保カフ その他
保カフ 『触れて、とける』 カフ視点
四ヶ月、眠っていたらしい。
その間俺はずっと夢を見ていた、と思う。いつも近くにあたたかい何かを感じていて、それに俺は救われていた。でなければ、みっともなく子どものようにわんわん泣いていたかもしれない。
何かは分からないが、ひどく怖くて寂しい。そんな気持ちがずっと頭をもたげていた。
俺は夢の中で旅をしていたようで、世界各国いろんな場所を巡っていた。でも何故か、どこもかしこも過酷な所ばかりだ。ある時は砂漠地帯、またある時は雪の積もった高山。きっと一人ではその辺で野垂れ死にして終わりだったかもしれない。
でも、違ったんだ。いつも、隣にはあの人がいてくれた。
「大丈夫や、カフカ。僕がついてる」
優しく、そう言ってくれる。
優しすぎて、泣きそうになってしまうけれど。
砂漠を歩いている時、暑さで朦朧としてきてもう駄目だと思った瞬間。倒れそうになった俺の体をいとも簡単に掬い上げ抱きとめてくれる。
「もうちょっとや、カフカ。もうちょっといけば、この砂漠を抜けられる。頑張ろな」
また、雪山では凍えそうになっていて、途中で見つけた小屋に避難したけれど猛烈な眠気に襲われた。
もうこのまま、寝てしまいたい。そう思っていたら、俺の名前を何度も何度も呼ぶ彼の声がした。
「お前の手、氷みたいに冷たくなっとるやん。今、僕があっためてやるから」
彼は俺の手にはあっと息を吹きかけながら手を優しく包み、擦ってくれる。
「ええか、カフカ。絶対に寝たらあかん。僕を差し置いて、お前が先に寝るやなんて……許さへんからな」
そうして俺は長い旅路を終え、目覚めた。
目を覚ますとそこはとても殺風景で静かな部屋だった。ベッドに横たわり点滴をされ、どう見ても病院の一室である。そこで何をするよりもまず先に、彼の姿を探した。長い旅路をずっと支え続けてくれたあのひとを――
「ふくたい、ちょ……どこ?」
その後すぐ、医師や看護師が慌ただしくしていて、彼を探すどころではなくなってしまった。何でもいいから、あの人の声が聞きたい。
暫くして、病院から連絡を受けたであろうミナが駆けつけてくれた。
でも、それでも俺は彼の姿を一生懸命に探していて。それに気づいたミナが教えてくれた。
「カフカくん、保科ならいないよ。今こっちにいないから、すぐには来られないんだ。ごめんね、カフカくん」
俺のほうこそ、ごめんな。せっかく来てくれたのに、ミナにはなんだか悪いことしたな。
それから、職場復帰して新たな環境で日々追われる忙しい毎日を送っている。
四ヶ月眠っていて、夢の中でずっと共に過ごしていたからなのか。俺にはある特技が身についたようだ。
遠くから彼が歩いてくる。気配を察知し、視線を感じ取り、足音を拾う。声をかけられる前に気づいていたが、あえて気づかないふりをした。普通に考えて、これは明らかにおかしいと思う。自分でも少々気持ちが悪いなと感じるほどには。
「疲れた顔しとるなあ、大丈夫か」
そういう彼のほうが目の下にクマまで作って、よほど疲れて見える。だけれど、夢と同じでこの人は優しい。
わざとおどけて、副隊長には敵いませんよと返した。いつもみたいに、じゃれ合えるのをほんの少し期待してだ。だが、彼はどうしてだか、手を差し出すように言ってきた。なんだろうと思いながら言われるまま差し出せば、そうっと包み込まれる。大事な宝物でも仕舞い込むように。何をしているのかと問えば、はっとした表情をしすぐに手が揉みしだかれていく。
俺はこの感覚を知っている。見た記憶はないのに、それでも覚えているのだ。寂しくて泣いてしまいそうな俺をじんわりとあたためてくれる何か。
その正体が判った時、泣きそうなほど嬉しかった。俺が眠っていた四ヶ月の間、この人は俺に会いに来てくれていたのだと。
(本当にあなたには敵いません……)
ずっとそばにいてくれて、まもってくれて。どんなに心強かったことか。
そんな彼が、頑張ったと褒めてくれる。帰ってきた俺を快く受け入れてくれるんだ。こんなにも、嬉しいことはないだろう。
「ただいま、帰りました……! 副隊長」
四ヶ月、眠っていたらしい。
その間俺はずっと夢を見ていた、と思う。いつも近くにあたたかい何かを感じていて、それに俺は救われていた。でなければ、みっともなく子どものようにわんわん泣いていたかもしれない。
何かは分からないが、ひどく怖くて寂しい。そんな気持ちがずっと頭をもたげていた。
俺は夢の中で旅をしていたようで、世界各国いろんな場所を巡っていた。でも何故か、どこもかしこも過酷な所ばかりだ。ある時は砂漠地帯、またある時は雪の積もった高山。きっと一人ではその辺で野垂れ死にして終わりだったかもしれない。
でも、違ったんだ。いつも、隣にはあの人がいてくれた。
「大丈夫や、カフカ。僕がついてる」
優しく、そう言ってくれる。
優しすぎて、泣きそうになってしまうけれど。
砂漠を歩いている時、暑さで朦朧としてきてもう駄目だと思った瞬間。倒れそうになった俺の体をいとも簡単に掬い上げ抱きとめてくれる。
「もうちょっとや、カフカ。もうちょっといけば、この砂漠を抜けられる。頑張ろな」
また、雪山では凍えそうになっていて、途中で見つけた小屋に避難したけれど猛烈な眠気に襲われた。
もうこのまま、寝てしまいたい。そう思っていたら、俺の名前を何度も何度も呼ぶ彼の声がした。
「お前の手、氷みたいに冷たくなっとるやん。今、僕があっためてやるから」
彼は俺の手にはあっと息を吹きかけながら手を優しく包み、擦ってくれる。
「ええか、カフカ。絶対に寝たらあかん。僕を差し置いて、お前が先に寝るやなんて……許さへんからな」
そうして俺は長い旅路を終え、目覚めた。
目を覚ますとそこはとても殺風景で静かな部屋だった。ベッドに横たわり点滴をされ、どう見ても病院の一室である。そこで何をするよりもまず先に、彼の姿を探した。長い旅路をずっと支え続けてくれたあのひとを――
「ふくたい、ちょ……どこ?」
その後すぐ、医師や看護師が慌ただしくしていて、彼を探すどころではなくなってしまった。何でもいいから、あの人の声が聞きたい。
暫くして、病院から連絡を受けたであろうミナが駆けつけてくれた。
でも、それでも俺は彼の姿を一生懸命に探していて。それに気づいたミナが教えてくれた。
「カフカくん、保科ならいないよ。今こっちにいないから、すぐには来られないんだ。ごめんね、カフカくん」
俺のほうこそ、ごめんな。せっかく来てくれたのに、ミナにはなんだか悪いことしたな。
それから、職場復帰して新たな環境で日々追われる忙しい毎日を送っている。
四ヶ月眠っていて、夢の中でずっと共に過ごしていたからなのか。俺にはある特技が身についたようだ。
遠くから彼が歩いてくる。気配を察知し、視線を感じ取り、足音を拾う。声をかけられる前に気づいていたが、あえて気づかないふりをした。普通に考えて、これは明らかにおかしいと思う。自分でも少々気持ちが悪いなと感じるほどには。
「疲れた顔しとるなあ、大丈夫か」
そういう彼のほうが目の下にクマまで作って、よほど疲れて見える。だけれど、夢と同じでこの人は優しい。
わざとおどけて、副隊長には敵いませんよと返した。いつもみたいに、じゃれ合えるのをほんの少し期待してだ。だが、彼はどうしてだか、手を差し出すように言ってきた。なんだろうと思いながら言われるまま差し出せば、そうっと包み込まれる。大事な宝物でも仕舞い込むように。何をしているのかと問えば、はっとした表情をしすぐに手が揉みしだかれていく。
俺はこの感覚を知っている。見た記憶はないのに、それでも覚えているのだ。寂しくて泣いてしまいそうな俺をじんわりとあたためてくれる何か。
その正体が判った時、泣きそうなほど嬉しかった。俺が眠っていた四ヶ月の間、この人は俺に会いに来てくれていたのだと。
(本当にあなたには敵いません……)
ずっとそばにいてくれて、まもってくれて。どんなに心強かったことか。
そんな彼が、頑張ったと褒めてくれる。帰ってきた俺を快く受け入れてくれるんだ。こんなにも、嬉しいことはないだろう。
「ただいま、帰りました……! 副隊長」
