保カフ その他 

保カフ、兄カフ (兄弟サンド) 『僕とカフカと、時々クソ兄貴』

 「モンブランあるやん! カフカ、ありがとう。早速食べるなあ」

 冷蔵庫を開けるとケーキの箱があり、カフカへお礼を述べる。そして、ありがたく頂戴しようとしたところで待ったがかけられた。

 「それ、違うんで食べちゃだめです……!」

 慌てた様子でばたばたと走ってきて、箱を取り上げられてしまう。玩具を取り上げられた子どものような心持ちだ。

 「違うって何がやねん。確かにモンブランは一個しかあられへんけど、これ僕のやろ?」

 「お店行ったら、最後の一個だったんです。だから、だめ! 今日はショートケーキで我慢してください」

 箱から赤い苺が姿を見せる。そして、僕の前のお皿へとのせられた。
モンブランが食べたいなあとぶつふつと文句を言っていたら、あれがやって来てしまった。

 「おかえりなさい、宗一郎さん。良かったらケーキ食べませんか? モンブランありますよ」

 カフカの呼びかけで、僕の向かいの席へと座った。眠そうに欠伸を噛み殺しながら、こちらの様子を窺っている。僕はその視線を無視して、気にせず苺に舌鼓を打つ。
 
 「なんちゅう顔で食べてねん、宗四郎。もっと美味そうに食わんと、せっかくのケーキが勿体ないやろ」

 ショートケーキも大変美味しくはあるが、やはりモンブランを食べたかった。そんな思いを抱えている弟の目の前で、平気な顔して食べようとしているこいつの気が知れん。
 きっと、そういった恨めしそうな顔をしているんだろう。
 誰のせいでこないな顔になっとる思うてんねん。お前のせいじゃ、ボケ。

 「俺、宗一郎さんにどうしても食べてもらいたくて、限定販売のモンブラン買ってきました! お誕生日おめでとうございます!!」

 「ありがとうな、カフ。お前はほんまにええ子やな」

 そう言って、あろうことかあいつは僕の目の前でカフカの唇を奪いやがったのだ。

 「あーー何してんねん! このクソ兄貴!!」

 僕のカフカが穢されてしまったと泣いていたら、カフカが優しく頭を撫でてくれる。

 「何泣いてるんですか。ほら、宗四郎さんもちゅーしましょ?」

 「うわっ嫌や! 今は絶対したない。あいつと間接キスとか死んでも嫌や」

 そんな僕たちの様子をモンブランを食べながら眺めていた兄貴がゆっくりと席を立ち、僕の肩を掴んで覗き込んでくる。
 僕の半径5メートル以内に入ってくるなや。

 「宗四郎、今やったらモンブランとカフ両方味わえるで? 兄ちゃんがキスしたろか」

 「………………あかん、吐く。昼食べたお好み焼きあがってきた」

 そう言いながら、トイレに駆け込むと見せかけてカフカのほうへ突進し胸元へ顔を埋める。これが一番落ち着くなとぐりぐり頭を擦り付けていると、ここで吐かないでくださいよとカフカはおろおろとしていた。

 「あんまり、うちの愚弟を甘やかしたらあかんで、カフ」

 「かわいいんで、それは無理っぽいすね」

 それやったら俺も甘やかしてもらおうかな、とまたしてもカフカの唇を狙ってきたので慌てて阻止する。

 「こいつは僕のもんや。手出すなって、何遍も言うとるやろ」

 「宗四郎、そない猫みたいに威嚇しとらんと、兄ちゃんの胸にも飛び込んでこい。ぎゅうぎゅう抱きしめたるで」

 「こいつ、何言うてんねん。意味わからん、怖すぎる……キモすぎる!」

 さっさと西に帰れと思いながらカフカに抱きついていたら、腰に回していた手を引き剥がされた。

 「ちょうど良かった。今から掃除しようと思ってたので、宗一郎さんこの猫ちゃん少しの間よろしくお願いします」

 そう言いながら、僕の体を兄貴のほうへと押そうとするので抵抗する。僕を売り渡そうなんて、百年早い。

 「あれ、急に岩みたいに全然動かなくなった? そんなに力入れないでくださいよ、宗四郎さん……つうか、すげえ怖い顔。かわいい猫ちゃんかと思ったら、虎だったかあ」

 「おい……クソ兄貴、そこ片付けて掃除もしとけ。居候がタダ飯食えると思うなよ」

 僕はそう言い残し、カフカを抱き上げて寝室へと向かう。兄貴が何やらぼやいていたが、全て無視した。

 
 「今日は俺の誕生日やねんけどなあ……人使いの荒い弟やで。まあ、かわいいからええけど。さあて、さくっと秒で終わらせて、参戦しようやないか」


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