保カフ その他
レノカフ 『101回目の話をしよう』
「どうしたあ? そんな大きな声出して」
帰ってきた先輩の手が俺の肩にのる。そして、その指が俺の耳に触れた。最初は偶然かと思っていたが、どうやら意図的にそうしているようだ。
「いやあ、レノも男だなあって思ってさ」
「だから、誤解だと言ってるじゃないですか! 伊春くん」
「そんな恥ずかしがんなくていいって! みんな男はこういうの好きなんだからさ」
そう言いながら、手にしていたバイク雑誌のとあるページを先輩へと向ける。そして、俺たちを残し彼は退出していく。
「レノはこういうのが好みなんだってさ。ってことで、俺も便所行ってくるわ」
そのページにはバイクに跨る露出度の高い服を着た女性が写っている。誤解されることはないと思うが、念のため弁明しておこう。そう思う俺の耳元で、先輩はこう囁いた。
「お前ってこういうのが好きなの? 胸の大っきなお姉さん……違うよなぁ、レノ。お前が好きなのはお姉さんじゃなくて、お兄さんだもんなあ」
そんなことを口にしながら、俺の手をとり自身の胸へとあてがう。赤らんだ顔、潤んだ瞳に普段見ることはない妖艶な微笑み。そんな彼からは話す度にアルコール臭が漂ってくる。
「呑みすぎですよ、先輩。水、もっと飲んでください」
「なんだよ、ノリ悪いなぁ。せっかく伊春いなくて、ふたりきりだってのに」
今日は仕事終わりに居酒屋へとやって来ていた。伊春くんの発案でお疲れ会をやろうということになったのだ。俺、先輩、伊春くんの三人で乾杯をし酒を嗜んでいた。
給料で新しいバイクを買いたいのだという伊春くんは雑誌広げ、どんなものがいいかと熱弁している。先輩が途中退席しトイレへと向かった後も彼の話は続いていたが、その雑誌に載っている女性の瞳の色が気になった。先輩と似た緑色であったからだが、俺がそのページの女性を凝視したのは単に好みだったからと伊春くんが勘違いしたのだ。
そうして、今に至る。
「いつもみたいにさ、俺のここ……揉まねえの?」
「貴方がそうしてほしいと言うからそうしているだけで、別に俺の本意ではありません」
「……なんか、お前ってさ。昔のほうがかわいかったよな」
「人は成長するものですよ、先輩。いつまでも少年のようではいられない、貴方を除いては」
「見た目はおじさん、頭脳は子どもってか〜うまくねえんだよ。悪かったなあ、子どもっぽくて!」
まだまだこのような問答が続きそうだったので、とりあえずキスをして黙らせた。
酔っぱらいの戯言ほど面倒なことはないので、その口は封じておくに限る。
「もうそろそろ伊春くんが戻ってくるでしょうから、大人しくしておいて下さい。帰ったら、貴方の言うようにしてあげますから」
「あ、やっぱ揉む……?」
それからお疲れ会もお開きになり、少し先輩を休ませて帰るからと適当な理由をつけて伊春くんと別れた。
「レノ……好きな女の子できたらさあ、言ってくれよお。すぐに別れてやるからな」
これは酔うと先輩がいつも言う常套句みたいなものだ。本心でないことは知っている。でも毎回、心の中できっと泣いているのだろうことも知っている。
そういえば、忙しくて肝心なことを忘れていた。今日の好きをまだ伝えていない。
「先輩、好きです」
何がそんなに不安なのか分からないが、先輩は俺の愛が如何ほどか試すようなことをよくしてくるようになった。だから、俺は毎日その日の気持ちを彼に伝えるようにしているのだ。
付き合って一年、伝え始めて三ヶ月くらいになるから、もうすぐ俺の好きは百回へと到達することだろう。こんなにも、こんなにも好きを伝えているのに。それでもわかってくれない年上彼氏のために、次の好きはもっと特別なものにしようと思っている。
覚悟していてくださいね、先輩。
「どうしたあ? そんな大きな声出して」
帰ってきた先輩の手が俺の肩にのる。そして、その指が俺の耳に触れた。最初は偶然かと思っていたが、どうやら意図的にそうしているようだ。
「いやあ、レノも男だなあって思ってさ」
「だから、誤解だと言ってるじゃないですか! 伊春くん」
「そんな恥ずかしがんなくていいって! みんな男はこういうの好きなんだからさ」
そう言いながら、手にしていたバイク雑誌のとあるページを先輩へと向ける。そして、俺たちを残し彼は退出していく。
「レノはこういうのが好みなんだってさ。ってことで、俺も便所行ってくるわ」
そのページにはバイクに跨る露出度の高い服を着た女性が写っている。誤解されることはないと思うが、念のため弁明しておこう。そう思う俺の耳元で、先輩はこう囁いた。
「お前ってこういうのが好きなの? 胸の大っきなお姉さん……違うよなぁ、レノ。お前が好きなのはお姉さんじゃなくて、お兄さんだもんなあ」
そんなことを口にしながら、俺の手をとり自身の胸へとあてがう。赤らんだ顔、潤んだ瞳に普段見ることはない妖艶な微笑み。そんな彼からは話す度にアルコール臭が漂ってくる。
「呑みすぎですよ、先輩。水、もっと飲んでください」
「なんだよ、ノリ悪いなぁ。せっかく伊春いなくて、ふたりきりだってのに」
今日は仕事終わりに居酒屋へとやって来ていた。伊春くんの発案でお疲れ会をやろうということになったのだ。俺、先輩、伊春くんの三人で乾杯をし酒を嗜んでいた。
給料で新しいバイクを買いたいのだという伊春くんは雑誌広げ、どんなものがいいかと熱弁している。先輩が途中退席しトイレへと向かった後も彼の話は続いていたが、その雑誌に載っている女性の瞳の色が気になった。先輩と似た緑色であったからだが、俺がそのページの女性を凝視したのは単に好みだったからと伊春くんが勘違いしたのだ。
そうして、今に至る。
「いつもみたいにさ、俺のここ……揉まねえの?」
「貴方がそうしてほしいと言うからそうしているだけで、別に俺の本意ではありません」
「……なんか、お前ってさ。昔のほうがかわいかったよな」
「人は成長するものですよ、先輩。いつまでも少年のようではいられない、貴方を除いては」
「見た目はおじさん、頭脳は子どもってか〜うまくねえんだよ。悪かったなあ、子どもっぽくて!」
まだまだこのような問答が続きそうだったので、とりあえずキスをして黙らせた。
酔っぱらいの戯言ほど面倒なことはないので、その口は封じておくに限る。
「もうそろそろ伊春くんが戻ってくるでしょうから、大人しくしておいて下さい。帰ったら、貴方の言うようにしてあげますから」
「あ、やっぱ揉む……?」
それからお疲れ会もお開きになり、少し先輩を休ませて帰るからと適当な理由をつけて伊春くんと別れた。
「レノ……好きな女の子できたらさあ、言ってくれよお。すぐに別れてやるからな」
これは酔うと先輩がいつも言う常套句みたいなものだ。本心でないことは知っている。でも毎回、心の中できっと泣いているのだろうことも知っている。
そういえば、忙しくて肝心なことを忘れていた。今日の好きをまだ伝えていない。
「先輩、好きです」
何がそんなに不安なのか分からないが、先輩は俺の愛が如何ほどか試すようなことをよくしてくるようになった。だから、俺は毎日その日の気持ちを彼に伝えるようにしているのだ。
付き合って一年、伝え始めて三ヶ月くらいになるから、もうすぐ俺の好きは百回へと到達することだろう。こんなにも、こんなにも好きを伝えているのに。それでもわかってくれない年上彼氏のために、次の好きはもっと特別なものにしようと思っている。
覚悟していてくださいね、先輩。
