎。お前まで来たんか」
かわいいかわいい俺の恋人が、わざわざ休みを利用して遊びに来てくれた。久々の逢瀬を大いに堪能したいが、これまたかわいいかわいい俺の弟もついて来ているので難しいだろう。
そんな弟が実家に着くやいなや辺りをきょろきょろとしている。こいつにとってはただの帰省に過ぎず、物珍しいものなどないはずだが。そう考えていたところで、あることに思い当たった。
「ああ……おかんならおらんで。友だちと旅行やて」
「阿呆、それをはよ言えや」
一瞬紅い瞳とかち合って、珍しくこっち見よったなんて喜んでいればすぐさまカフカへと抱きついている。
「あれ? 宗四郎さん、急に甘えた?」
「そりゃあそうやろ。おかんがおったら恥ずかしいもんなぁ、子どもみたいに甘えんのは」
「うっさいわ、ボケ。どっか行け」
どっか行けて、来たのはそっちやろ。
そうは思うが、下手につっこめばカフカ共々帰ってしまうかもしれない。そうなっては困るので、ここは宥めすかしておくのが賢明だろう。
「ほら、そんなところで立っとらんで。疲れたやろ、はよ荷物置いてこい。どうせ、お前も来るやろと思うて、宗四郎の好きなモンブラン買ってあるから一緒に食おうやないか」
そう促せば、子どもがぐずるみたいにカフカの胸元でいやいやしている。お前何しに来たんや。
「宗四郎さん、俺疲れたから座りたいなあ。宗四郎さんのお部屋も見たいなあ」
「……ほな、僕の部屋行こ」
カフカの呟きに宗四郎は顔をあげた。暫し見つめ合った後カフカの手を握り中へずかずかと入っていく。
ようやっと動き出したなと彼らの後をついていけば、なんでお前までついてくんねんと追い払われてしまった。我が弟ながら、扱いの難しいことこの上ない。カフカも大変やろうなと同情の念を抱きながら居間へと落ち着いた。
「これは長そうやな。もう今日は部屋から出てこんとちゃうか」
そんなことを考えながら、茶を飲みゆったり寛いでいると暫くしてこちらへ向かってくる足音が聞こえた。
「ん? なんや、えらい早いな。宗四郎はどないした?」
やって来たのはカフカ一人であった。
彼は俺の向かいの席につき、眠そうに欠伸をしている。
「宗四郎さんなら寝ちゃいました。目の下のクマ、気づきました? ひどかったですよね。全然寝れてないんですよ、ここのところ忙しくて。それなのに、どうしてもついてくるって言うこと聞かなくって」
気づかないわけがない、かわいい弟のあの顔色の悪さを。だが、俺が何を言っても無駄なので、あえて触れなかっただけだ。
「すごいやる気だけはあったみたんいなんすけど、ふかふかベッドには敵わなかったみたいで。今はすやすや寝てます」
「あいつはほんま何しに来たんや。実家来て寝てるて」
俺がそう言うとカフカが楽しそうに笑っている。
ということはだ、今この時は誰にも邪魔されず目の前の恋人を思う存分堪能できるというわけで。貴重な時間をどう過ごそうか思考を巡らせていると、遅くなったけれどお土産ですとカフカが紙袋を渡してくる。
「すまんなあ、そない気使わんでええのに」
手渡された土産袋を開けると、中からはなんともお洒落なパウンドケーキがお目見えする。
「モンブランは宗一郎さんが用意してくれてると思ったので、俺は少し違うものにしました」
「これも美味しそうやなあ」
「あの、これも栗がのってて……モンブラン好きな人に人気だって書いてあったから。その、俺……宗一郎さんに食べさせてあげたいなって思ったから」
頬を染めながら話す恋人のなんとかわいらしいことか。
ありがとうなと甘く囁き口づければ、みるみるうちに目の前の顔が朱に染まる。
「せっかくやし、これ一緒に食べようか」
どうせなら、カフカに食べさせてもらおう。そんなことを考えながら皿を取りに行こうとしていると、子どもみたいに間延びした緩やかな声が聞こえてきた。
「カフカぁ〜どこぉ? どこ行ったあ」
どうやら、小さき怪獣もとい弟のお目覚めである。
「宗四郎さん? 俺はここです、よ……?」
そう呼びかけるカフカの目の前を通り過ぎ、その向かいに座っている俺の膝へちょんと座った。目元をこすりながら、まだはっきりと覚醒できないのかそのまままたすうっと微かに寝息をたてている。
「小さい頃からちっとも変わらんなあ、宗四郎」
形の良い丸っこい頭を撫でてやる。
要は寝ぼけているのだ。幼い頃もこれと全く同じことをよくしていて、当時は母親の膝に座りに行くつもりが間違えて俺の膝にのってきていたのだが。
「あの、これどういう状態ですか?」
初めて見る光景にカフカは戸惑っているようだ。
「もうちょいしたら、目覚ますから。見とき、おもろい表情するで」
俺とカフカは黙ってその時を待った。暫くして大きく舟を漕ぎ目を覚ます。そして、欠伸を一つ。
「カフカあ、ぼくおなかすいた」
そう言ってこちらを振り返ろうとした瞬間、何故か目の前にカフカの顔があり目が合う。ここで一時停止。その後、油の切れた機械みたいにぎぎぎっと音がしそうなほどぎこちない動きで俺のほうを見た。
「うわあああぁーーーーやってもうた!」
宗四郎は叫び声をあげながら、居間を飛び出し一目散に逃げていく。
「え、え? 宗四郎さん?? 何処にいくんですか!?」
「ああ、心配せんでもいつものことや。廊下の端に転がっとるはずやから、大丈夫やで」
カフカが宗四郎を追い慌てて駆けていくのを見つめながら、その後をゆったりついて歩いていく。すると、予想通り廊下の端に弟は寝そべっていた。
「宗四郎さん、そんなところで何してるんですか」
「……猫は死に際を見せんもんや」
「ねこ……何言ってるんですか!?」
こうなってはお手上げ状態である。
当時、母親でさえこの状態の弟を宥めるには相当な時間を要していた。これは長丁場になるで、そう思いカフカと二人で一旦食べ損ねた先程のケーキでも食べに行くつもりでいたのだが。
「…………俺、先にお風呂入らせてもらおうかなって思ってるんですけど、一緒にどうですか?」
カフカがそう声をかけると、猫の耳がぴくっと動くかのようにその言葉に反応して少し弟の体が揺れた。その後暫く無言であったが、宗四郎さんと一緒に入りたいなというさらなる言葉に観念したのだろう。弟はゆっくりと体を起こし、頭をがしがし搔きむしりながら立ち上がった。
「部屋に着替え取りに行ってくるから、ちょっと待っててや……部屋に着替え取りに行ってくるから、ちょっと待っててや!!」
「なんで二回言うねん」
「大事なことやからにきまっとるやろ! ボケ、カス、阿呆!!」
「おお、ようけ罵ったなあ。調子出てきたやないか」
そんな俺たちのやり取りを聞いて、カフカは可笑しそうにくすくすと笑っている。こちらも調子が良くなってきたようだ。慣れない他所様の家だからか、はたまた俺と会うのが久しぶりだからか。先程までどことなく緊張している面持ちであったのだ。
「ところで、カフ。俺も一緒に風呂入ってもええんやろか」
「ここのお風呂広そうだから大丈夫じゃないですかね」
「スペースの問題とちゃうねんけどなあ」
ここは一つキスでもしてどういう意味か解からせてやろうかと思っていると、それはまさに猪突猛進。着替えを取りに行っていた弟が驚くべき早さで帰ってきて、そのまま俺に体当たりしてきたのだ。
「お待たせ、カフカ。はよ、風呂行こ」
「どんだけ一緒に風呂入りたいねん。寝とらんくせに元気やな」
しれっと二人の後をついていったのだが、やはり厄介払いのようである。
「何服脱ごうとしてねん! 入ってくんなや、お前なんぞの裸見たないわ」
「小さい頃は一緒に風呂入ってたやろ?」
「あれはおかんに無理やりお前と一緒に風呂場に押し込まれてただけや。入りたくて入っとったわけちゃうわ」
「そんな遠慮せんと、兄ちゃんが背中流したるで」
「……宗四郎さん、服脱がせますね。はい、ばんざーい」
「手あげるんかい。されるがままやないか」
我が弟ながらええ体しとるなと思ったところで、こちらを睨みつける紅い瞳が見えそのまま扉は勢いよく閉められてしまう。わざわざ鍵までかけて。
「鍵あけられんこともないけど、乱入したところで蹴り出されるのがおちやな……宗四郎、あんまり長風呂するんやないで。お前はすぐのぼせるんやから」
一応そう声をかけ、居間へと戻った。
一人寂しくテレビを見ていたら、暫くして腰にタオルだけ巻いた状態のカフカが俺の名前を呼んでくることとなる。
「やっぱりのぼせよったな。だから、言わんこっちゃない。寝てもおらんくせに気張りすぎや」
つらそうに唸っている弟をそっと寝かせて、団扇で風を送ってやる。その手はがっしりとカフカの手を握っている。
「そない握らんでもカフは逃げへんぞ、全くしょうのない奴や」
「宗四郎さん、お水飲みます?」
「ゔーん……カフカ……のませて」
カフカはペットボトルの水を口に含み弟へ口移しで飲ませようとする。それを横取りするかのように、カフカの顎を掴み無理やりこちらを向かせ唇を重ねた。宗四郎は目元にタオルを置いているので気づいていないようだ。
「……こういうことがしたかったから、宗四郎さんが風呂に入るのとめなかったんすか」
口の端からこぼれた水を指で拭ってやると、カフカは困ったような照れているようなそんな表情をしている。そんな愛らしい恋人の唇を奪い続け弟へ水を飲ませる暇を与えないようにする。蕩けた表情を見せる頃合いに漸く開放してやれば、熱を帯びた体がこちらへと傾いてくるので優しく抱きとめた。
「まあ、大体はそうなんやけど……もう一つ狙いがあってな」
横になっている弟の艷やかで少ししっとりとした髪を撫で付けるようにその頭に触れる。
「おかえり、宗四郎。よお帰ってきたな」
ややあって、ぼそりと呟くような『ただいま』が返ってくる。
「これな、弱ったときくらいしか言うてくれんねん。やっぱり、帰ってきたなら聞きたいやろ?」
「……宗一郎さんって、欲張りですよね」
「今頃気づいたんか? 二兎を追う者は一兎をも得ずなんてのは俺には当てはまらないっちゅうことやな。二匹とも捕まえたるわ、俺のかわいいかわいい兎さんやからな」
「よぉ来たなあカフ……なんや、宗四郎。お前まで来たんか」
かわいいかわいい俺の恋人が、わざわざ休みを利用して遊びに来てくれた。久々の逢瀬を大いに堪能したいが、これまたかわいいかわいい俺の弟もついて来ているので難しいだろう。
そんな弟が実家に着くやいなや辺りをきょろきょろとしている。こいつにとってはただの帰省に過ぎず、物珍しいものなどないはずだが。そう考えていたところで、あることに思い当たった。
「ああ……おかんならおらんで。友だちと旅行やて」
「阿呆、それをはよ言えや」
一瞬紅い瞳とかち合って、珍しくこっち見よったなんて喜んでいればすぐさまカフカへと抱きついている。
「あれ? 宗四郎さん、急に甘えた?」
「そりゃあそうやろ。おかんがおったら恥ずかしいもんなぁ、子どもみたいに甘えんのは」
「うっさいわ、ボケ。どっか行け」
どっか行けて、来たのはそっちやろ。
そうは思うが、下手につっこめばカフカ共々帰ってしまうかもしれない。そうなっては困るので、ここは宥めすかしておくのが賢明だろう。
「ほら、そんなところで立っとらんで。疲れたやろ、はよ荷物置いてこい。どうせ、お前も来るやろと思うて、宗四郎の好きなモンブラン買ってあるから一緒に食おうやないか」
そう促せば、子どもがぐずるみたいにカフカの胸元でいやいやしている。お前何しに来たんや。
「宗四郎さん、俺疲れたから座りたいなあ。宗四郎さんのお部屋も見たいなあ」
「……ほな、僕の部屋行こ」
カフカの呟きに宗四郎は顔をあげた。暫し見つめ合った後カフカの手を握り中へずかずかと入っていく。
ようやっと動き出したなと彼らの後をついていけば、なんでお前までついてくんねんと追い払われてしまった。我が弟ながら、扱いの難しいことこの上ない。カフカも大変やろうなと同情の念を抱きながら居間へと落ち着いた。
「これは長そうやな。もう今日は部屋から出てこんとちゃうか」
そんなことを考えながら、茶を飲みゆったり寛いでいると暫くしてこちらへ向かってくる足音が聞こえた。
「ん? なんや、えらい早いな。宗四郎はどないした?」
やって来たのはカフカ一人であった。
彼は俺の向かいの席につき、眠そうに欠伸をしている。
「宗四郎さんなら寝ちゃいました。目の下のクマ、気づきました? ひどかったですよね。全然寝れてないんですよ、ここのところ忙しくて。それなのに、どうしてもついてくるって言うこと聞かなくって」
気づかないわけがない、かわいい弟のあの顔色の悪さを。だが、俺が何を言っても無駄なので、あえて触れなかっただけだ。
「すごいやる気だけはあったみたんいなんすけど、ふかふかベッドには敵わなかったみたいで。今はすやすや寝てます」
「あいつはほんま何しに来たんや。実家来て寝てるて」
俺がそう言うとカフカが楽しそうに笑っている。
ということはだ、今この時は誰にも邪魔されず目の前の恋人を思う存分堪能できるというわけで。貴重な時間をどう過ごそうか思考を巡らせていると、遅くなったけれどお土産ですとカフカが紙袋を渡してくる。
「すまんなあ、そない気使わんでええのに」
手渡された土産袋を開けると、中からはなんともお洒落なパウンドケーキがお目見えする。
「モンブランは宗一郎さんが用意してくれてると思ったので、俺は少し違うものにしました」
「これも美味しそうやなあ」
「あの、これも栗がのってて……モンブラン好きな人に人気だって書いてあったから。その、俺……宗一郎さんに食べさせてあげたいなって思ったから」
頬を染めながら話す恋人のなんとかわいらしいことか。
ありがとうなと甘く囁き口づければ、みるみるうちに目の前の顔が朱に染まる。
「せっかくやし、これ一緒に食べようか」
どうせなら、カフカに食べさせてもらおう。そんなことを考えながら皿を取りに行こうとしていると、子どもみたいに間延びした緩やかな声が聞こえてきた。
「カフカぁ〜どこぉ? どこ行ったあ」
どうやら、小さき怪獣もとい弟のお目覚めである。
「宗四郎さん? 俺はここです、よ……?」
そう呼びかけるカフカの目の前を通り過ぎ、その向かいに座っている俺の膝へちょんと座った。目元をこすりながら、まだはっきりと覚醒できないのかそのまままたすうっと微かに寝息をたてている。
「小さい頃からちっとも変わらんなあ、宗四郎」
形の良い丸っこい頭を撫でてやる。
要は寝ぼけているのだ。幼い頃もこれと全く同じことをよくしていて、当時は母親の膝に座りに行くつもりが間違えて俺の膝にのってきていたのだが。
「あの、これどういう状態ですか?」
初めて見る光景にカフカは戸惑っているようだ。
「もうちょいしたら、目覚ますから。見とき、おもろい表情するで」
俺とカフカは黙ってその時を待った。暫くして大きく舟を漕ぎ目を覚ます。そして、欠伸を一つ。
「カフカあ、ぼくおなかすいた」
そう言ってこちらを振り返ろうとした瞬間、何故か目の前にカフカの顔があり目が合う。ここで一時停止。その後、油の切れた機械みたいにぎぎぎっと音がしそうなほどぎこちない動きで俺のほうを見た。
「うわあああぁーーーーやってもうた!」
宗四郎は叫び声をあげながら、居間を飛び出し一目散に逃げていく。
「え、え? 宗四郎さん?? 何処にいくんですか!?」
「ああ、心配せんでもいつものことや。廊下の端に転がっとるはずやから、大丈夫やで」
カフカが宗四郎を追い慌てて駆けていくのを見つめながら、その後をゆったりついて歩いていく。すると、予想通り廊下の端に弟は寝そべっていた。
「宗四郎さん、そんなところで何してるんですか」
「……猫は死に際を見せんもんや」
「ねこ……何言ってるんですか!?」
こうなってはお手上げ状態である。
当時、母親でさえこの状態の弟を宥めるには相当な時間を要していた。これは長丁場になるで、そう思いカフカと二人で一旦食べ損ねた先程のケーキでも食べに行くつもりでいたのだが。
「…………俺、先にお風呂入らせてもらおうかなって思ってるんですけど、一緒にどうですか?」
カフカがそう声をかけると、猫の耳がぴくっと動くかのようにその言葉に反応して少し弟の体が揺れた。その後暫く無言であったが、宗四郎さんと一緒に入りたいなというさらなる言葉に観念したのだろう。弟はゆっくりと体を起こし、頭をがしがし搔きむしりながら立ち上がった。
「部屋に着替え取りに行ってくるから、ちょっと待っててや……部屋に着替え取りに行ってくるから、ちょっと待っててや!!」
「なんで二回言うねん」
「大事なことやからにきまっとるやろ! ボケ、カス、阿呆!!」
「おお、ようけ罵ったなあ。調子出てきたやないか」
そんな俺たちのやり取りを聞いて、カフカは可笑しそうにくすくすと笑っている。こちらも調子が良くなってきたようだ。慣れない他所様の家だからか、はたまた俺と会うのが久しぶりだからか。先程までどことなく緊張している面持ちであったのだ。
「ところで、カフ。俺も一緒に風呂入ってもええんやろか」
「ここのお風呂広そうだから大丈夫じゃないですかね」
「スペースの問題とちゃうねんけどなあ」
ここは一つキスでもしてどういう意味か解からせてやろうかと思っていると、それはまさに猪突猛進。着替えを取りに行っていた弟が驚くべき早さで帰ってきて、そのまま俺に体当たりしてきたのだ。
「お待たせ、カフカ。はよ、風呂行こ」
「どんだけ一緒に風呂入りたいねん。寝とらんくせに元気やな」
しれっと二人の後をついていったのだが、やはり厄介払いのようである。
「何服脱ごうとしてねん! 入ってくんなや、お前なんぞの裸見たないわ」
「小さい頃は一緒に風呂入ってたやろ?」
「あれはおかんに無理やりお前と一緒に風呂場に押し込まれてただけや。入りたくて入っとったわけちゃうわ」
「そんな遠慮せんと、兄ちゃんが背中流したるで」
「……宗四郎さん、服脱がせますね。はい、ばんざーい」
「手あげるんかい。されるがままやないか」
我が弟ながらええ体しとるなと思ったところで、こちらを睨みつける紅い瞳が見えそのまま扉は勢いよく閉められてしまう。わざわざ鍵までかけて。
「鍵あけられんこともないけど、乱入したところで蹴り出されるのがおちやな……宗四郎、あんまり長風呂するんやないで。お前はすぐのぼせるんやから」
一応そう声をかけ、居間へと戻った。
一人寂しくテレビを見ていたら、暫くして腰にタオルだけ巻いた状態のカフカが俺の名前を呼んでくることとなる。
「やっぱりのぼせよったな。だから、言わんこっちゃない。寝てもおらんくせに気張りすぎや」
つらそうに唸っている弟をそっと寝かせて、団扇で風を送ってやる。その手はがっしりとカフカの手を握っている。
「そない握らんでもカフは逃げへんぞ、全くしょうのない奴や」
「宗四郎さん、お水飲みます?」
「ゔーん……カフカ……のませて」
カフカはペットボトルの水を口に含み弟へ口移しで飲ませようとする。それを横取りするかのように、カフカの顎を掴み無理やりこちらを向かせ唇を重ねた。宗四郎は目元にタオルを置いているので気づいていないようだ。
「……こういうことがしたかったから、宗四郎さんが風呂に入るのとめなかったんすか」
口の端からこぼれた水を指で拭ってやると、カフカは困ったような照れているようなそんな表情をしている。そんな愛らしい恋人の唇を奪い続け弟へ水を飲ませる暇を与えないようにする。蕩けた表情を見せる頃合いに漸く開放してやれば、熱を帯びた体がこちらへと傾いてくるので優しく抱きとめた。
「まあ、大体はそうなんやけど……もう一つ狙いがあってな」
横になっている弟の艷やかで少ししっとりとした髪を撫で付けるようにその頭に触れる。
「おかえり、宗四郎。よお帰ってきたな」
ややあって、ぼそりと呟くような『ただいま』が返ってくる。
「これな、弱ったときくらいしか言うてくれんねん。やっぱり、帰ってきたなら聞きたいやろ?」
「……宗一郎さんって、欲張りですよね」
「今頃気づいたんか? 二兎を追う者は一兎をも得ずなんてのは俺には当てはまらないっちゅうことやな。二匹とも捕まえたるわ、俺のかわいいかわいい兎さんやからな」
