保カフ その他 NEW
保カフ 『その星を手中に収める』 後編
「あの、副隊長······聞いて頂きたいことがあるので、今日の夜屋上に来てもらえないでしょうか?」
あれから数日経ち、今だ8号のことが頭をもたげていて書類整理に集中できずにいた。気分転換にと席を立ち、トレーニングルームへと向かっていると部下に呼び止められてしまう。目をかけている新人隊員の日比野カフカだ。
毎夜、資料室で1人居残り勉強しているので、様子を見に行くのが日課のようになっていたが。最近はタイミングが合わなかったのか、資料室に行っても顔を合わせることがめっきり無くなった。もしかしたら避けられているのかもと思ってしまう程だ。
久しぶりに彼から声をかけられたが、視線が合わないので非常に気がかりである。
「かまへんけど······夜って、今や駄目なんか?」
「あー、えっと······その、できれば誰にも見られたくないので、消灯後にお願いしたいです」
そう話すカフカの背後に、心配そうに遠くから様子を伺う四ノ宮と市川の姿がある。
(······なんや、告白でもされるんやろか)
副隊長になって何度かそういう経験をしたことがあり、彼女らは何故か決まって皆が寝静まった夜に屋上へ呼び出そうとするのだ。
だが相手は日比野カフカだ、彼に限ってそれはないかと考え直す。
そして、子の刻を過ぎた頃、僕は約束通り屋上へと向かった。
消灯後ということもあり、辺りは静まり返っていて階段を上る音が妙に響く。こんな時間に上官を呼び出すなんて、罰として腕立て伏せ100回くらいさせるべきかもしれない。そんなことを考えながら屋上の扉を開くと、手すりに体を預けながら夜空を眺める部下が見えた。彼がこちらに気づき、お疲れさまですとあいさつしてくる。
いつもの賑やかな様は鳴りを潜め、夜の空気を纏い神秘的な雰囲気を醸し出している。
「それで、話って何や? こんな時間に呼び出すくらいやから、よっぽどのことやろなあ」
辺りを見渡してみると、予想通り物陰に隠れている四ノ宮と市川がいた。本当に仲が良い、というかこの構図学生の頃にも見た記憶がある。最早詳細は思い出せず朧げではあるが、女子生徒に呼び出されその友だち2人が付き添いで来ている中、告白されたような気がする。
(ほんまに告白されたらどないしよ。明日から気まずいで······)
「すみません、夜遅くに呼び出してしまって······あの俺、実は······貴方に隠していたことが、その、ありましてーー」
カフカは胸を苦しそうにおさえ、途切れ途切れに漸くそれだけ伝えてきた。話している最中ずっと顔が赤く、またその体は何かに耐えるかのように小刻みに震えていた。大丈夫かと声をかけようとすると、四ノ宮たちに先を越されてしまう。カフカは何やらひどく戸惑っているようだ。それにしても後ろの2人は隠れる気があるのかないのか。
「ゔー······どうしよう、市川。俺もう······無、理ーーん······あっ、······はぁ······す、すみません、副隊長。我慢、できなくて」
(は? 今ごっついエロい声出てたけど······え、何? 僕まだ何もしとらんけど)
こちらも少々動揺していると、カフカの周りが何故か少しずつキラキラとし始めた。月に照らされているからだろうか。彼の体を纏う何かが輝いていて、呑気にも綺麗だなと眺めてしまう。だが次第にカフカの体が見えないくらいに覆われていき、そしてーー
ここ最近幾度となく見た、見慣れてしまった姿がそこにあった。
「かいじゅう······8号?」
「ずっと言えなくて、すみませんでした。俺なんです、俺が······怪獣8号なんです」
それは、もはや条件反射のように。僕は気がついたら彼に駆け寄り、距離を詰めていた。あの時、僕を庇ってできた腹のどでかい穴が本当に塞がったのか確かめたくて。
そんな僕の手を邪魔するように、間に割って入ってきた四ノ宮と市川。よく見ると、用意周到に準備してきたようで服の下にスーツまで着込んでいる。
僕の進路を邪魔するように足を割り込ませる四ノ宮に、こちらの間合いから離れさせるようにカフカめがけて体当たりした市川。自分たちが出来得る限りのことを考えての、この見事なまでの連係プレー。こんなにも息ぴったりの奴らだっただろうか。
「お前ら何しとるん? まさか僕が8号を殺すかもしれへんって思うたんか? ないない、もうこいつに対してそんな気あらへんねん」
そう言うと、3人が各々良かったと呟き、ほっとしたかのようにその場にへたり込んだ。
「良かったやないわ。怪獣8号に対しては怒っとらんけどもやな、正体を隠しとったカフカには怒っとる」
僕のその言葉を聞くや否や、四ノ宮と市川はまたしても厳戒態勢をとり怪獣8号もとい日比野カフカを守らんとして覆いかぶさる。この2人の行動を見るからに、正体を知ってもなおカフカという存在が大きな位置を占め、彼らにとってかけがえのないものとなっているのだろう。
「冗談や。カフカに危害を加えようなんて思ってへんから、そんな怖がらんでええ」
「······あの、副隊長。先輩のこの姿を見ても、あまり驚いてないように見えるんですが。どうしてですか?」
市川が恐る恐るそんなことを聞いてきた。四ノ宮そしてカフカ本人も同じことを思っていたのだろう。身を乗り出すようにして、こちらの答えを待ち侘びている。
「そりゃあ驚いてるで? そやけどな、それよりもしっくりきたっちゅうか······なんかこう、喉に刺さってた小骨が漸くとれたみたいな感じやねん。寧ろなんで今まで気づかんかったんか」
これは見た目に騙されて、本質を見抜けなかった自分の落ち度だろう。ヒントはあちらこちらにあったはずなのに。
「それよりもカフカ、お前いつまでその格好でおんねん。もう分かったから、元に戻らんかい」
「それがですね、その······うまくコントロールが出来なくてーー」
そんなカフカを市川と四ノ宮の双方が片方ずつ腕を掴み、引きずるようにして屋上の入り口へと向かっていく。先輩ここはいったん離れましょう、そうね少し距離を置いたほうがいいわ、と話しながら。
3人は屋上の扉から出ていった。そして僕だけがぽつんと1人その場に取り残されてしまう。
「いや、なんでやねん。ここまできて、僕だけのけもんにするとか 気分悪いわぁ」
後を追うように扉の方へ向かい屋上から出ようとすると、何かがつっかえていて扉が開かない。仕方なく目一杯力を込めてこじ開けようとすると、開けられまいと必死になっている市川と四ノ宮がその隙間から見えた。
「お前ら何しとん? 僕に敵うと思うてんのか」
ドアを壊す勢いでもう一段階さらに強く力を込めようとしたが、市川のその言葉に遮られてしまう。
「副隊長に命を狙われて、先輩はそれがトラウマになってるんです······!」
衝撃的な発言に驚き、僕は言葉を失い呆然とした。
ドアノブに込められていた力が抜け、拮抗していたバランスが崩れる。開けられまいとしていた力だけが残り、扉が閉まりかけ隙間から出されていた市川の指が挟まれそうになる。咄嗟にそれを防ごうとした市川が体勢を崩し、そのままドアノブをおさえていた四ノ宮とぶつかってしまう。彼女はその勢いで扉を押した形となり、2人が倒れようにしてその扉は開け放たれた。市川と四ノ宮の体は地面に折り重なっていて、その背後には泣きそうな顔で半分ほど怪獣壁に覆われたカフカの姿がある。
「だから······先輩は副隊長を見るとコントロールができなくなって、怪獣化してしまうんです」
倒れてもなお市川は、必死に訴えるように言葉を紡いでいる。そして、彼の言葉はこう続く。
「副隊長を見ると動悸がし、また怪獣化を恐れ常に副隊長の動向に注意を払い······そして、目の前にするとパニックになる、らしいです」
「······そう、やったんか」
カフカがどういう状態であったかを事細かく尚且つ的確に説明され、こちらは相槌を打つくらいしかできない。
だが、話を聞いて漸く合点がいった。ここ最近怪獣8号との遭遇率が高かったこと、そして、カフカに避けられていたであろうその理由が。
「······すまん、カフカ。知らんかったとはいえーー」
「副隊長は······悪くないです。正体を隠していた、俺が悪いんです」
カフカはやっと元の姿に戻れたようだが、こちらに近づいてこようとはしない。怪獣8号として対峙していたときのほうが、距離が近かったなんてなんだか皮肉だ。
僕はこの空気を変えたくて、あえて別の話題をふった。
「ところで、お前らはなんでカフカの正体を知っとるん?」
「「命を救ってもらったので」」
四ノ宮、市川の2人の声がぴたりと揃う。
誰に対してもその軸がぶれることなどなく、自身を顧みず無謀にも他者を救おうとする。それが日比野カフカという男だ。
「ある意味、防衛隊員の鑑やな」
そして、何を隠そう僕自身も彼に命を救われている。
これはつまり、命を救われている者同士なら分かりあえる、ということだろうか。
「今ここで正体を明かしたっちゅうことは、カフカの秘密を守るその同盟に僕にも加われっていう意味なんか?」
そうして下さると、有り難いですがと市川が言うと、馬鹿ね、こういう時はお願いするのよと四ノ宮は頭を下げた。
そして、不安そうにこちらを見ているカフカの視線と交わる。
「······はぁ、しゃあないな。その同盟に僕も入ったる。誰にも言わへんから安心しい」
ほっと胸をなでおろす市川と四ノ宮。そして、はにかみながらも嬉しそうに笑い礼を述べるカフカ。その顔が妙に印象的で、頭から離れず忘れることが出来なかった。
それから暫く経ったが、その一件以来ほとんど個人的にカフカと顔を合わせることがなくなった。そのおかげか怪獣8号の姿もぱたりと見なくなっている。
「なんや、つまらんな······怪獣8号の姿でもええから、顔見せてくれへんやろか」
事務処理に追われ、消灯後も自室に帰ることができずにいた深夜。
薄暗い中作業をしていると、突然机の上にことりと珈琲缶が置かれる。顔を上げてみると根詰めすぎじゃないのかと心配げな斑鳩の顔があった。
斑鳩亮、彼とは年も近く同じ第3部隊ということもあり、話す機会も多く実は割と仲がいい。だが片や副隊長、片や小隊長となってしまったため、以前は気軽にタメ口で話していたのが今や堅苦しい敬語になっている。役職など気にせず今まで通りでいいと言ったが、周りに示しがつかないと言って取り合ってもらえなかった。でもこんな風に僕を気遣って、以前のように話しかけてきてくれることもある。
「なんかしてへんと、落ち着かんねん」
消灯後のこの時間は、資料室で勉強しているカフカの様子を見に行くのが日課のようになっていた。だが、それすらも許されなくて、何だか手持ち無沙汰なのだ。よく考えれば、目の前の書類たちはどうしても今日中にという仕事ではなかった。ただ気を紛らわせるために仕事をと思っただけだ。他に思いつくものがないなんて、我ながら面白味がないなとも思うけれど。
「日比野と、何かあったのか?」
何かあったと問われれば、大いにあったとしか言いようがない。だが言うわけにもいかず、けれど誤魔化しが利く相手でもないので端的に本当のことを述べた。
「構いすぎて······嫌われてしもてん」
そう言うと、斑鳩はため息を漏らし『だからか』と呟いた。そしてさらに、彼はこう結論づけた。
「つまり、ついに手を出したというわけか」
「なんでやねん! 付きおうてもおらんのに、手なんか出すわけないやろ。相手は直属の部下やぞ。そもそもなあ、僕はあいつのことそういう目で見とらんし」
嘘偽りない答えを述べたというのに、目の前の友は信じられないといった視線をこちらへ向けてくる。少し腹が立って、何やその目と問えば、彼はこほんと1つ咳払いをし口を開いた。
「いや、驚いたなと思って······あれだけ明らさまに好意を向けておいて、まさか自覚がなかったとは」
「え······僕、そない明らさまやった?」
「それはもう、誰が見てもはっきりと分かるくらいには」
「あかんやん、もうそれはセクハラやろ」
気になって目で追いかけて、声かけて構って構い倒して。心配になって様子見に行ったら、笑ってくれると嬉しくて胸がざわついて、それからーー
自身のこれまでの行動を改めて振り返ってみると、なんともまあ分かりやすくまるで恋する乙女のようで恥ずかしい気持ちになる。だけれどもそれと同時に、この恋は日の目を見ることなく終わってしまうのだろうということも分かってしまった。
「やってもうた······自覚したと同時に僕ふられてもうとるやんか、悲しすぎるわ」
「なんでそうなる? あれはどう見ても脈ありだろ。さっき、そこで日比野に会ったが、そんな感じじゃなかったぞ」
この部屋の前をうろうろとしていたから、お前に用があるんだと思って声をかけてみたが。お前の名前を出した途端、薄暗い廊下でもはっきり分かるくらいに顔を赤くして、明らかに挙動不審になってたぞ。それに自分がここに来たことは副隊長に言わないでくれと懇願していたから、お前と何かあったんだと思って。
それでも、お前に会いたいとここまでやって来るぐらいだからなあ。
あれで日比野がお前に気がなかったとしたら、俺の恋愛観が全て覆されることになるな。
そんなことを斑鳩はつらつらと述べてみせた。
「はあ!? カフカここに来とったんか? 僕に会いに!? お前、なんでそれを先に言わんねん! ああ、会いたい······カフカの顔が見たい」
仕事なんてやってられるかとばかりに手にしていた書類を放り出し、椅子の背もたれに体を預け空を仰ぐ。すると、見に行けばいいだろと斑鳩は言ってくるが、事態はそう単純ではない。
だが、ふと気になることがあり、訝しげな顔でこちらを見ているその男に問うてみた。
「カフカやけど、僕の名前聞いて顔を赤くしたって言うたか? 青くしたの間違いやのうて?」
「まあ、お前にセクハラされて、嫌がってたら顔が青ざめていたかもしれんが······あれはどう見ても、満更でもないって顔だろ」
いや、だから手なんか出してへん、といつもの調子でつっこみを入れつつも頭をフル回転させる。もしかしたら思っていた状況と少し食い違いが生じているのかもしれないと。
よく考えてみたら、市川から聞いただけでカフカ本人の口からは真相を聞いていない。市川を疑うわけではないが、人伝てに聞いたことにあまり信憑性はなく鵜呑みにしてはいけないと常々思っている。いや、思っていたのに、どうして疑いもせず信じてしまっていたのだろう。自分に非があると負い目を感じていたからかもしれない、完全に迂闊だった。
「······斑鳩、ちょっと頼まれてくれるか?」
その翌日の消灯後、斑鳩経由でカフカを屋上へと呼び出した。
彼はすでに来ていて、僕に気づきこちらへ近づいてこようとする。
「カフカ、こっちへ来んでええから、そのままで。僕もこれ以上は近づいたりせえへんし」
聞いていた通りの状態であることも鑑み、念のため距離を置く。すると、明らさまにカフカは犬が耳を垂れるようにしょんぼりと悲しそうにしている。その様がなんとも愛らしくて、ついつい笑みがこぼれてしまう。
「お前に聞きたいことがあってん。僕の質問に正直に答えてくれるか?」
すると、彼は上官に向けて『了』と答えたので、『今はそれはいらん、これは完全にプライベートや』と軽く笑いながら言葉を投げかけた。
「僕と会うたら、お前はどうなるんやったか······ちゃんとお前の言葉で聞かせてほしい」
確か市川の話では『副隊長を見ると動悸がし、その動向に常に注意を払い、目の前にするとパニックになる』だったはずだが。
「その、副隊長を見ると胸がどきどきして、でも気になってつい目で追ってしまうんです。それに、あんまり近いと恥ずかしいというか、その副隊長すごくかっこいい······ので、緊張してどうしていいか分からなくなると言いますかーー」
(はあ!? 聞いてたのと、全然違うやん······!)
いや、違うとも言いきれないのだろう。
恋かトラウマか将又なにか別のものか。
何を前提にするかでこうも受け取り方が違ってくるものだ、ということに感銘すら受ける。それに、恐らく市川たちに伝える際、気恥ずかしくなり言葉を濁してしまったのだろう。そのため、お互いに不利益となるような結果を招くこととなったのだ。
「ほんま、あほやなぁ······僕もお前も」
同じものを持ちえながら、そうだと気づかずに離れてなかったことにしようとしていたなんて。
トラウマでなかったことに安堵し、一歩ずつカフカのもとへと距離を詰めていく。その時、彼の背後を照らすように星が流れていった。
「······流れ星や」
そう言うと、どこだろうかとカフカが空を見上げて探している。
あの日見た夢ーー藁にも縋るような気持ちで流れ星にお願い事をする、情けない自身の姿であったが。なぜあんな懐かしい夢を見たのだろうかと疑問に思っていた。
だが、その理由が漸く分かったような気がする。
カフカの背後で次々と星が流れていく。その様は本来なら目を奪われるほど美しいものだろう。けれど、それすらも霞んでしまうほどの輝きをそれは放っていた。
保科が近づいてしまったからだろう。気持ちが揺らぎ、制御が出来なくなっているようだ。目の前の彼は怪獣壁に少しずつ覆われ始めている。
きっと星々の光を一点に集めて、ただ反射しているだけなのだろうと思う。でも、カフカの姿が星よりも一等輝きを纏っていて、何より美しかった。
「これは······あの星が僕の願いごとを叶えてくれたってことやろ」
僕が星に願ったもの、それは『大事な、宝物みたいな何か』であった。昔から宝物といえば、きらきらとした綺麗なものというイメージが強い。好きで愛おしいものが、これ以上ないくらいの輝きを放ち暗い夜を照らしている。その美しさたるや凄まじいもので、魅了されずにはいられない。
(この手の中にひとつ星が落ちてきたみたいや······これは僕だけの綺羅星やから、大事に大事にしたらなあかん)
ゆっくりと近づいて、カフカを抱きしめた。
するとおろおろし始めた彼の体が更に硬質化されていき、その様に笑いがこみ上げてくる。
「ほんまに、すぐ怪獣なるやん」
「だってしょうがないじゃないですか······副隊長、さっき近づかないって言ってたのに······!」
カフカは赤くなった顔を見られまいと両の手で覆っている。その様は、半分人間で半分怪獣。抱きしめた体は怪獣肌でとても硬かった。
僕がやっとの思いで手に入れた宝物は、少しばかり変わっていて歪な星なのかもしれない。だがそれは、一等可愛らしくてきらきらと煌めている。だから、その輝きを失わないようにこれからは僕が守らなくてはいけない。
「カフカ、これからも僕を避けていくつもりか? そんなん土台無理な話やろ。それよりも、怪獣化せんように慣らしていくほうが建設的やで」
「······慣らし······ていく?」
「そうや。僕とずうっと一緒におって、制御できるようにゆっくりと慣らしていくっちゅう意味や。これから、僕と2人で訓練していこな」
綺羅星に目を奪われている間に、流星群はどこかもう遥か彼方に消えていた。今も輝いて見えるのは怪獣8号の姿をしたカフカだけとなり、その後も彼だけが僕の夜空を照らし続けていた。
その星を手中に収める 終

「あの、副隊長······聞いて頂きたいことがあるので、今日の夜屋上に来てもらえないでしょうか?」
あれから数日経ち、今だ8号のことが頭をもたげていて書類整理に集中できずにいた。気分転換にと席を立ち、トレーニングルームへと向かっていると部下に呼び止められてしまう。目をかけている新人隊員の日比野カフカだ。
毎夜、資料室で1人居残り勉強しているので、様子を見に行くのが日課のようになっていたが。最近はタイミングが合わなかったのか、資料室に行っても顔を合わせることがめっきり無くなった。もしかしたら避けられているのかもと思ってしまう程だ。
久しぶりに彼から声をかけられたが、視線が合わないので非常に気がかりである。
「かまへんけど······夜って、今や駄目なんか?」
「あー、えっと······その、できれば誰にも見られたくないので、消灯後にお願いしたいです」
そう話すカフカの背後に、心配そうに遠くから様子を伺う四ノ宮と市川の姿がある。
(······なんや、告白でもされるんやろか)
副隊長になって何度かそういう経験をしたことがあり、彼女らは何故か決まって皆が寝静まった夜に屋上へ呼び出そうとするのだ。
だが相手は日比野カフカだ、彼に限ってそれはないかと考え直す。
そして、子の刻を過ぎた頃、僕は約束通り屋上へと向かった。
消灯後ということもあり、辺りは静まり返っていて階段を上る音が妙に響く。こんな時間に上官を呼び出すなんて、罰として腕立て伏せ100回くらいさせるべきかもしれない。そんなことを考えながら屋上の扉を開くと、手すりに体を預けながら夜空を眺める部下が見えた。彼がこちらに気づき、お疲れさまですとあいさつしてくる。
いつもの賑やかな様は鳴りを潜め、夜の空気を纏い神秘的な雰囲気を醸し出している。
「それで、話って何や? こんな時間に呼び出すくらいやから、よっぽどのことやろなあ」
辺りを見渡してみると、予想通り物陰に隠れている四ノ宮と市川がいた。本当に仲が良い、というかこの構図学生の頃にも見た記憶がある。最早詳細は思い出せず朧げではあるが、女子生徒に呼び出されその友だち2人が付き添いで来ている中、告白されたような気がする。
(ほんまに告白されたらどないしよ。明日から気まずいで······)
「すみません、夜遅くに呼び出してしまって······あの俺、実は······貴方に隠していたことが、その、ありましてーー」
カフカは胸を苦しそうにおさえ、途切れ途切れに漸くそれだけ伝えてきた。話している最中ずっと顔が赤く、またその体は何かに耐えるかのように小刻みに震えていた。大丈夫かと声をかけようとすると、四ノ宮たちに先を越されてしまう。カフカは何やらひどく戸惑っているようだ。それにしても後ろの2人は隠れる気があるのかないのか。
「ゔー······どうしよう、市川。俺もう······無、理ーーん······あっ、······はぁ······す、すみません、副隊長。我慢、できなくて」
(は? 今ごっついエロい声出てたけど······え、何? 僕まだ何もしとらんけど)
こちらも少々動揺していると、カフカの周りが何故か少しずつキラキラとし始めた。月に照らされているからだろうか。彼の体を纏う何かが輝いていて、呑気にも綺麗だなと眺めてしまう。だが次第にカフカの体が見えないくらいに覆われていき、そしてーー
ここ最近幾度となく見た、見慣れてしまった姿がそこにあった。
「かいじゅう······8号?」
「ずっと言えなくて、すみませんでした。俺なんです、俺が······怪獣8号なんです」
それは、もはや条件反射のように。僕は気がついたら彼に駆け寄り、距離を詰めていた。あの時、僕を庇ってできた腹のどでかい穴が本当に塞がったのか確かめたくて。
そんな僕の手を邪魔するように、間に割って入ってきた四ノ宮と市川。よく見ると、用意周到に準備してきたようで服の下にスーツまで着込んでいる。
僕の進路を邪魔するように足を割り込ませる四ノ宮に、こちらの間合いから離れさせるようにカフカめがけて体当たりした市川。自分たちが出来得る限りのことを考えての、この見事なまでの連係プレー。こんなにも息ぴったりの奴らだっただろうか。
「お前ら何しとるん? まさか僕が8号を殺すかもしれへんって思うたんか? ないない、もうこいつに対してそんな気あらへんねん」
そう言うと、3人が各々良かったと呟き、ほっとしたかのようにその場にへたり込んだ。
「良かったやないわ。怪獣8号に対しては怒っとらんけどもやな、正体を隠しとったカフカには怒っとる」
僕のその言葉を聞くや否や、四ノ宮と市川はまたしても厳戒態勢をとり怪獣8号もとい日比野カフカを守らんとして覆いかぶさる。この2人の行動を見るからに、正体を知ってもなおカフカという存在が大きな位置を占め、彼らにとってかけがえのないものとなっているのだろう。
「冗談や。カフカに危害を加えようなんて思ってへんから、そんな怖がらんでええ」
「······あの、副隊長。先輩のこの姿を見ても、あまり驚いてないように見えるんですが。どうしてですか?」
市川が恐る恐るそんなことを聞いてきた。四ノ宮そしてカフカ本人も同じことを思っていたのだろう。身を乗り出すようにして、こちらの答えを待ち侘びている。
「そりゃあ驚いてるで? そやけどな、それよりもしっくりきたっちゅうか······なんかこう、喉に刺さってた小骨が漸くとれたみたいな感じやねん。寧ろなんで今まで気づかんかったんか」
これは見た目に騙されて、本質を見抜けなかった自分の落ち度だろう。ヒントはあちらこちらにあったはずなのに。
「それよりもカフカ、お前いつまでその格好でおんねん。もう分かったから、元に戻らんかい」
「それがですね、その······うまくコントロールが出来なくてーー」
そんなカフカを市川と四ノ宮の双方が片方ずつ腕を掴み、引きずるようにして屋上の入り口へと向かっていく。先輩ここはいったん離れましょう、そうね少し距離を置いたほうがいいわ、と話しながら。
3人は屋上の扉から出ていった。そして僕だけがぽつんと1人その場に取り残されてしまう。
「いや、なんでやねん。ここまできて、僕だけのけもんにするとか 気分悪いわぁ」
後を追うように扉の方へ向かい屋上から出ようとすると、何かがつっかえていて扉が開かない。仕方なく目一杯力を込めてこじ開けようとすると、開けられまいと必死になっている市川と四ノ宮がその隙間から見えた。
「お前ら何しとん? 僕に敵うと思うてんのか」
ドアを壊す勢いでもう一段階さらに強く力を込めようとしたが、市川のその言葉に遮られてしまう。
「副隊長に命を狙われて、先輩はそれがトラウマになってるんです······!」
衝撃的な発言に驚き、僕は言葉を失い呆然とした。
ドアノブに込められていた力が抜け、拮抗していたバランスが崩れる。開けられまいとしていた力だけが残り、扉が閉まりかけ隙間から出されていた市川の指が挟まれそうになる。咄嗟にそれを防ごうとした市川が体勢を崩し、そのままドアノブをおさえていた四ノ宮とぶつかってしまう。彼女はその勢いで扉を押した形となり、2人が倒れようにしてその扉は開け放たれた。市川と四ノ宮の体は地面に折り重なっていて、その背後には泣きそうな顔で半分ほど怪獣壁に覆われたカフカの姿がある。
「だから······先輩は副隊長を見るとコントロールができなくなって、怪獣化してしまうんです」
倒れてもなお市川は、必死に訴えるように言葉を紡いでいる。そして、彼の言葉はこう続く。
「副隊長を見ると動悸がし、また怪獣化を恐れ常に副隊長の動向に注意を払い······そして、目の前にするとパニックになる、らしいです」
「······そう、やったんか」
カフカがどういう状態であったかを事細かく尚且つ的確に説明され、こちらは相槌を打つくらいしかできない。
だが、話を聞いて漸く合点がいった。ここ最近怪獣8号との遭遇率が高かったこと、そして、カフカに避けられていたであろうその理由が。
「······すまん、カフカ。知らんかったとはいえーー」
「副隊長は······悪くないです。正体を隠していた、俺が悪いんです」
カフカはやっと元の姿に戻れたようだが、こちらに近づいてこようとはしない。怪獣8号として対峙していたときのほうが、距離が近かったなんてなんだか皮肉だ。
僕はこの空気を変えたくて、あえて別の話題をふった。
「ところで、お前らはなんでカフカの正体を知っとるん?」
「「命を救ってもらったので」」
四ノ宮、市川の2人の声がぴたりと揃う。
誰に対してもその軸がぶれることなどなく、自身を顧みず無謀にも他者を救おうとする。それが日比野カフカという男だ。
「ある意味、防衛隊員の鑑やな」
そして、何を隠そう僕自身も彼に命を救われている。
これはつまり、命を救われている者同士なら分かりあえる、ということだろうか。
「今ここで正体を明かしたっちゅうことは、カフカの秘密を守るその同盟に僕にも加われっていう意味なんか?」
そうして下さると、有り難いですがと市川が言うと、馬鹿ね、こういう時はお願いするのよと四ノ宮は頭を下げた。
そして、不安そうにこちらを見ているカフカの視線と交わる。
「······はぁ、しゃあないな。その同盟に僕も入ったる。誰にも言わへんから安心しい」
ほっと胸をなでおろす市川と四ノ宮。そして、はにかみながらも嬉しそうに笑い礼を述べるカフカ。その顔が妙に印象的で、頭から離れず忘れることが出来なかった。
それから暫く経ったが、その一件以来ほとんど個人的にカフカと顔を合わせることがなくなった。そのおかげか怪獣8号の姿もぱたりと見なくなっている。
「なんや、つまらんな······怪獣8号の姿でもええから、顔見せてくれへんやろか」
事務処理に追われ、消灯後も自室に帰ることができずにいた深夜。
薄暗い中作業をしていると、突然机の上にことりと珈琲缶が置かれる。顔を上げてみると根詰めすぎじゃないのかと心配げな斑鳩の顔があった。
斑鳩亮、彼とは年も近く同じ第3部隊ということもあり、話す機会も多く実は割と仲がいい。だが片や副隊長、片や小隊長となってしまったため、以前は気軽にタメ口で話していたのが今や堅苦しい敬語になっている。役職など気にせず今まで通りでいいと言ったが、周りに示しがつかないと言って取り合ってもらえなかった。でもこんな風に僕を気遣って、以前のように話しかけてきてくれることもある。
「なんかしてへんと、落ち着かんねん」
消灯後のこの時間は、資料室で勉強しているカフカの様子を見に行くのが日課のようになっていた。だが、それすらも許されなくて、何だか手持ち無沙汰なのだ。よく考えれば、目の前の書類たちはどうしても今日中にという仕事ではなかった。ただ気を紛らわせるために仕事をと思っただけだ。他に思いつくものがないなんて、我ながら面白味がないなとも思うけれど。
「日比野と、何かあったのか?」
何かあったと問われれば、大いにあったとしか言いようがない。だが言うわけにもいかず、けれど誤魔化しが利く相手でもないので端的に本当のことを述べた。
「構いすぎて······嫌われてしもてん」
そう言うと、斑鳩はため息を漏らし『だからか』と呟いた。そしてさらに、彼はこう結論づけた。
「つまり、ついに手を出したというわけか」
「なんでやねん! 付きおうてもおらんのに、手なんか出すわけないやろ。相手は直属の部下やぞ。そもそもなあ、僕はあいつのことそういう目で見とらんし」
嘘偽りない答えを述べたというのに、目の前の友は信じられないといった視線をこちらへ向けてくる。少し腹が立って、何やその目と問えば、彼はこほんと1つ咳払いをし口を開いた。
「いや、驚いたなと思って······あれだけ明らさまに好意を向けておいて、まさか自覚がなかったとは」
「え······僕、そない明らさまやった?」
「それはもう、誰が見てもはっきりと分かるくらいには」
「あかんやん、もうそれはセクハラやろ」
気になって目で追いかけて、声かけて構って構い倒して。心配になって様子見に行ったら、笑ってくれると嬉しくて胸がざわついて、それからーー
自身のこれまでの行動を改めて振り返ってみると、なんともまあ分かりやすくまるで恋する乙女のようで恥ずかしい気持ちになる。だけれどもそれと同時に、この恋は日の目を見ることなく終わってしまうのだろうということも分かってしまった。
「やってもうた······自覚したと同時に僕ふられてもうとるやんか、悲しすぎるわ」
「なんでそうなる? あれはどう見ても脈ありだろ。さっき、そこで日比野に会ったが、そんな感じじゃなかったぞ」
この部屋の前をうろうろとしていたから、お前に用があるんだと思って声をかけてみたが。お前の名前を出した途端、薄暗い廊下でもはっきり分かるくらいに顔を赤くして、明らかに挙動不審になってたぞ。それに自分がここに来たことは副隊長に言わないでくれと懇願していたから、お前と何かあったんだと思って。
それでも、お前に会いたいとここまでやって来るぐらいだからなあ。
あれで日比野がお前に気がなかったとしたら、俺の恋愛観が全て覆されることになるな。
そんなことを斑鳩はつらつらと述べてみせた。
「はあ!? カフカここに来とったんか? 僕に会いに!? お前、なんでそれを先に言わんねん! ああ、会いたい······カフカの顔が見たい」
仕事なんてやってられるかとばかりに手にしていた書類を放り出し、椅子の背もたれに体を預け空を仰ぐ。すると、見に行けばいいだろと斑鳩は言ってくるが、事態はそう単純ではない。
だが、ふと気になることがあり、訝しげな顔でこちらを見ているその男に問うてみた。
「カフカやけど、僕の名前聞いて顔を赤くしたって言うたか? 青くしたの間違いやのうて?」
「まあ、お前にセクハラされて、嫌がってたら顔が青ざめていたかもしれんが······あれはどう見ても、満更でもないって顔だろ」
いや、だから手なんか出してへん、といつもの調子でつっこみを入れつつも頭をフル回転させる。もしかしたら思っていた状況と少し食い違いが生じているのかもしれないと。
よく考えてみたら、市川から聞いただけでカフカ本人の口からは真相を聞いていない。市川を疑うわけではないが、人伝てに聞いたことにあまり信憑性はなく鵜呑みにしてはいけないと常々思っている。いや、思っていたのに、どうして疑いもせず信じてしまっていたのだろう。自分に非があると負い目を感じていたからかもしれない、完全に迂闊だった。
「······斑鳩、ちょっと頼まれてくれるか?」
その翌日の消灯後、斑鳩経由でカフカを屋上へと呼び出した。
彼はすでに来ていて、僕に気づきこちらへ近づいてこようとする。
「カフカ、こっちへ来んでええから、そのままで。僕もこれ以上は近づいたりせえへんし」
聞いていた通りの状態であることも鑑み、念のため距離を置く。すると、明らさまにカフカは犬が耳を垂れるようにしょんぼりと悲しそうにしている。その様がなんとも愛らしくて、ついつい笑みがこぼれてしまう。
「お前に聞きたいことがあってん。僕の質問に正直に答えてくれるか?」
すると、彼は上官に向けて『了』と答えたので、『今はそれはいらん、これは完全にプライベートや』と軽く笑いながら言葉を投げかけた。
「僕と会うたら、お前はどうなるんやったか······ちゃんとお前の言葉で聞かせてほしい」
確か市川の話では『副隊長を見ると動悸がし、その動向に常に注意を払い、目の前にするとパニックになる』だったはずだが。
「その、副隊長を見ると胸がどきどきして、でも気になってつい目で追ってしまうんです。それに、あんまり近いと恥ずかしいというか、その副隊長すごくかっこいい······ので、緊張してどうしていいか分からなくなると言いますかーー」
(はあ!? 聞いてたのと、全然違うやん······!)
いや、違うとも言いきれないのだろう。
恋かトラウマか将又なにか別のものか。
何を前提にするかでこうも受け取り方が違ってくるものだ、ということに感銘すら受ける。それに、恐らく市川たちに伝える際、気恥ずかしくなり言葉を濁してしまったのだろう。そのため、お互いに不利益となるような結果を招くこととなったのだ。
「ほんま、あほやなぁ······僕もお前も」
同じものを持ちえながら、そうだと気づかずに離れてなかったことにしようとしていたなんて。
トラウマでなかったことに安堵し、一歩ずつカフカのもとへと距離を詰めていく。その時、彼の背後を照らすように星が流れていった。
「······流れ星や」
そう言うと、どこだろうかとカフカが空を見上げて探している。
あの日見た夢ーー藁にも縋るような気持ちで流れ星にお願い事をする、情けない自身の姿であったが。なぜあんな懐かしい夢を見たのだろうかと疑問に思っていた。
だが、その理由が漸く分かったような気がする。
カフカの背後で次々と星が流れていく。その様は本来なら目を奪われるほど美しいものだろう。けれど、それすらも霞んでしまうほどの輝きをそれは放っていた。
保科が近づいてしまったからだろう。気持ちが揺らぎ、制御が出来なくなっているようだ。目の前の彼は怪獣壁に少しずつ覆われ始めている。
きっと星々の光を一点に集めて、ただ反射しているだけなのだろうと思う。でも、カフカの姿が星よりも一等輝きを纏っていて、何より美しかった。
「これは······あの星が僕の願いごとを叶えてくれたってことやろ」
僕が星に願ったもの、それは『大事な、宝物みたいな何か』であった。昔から宝物といえば、きらきらとした綺麗なものというイメージが強い。好きで愛おしいものが、これ以上ないくらいの輝きを放ち暗い夜を照らしている。その美しさたるや凄まじいもので、魅了されずにはいられない。
(この手の中にひとつ星が落ちてきたみたいや······これは僕だけの綺羅星やから、大事に大事にしたらなあかん)
ゆっくりと近づいて、カフカを抱きしめた。
するとおろおろし始めた彼の体が更に硬質化されていき、その様に笑いがこみ上げてくる。
「ほんまに、すぐ怪獣なるやん」
「だってしょうがないじゃないですか······副隊長、さっき近づかないって言ってたのに······!」
カフカは赤くなった顔を見られまいと両の手で覆っている。その様は、半分人間で半分怪獣。抱きしめた体は怪獣肌でとても硬かった。
僕がやっとの思いで手に入れた宝物は、少しばかり変わっていて歪な星なのかもしれない。だがそれは、一等可愛らしくてきらきらと煌めている。だから、その輝きを失わないようにこれからは僕が守らなくてはいけない。
「カフカ、これからも僕を避けていくつもりか? そんなん土台無理な話やろ。それよりも、怪獣化せんように慣らしていくほうが建設的やで」
「······慣らし······ていく?」
「そうや。僕とずうっと一緒におって、制御できるようにゆっくりと慣らしていくっちゅう意味や。これから、僕と2人で訓練していこな」
綺羅星に目を奪われている間に、流星群はどこかもう遥か彼方に消えていた。今も輝いて見えるのは怪獣8号の姿をしたカフカだけとなり、その後も彼だけが僕の夜空を照らし続けていた。
その星を手中に収める 終
