保カフ その他 

保カフ 『膝にのせる』

 「どうしたんですか? 保科副隊長」

 今日は週2回の訓練日ではないはすだ。それなのに、副隊長が有明りんかい基地を訪れていた。

 「お前、今日休みらしいなあ。その休み、僕が貰ってもええか?」

 
 そして、俺は今何故か坂道で荷物をのせた台車を押している。
 とてつもなく、きつい。暑い、重いの三重苦だ。

 「ほおら、頑張れ頑張れ。音を上げるにはまだ早いやろ? カフカ」

 この坂道はとある病院へと続いている、らしい。まだ、それらしき建物がほんの少し見えた状態なので、先は長そうだが。


 「子どもたちへの見舞い品、ですか」

 副隊長は入院生活が長い子どもたちへの見舞い品をもって、病院を訪れるという。けれど、病院の駐車場が怪獣災害に遭い、現在使用できない状態であるとのこと。
 
 「病院から離れた駐車場に車をとめて、運ばなあかんのやけど。結構量があるから人手があると助かるねん」

 「わかりました、俺で良ければお手伝いさせて頂きます」


 その言葉通り、見舞いの品は沢山あった。だか、それを俺ひとりで運ぶなんて聞いていない。病院までの道のりがこんなにも遠く、激坂であるなんて……全くもって聞いていない。

 「お前、この間の訓練で週2回じゃ足りない。そう言っとったやろ? そやから、今週は特別に3回や」

 そう言われてしまっては、文句も言えない。
 それにしても、上り坂とはなんでこんなにきついのだろうか。

 「そないきついかあ? もう無理なら、僕がかわってやってもええで」

 こちらを覗き込む副隊長の顔はいつもにも増して楽しそうでにこにことしている。なのに、どうしてかとても怒っているようなそんな気がしてならない。
 俺は何か気に障るようなことをしただろうか。

 「いえ、大丈夫です。部下である俺が持たずに上司の貴方に荷物を持たせるなんて……ありえねぇんで」

 「そうか? それやったら、気張りや」

 第3部隊に席を置かない俺はもう部下ではないのだろう。
 だが、彼はこう言う俺を一度たりとも否定しない。俺がこう言い続ける限り、彼はずっと俺にとって尊敬してやまない上司なのだ。

 「やっ……と、たどり着いた……長かったあ」

 坂を上りきり、漸く病院へと見舞い品を運ぶことができた。そんな俺を副隊長は労ってくれる。

 「がんばったなあ、カフカ。ご褒美に僕に膝枕してや」

 「…………はあ?」

 百歩譲って、副隊長が俺に膝枕してくれるのならばまだ分かるが、どうして俺が副隊長に膝枕しなければならないのか。いや、膝枕自体おかしい気がする。疲れすぎて、まともに頭が働かないけれど。

 「なんや、嫌なんか。お前の新しい上司にはしてやるのに、僕にはできへん、とそういうわけか」

 副隊長はポケットから端末を取り出し、こちらに向けた。すると、そこには俺の膝に頭をのせ眠っている鳴海隊長が映っている。

 「え? なんすか、これ。いつ撮ったんだ? てか、誰が撮ったんだよ」

 「その反応、これは事実で間違いない。そういうことでええか?」

 「いや、まあ……はい」

 この間突然、話をしていたら眠くなったから枕になれと鳴海隊長に言われてこういう状態になっているわけだが。何故その時の写真を副隊長が持っているのだろうか。

 「僕のところに、長谷川さん経由で送られてきたんや。お前の元部下の膝は寝心地が悪いっちゅう感想付きで」

 長谷川副隊長を経由してまで送りつける意味、どこにあるのだろう。こういう場合、俺の上司がすみませんと謝罪するべきなのだろうか。

 「僕かてまだしてもろうたことないのに、なんで鳴海さんにはしてんねん。僕が先やろ? おかしいやん!」

 
 子どもたちへの見舞い品を無事配り終えた後、頑張ったご褒美として俺は尊敬してやまない上司の頭を膝にのせている。

 「カフカあ〜、ハイチーズ」

 この後、長谷川副隊長経由で鳴海隊長のもとへと写真が送られました。

 俺の上司たちは一体、何をしているんでしょうか。


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