保カフ (怪獣8号) ふたりは新婚さんシリーズ
保カフ ふたりは新婚さんシリーズ2 『飲みすぎにはご注意を』
「先輩、大丈夫ですか? 水飲みます?」
「そ······しろ、うさん」
仕事終わりに部下たちが飲み会をしているという居酒屋へ向かった。途中参加しようというわけではなく、嫁の回収が目的だ。
僕の嫁であるカフカは酒好きだが、あまり強くはない。だから、基本飲み会に行ってほしくないし、行くと言うならば出来うる限り迎えに行くようにしている。
今日はカフカとその同期の飲み会でその会場にたどり着くと、皆が『副隊長お疲れさまです!』と声をかけてくる。お疲れさんと返しながらお目当ての人物を探していると、一番奥にそれらしいのが見えた。
予想通り、いや思っていたよりも随分と酔っぱらっているらしい。声をかけようとしたが、目の当たりにした光景に思わずため息が出る。
飲みすぎてぼんやりとしているカフカを気遣って、市川が水をすすめていた。そんな彼にカフカは何を思ったのか覆いかぶさるように抱きついているところだった。
「せ、先輩!? ちょ、違いますって! 俺はふくっ隊長じゃなくて、その、い、市川······です!」
焦ってしどろもどろになっている市川から、まるで猫の子のように首根っこを引っ掴んでカフカを引き剥がす。
「すまんなあ、市川。僕の嫁が迷惑かけて」
お疲れさまですという市川の顔が青ざめている。僕に怒られると思っているのだろう。そこまで器の小さい男ではないつもりだが、まあ腹はたつ。
「カフカあ? お前の大好きな副隊長様が迎えに来てやったでー」
にっこりと笑ってみせると、カフカもつられるようにふにゃりと笑って宗四郎さんと言った。
かわいいが過ぎるので早々に退散せねばと思い、飲み会の支払いを済ませ皆を帰らせる。
ご馳走さまでした、と頭を下げるひよこ共に気をつけて帰るように声をかけ僕も車へと向かう。自力で歩けそうにないカフカを小脇に抱えていると、市川が手伝いますと言ってきた。だがこれ以上他の男の手垢をつけさせたくなかったので、笑顔で牽制しておいた。
カフカと2人でよれよれとしながら、車を目指すのは少々面倒で。もういっそのこと抱きかかえようかとも思ったが、人前でそんなことをすれば照れ屋な嫁が怒ってしまうだろう。1度へそを曲げると、口を聞いてくれなくなるのでそれはさけたい。
なんとかカフカを車に押し込め、家路へと急いだ。道中すやすやと寝息を立てていたカフカだったが、もう少しで到着というところで目を覚ました。
「うー······あれ? ここ、どこ······だっけ?」
「どこ、ちゃうねん。お前、外で酒飲むときは飲みすぎたらあかんって言うとったやろ」
同期の皆と飲んでいたところまでしか記憶がないのか、カフカはゆったりと辺りを見渡した後こちらを向いた。そして、話しかけた声の主が僕だと分かるやいなや、嬉しそうに微笑んだ。運転している僕の太腿に手をのせながら。
酔うとボディタッチが増えるというのも、飲みの場に行かせたくない理由の1つだ。
「きょうは······そうしろうさんがいるから、らいじょーぶ」
「おればええちゅう話やないねんぞ、全く」
僕と飲むとき以外は飲みすぎるなと口を酸っぱくしていつも言いきかせているからか、カフカはそんなふうに言ったのだろう。酔っていても言いつけは守ろうとしている様がかわいくて、文句を言ったはずがその語尾に笑みが混ざってしまった。
「ほら、家もう着くで」
そうこうしているうちに、我が家についたので車をとめた。もうここならば人目につくこともないだろうと思い、カフカを車からおろして抱き上げると当の本人はくふふと笑っている。
「おじさんなのに、おひめさま」
そんなことを呟きながらふらふらと横に揺れるので、暴れるなら落っことすでとわざとらしくよろけてみせる。するとカフカは謝りながら自分で歩くからと泣きべそかいている。
泣いたり笑ったり、酔っぱらいの相手は難しい。
「あほか、どこに大っ事な嫁さん落っことす旦那がおんねん······だから、もうカフカ泣かんでええよ」
カフカをそう宥めながら、廊下をわたってリビングへと行きソファにゆっくりと下ろした。そのままこてんとソファの上で寝転んだカフカの頭をひと撫でして、キッチンへと向かう。冷蔵庫から水を取り出し、すぐさままたリビングへと戻る。
「カフカ、寝る前に水飲んどき」
そう言って、ソファの上に寝転がっている彼の目の前にペットボトルを差し出すが、一向に受け取る気配がない。目線はこちらを向いているので、言われていることはわかっているはずだ。
「なんや、どうしてほしいんかちゃんと言わな分からんで」
すると、僕の服の袖を引きながら『のませて』と言ってきた。だから、僕はペットボトルの水を口移しで飲ませてやる。こくこくと嚥下していることを確認してから唇をはなした。飲みきれなくて口の端から垂れている水をカフカの唇をなぞるようにして拭ってやる。
そのまま手を引っ込めようとすると、その手を追うようにカフカの手が付いてきて、僕の唇を同じようにその指がなぞっていった。そして、そっとカフカ呟く。
『しないの?』か『したいな』か声が小さくて判断がつかなかったが、意味合いとしてはどちらでも同じなので問題ないだろう。
素面の時のカフカはこういうことはほぼ言わない。夜のお誘いは専ら僕の方からで、彼はただただ顔を赤くするだけ、僕を受け入れてされるがままだ。別にそれに対して不満があるというわけではなく、何でも1から10までしてあげたい派の僕としてはむしろ嬉しいくらいだったりする。
それがどういうわけかカフカは酔うといつもより積極的になって、自分から誘ってくる。これはこれで珍しいもん拝めたなぁと最初のうちは喜んでいたのだけれど。
「もうこの先の展開、よめてんでーカフカ」
これは所謂、既視感というやつだ。
カフカが飲み会に行く、酔ったカフカを迎えに行く、夜のお誘いを受ける。この1連の流れはもはや定型文のように、毎回と言っていいほど同じである。そして、最終的にどうなるかというとカフカが途中で必ず寝落ちするのだ。家で1度寝てしまったら、どんなに揺すっても起きない。そう、どんなにこちらが盛り上がっていようともだ。
もう何度もたどった道なので、今日こそは違えない。
かわいい嫁の貴重なお誘いを泣く泣くお断りして、おとなしく寝てもらうほかないのだ。そう思っているのに、思い通りにならないのが世の常というもの。
「いや、もう服脱がしにかかってるやん。お前こんなんテキパキしたこたとないやろ。酔うてるほうが手はやいって······どないなっとんねん」
カフカはくすくすと笑いながら、僕の手をひいてソファに座らせる。ズボンのバックルに手をかけてはずし、ファスナーを口で下ろしそのまま下着の上から舌を這わせはむはむと甘噛みする。
「宗四郎さん、俺これ舐めたい」
人のムスコをこれとか言うなやとつっこみをいれてはみたけれど、そこだけ解像度が高くなったみたいに妙に鮮明で。普段の彼からは想像つかないほどの妖艶さを纏っていた。それを直接浴びたせいか体温が急激にあがった気がする。
こんなにも自分は学習力がなかったのだろうかと自問自答しても、もう遅い。
「カフカ、お願いやから途中で寝らんとってや」
そんなお願いも虚しく、今日もまた同じ道を辿っていく。
たどたどしくて決して上手くはないが、懸命にご奉仕する様が愛らしくて。上手やで、ええ子やなと褒めるように優しくカフカの頭を撫でてやったのがいけなかったのだろう。
途中から全く動かなくなってしまったので、疲れたのだろうかと覗き込むと案の定寝てしまっている。
「僕の咥えたまま寝るなや·····こうなることは、最初からわかってたけどな! もう、どないすんねんコレ······」
窓から覗く夜空は無情にもきれいで。
力ない僕の声が静寂を纏った夜空にのまれ、虚しく消えていった。
終

「先輩、大丈夫ですか? 水飲みます?」
「そ······しろ、うさん」
仕事終わりに部下たちが飲み会をしているという居酒屋へ向かった。途中参加しようというわけではなく、嫁の回収が目的だ。
僕の嫁であるカフカは酒好きだが、あまり強くはない。だから、基本飲み会に行ってほしくないし、行くと言うならば出来うる限り迎えに行くようにしている。
今日はカフカとその同期の飲み会でその会場にたどり着くと、皆が『副隊長お疲れさまです!』と声をかけてくる。お疲れさんと返しながらお目当ての人物を探していると、一番奥にそれらしいのが見えた。
予想通り、いや思っていたよりも随分と酔っぱらっているらしい。声をかけようとしたが、目の当たりにした光景に思わずため息が出る。
飲みすぎてぼんやりとしているカフカを気遣って、市川が水をすすめていた。そんな彼にカフカは何を思ったのか覆いかぶさるように抱きついているところだった。
「せ、先輩!? ちょ、違いますって! 俺はふくっ隊長じゃなくて、その、い、市川······です!」
焦ってしどろもどろになっている市川から、まるで猫の子のように首根っこを引っ掴んでカフカを引き剥がす。
「すまんなあ、市川。僕の嫁が迷惑かけて」
お疲れさまですという市川の顔が青ざめている。僕に怒られると思っているのだろう。そこまで器の小さい男ではないつもりだが、まあ腹はたつ。
「カフカあ? お前の大好きな副隊長様が迎えに来てやったでー」
にっこりと笑ってみせると、カフカもつられるようにふにゃりと笑って宗四郎さんと言った。
かわいいが過ぎるので早々に退散せねばと思い、飲み会の支払いを済ませ皆を帰らせる。
ご馳走さまでした、と頭を下げるひよこ共に気をつけて帰るように声をかけ僕も車へと向かう。自力で歩けそうにないカフカを小脇に抱えていると、市川が手伝いますと言ってきた。だがこれ以上他の男の手垢をつけさせたくなかったので、笑顔で牽制しておいた。
カフカと2人でよれよれとしながら、車を目指すのは少々面倒で。もういっそのこと抱きかかえようかとも思ったが、人前でそんなことをすれば照れ屋な嫁が怒ってしまうだろう。1度へそを曲げると、口を聞いてくれなくなるのでそれはさけたい。
なんとかカフカを車に押し込め、家路へと急いだ。道中すやすやと寝息を立てていたカフカだったが、もう少しで到着というところで目を覚ました。
「うー······あれ? ここ、どこ······だっけ?」
「どこ、ちゃうねん。お前、外で酒飲むときは飲みすぎたらあかんって言うとったやろ」
同期の皆と飲んでいたところまでしか記憶がないのか、カフカはゆったりと辺りを見渡した後こちらを向いた。そして、話しかけた声の主が僕だと分かるやいなや、嬉しそうに微笑んだ。運転している僕の太腿に手をのせながら。
酔うとボディタッチが増えるというのも、飲みの場に行かせたくない理由の1つだ。
「きょうは······そうしろうさんがいるから、らいじょーぶ」
「おればええちゅう話やないねんぞ、全く」
僕と飲むとき以外は飲みすぎるなと口を酸っぱくしていつも言いきかせているからか、カフカはそんなふうに言ったのだろう。酔っていても言いつけは守ろうとしている様がかわいくて、文句を言ったはずがその語尾に笑みが混ざってしまった。
「ほら、家もう着くで」
そうこうしているうちに、我が家についたので車をとめた。もうここならば人目につくこともないだろうと思い、カフカを車からおろして抱き上げると当の本人はくふふと笑っている。
「おじさんなのに、おひめさま」
そんなことを呟きながらふらふらと横に揺れるので、暴れるなら落っことすでとわざとらしくよろけてみせる。するとカフカは謝りながら自分で歩くからと泣きべそかいている。
泣いたり笑ったり、酔っぱらいの相手は難しい。
「あほか、どこに大っ事な嫁さん落っことす旦那がおんねん······だから、もうカフカ泣かんでええよ」
カフカをそう宥めながら、廊下をわたってリビングへと行きソファにゆっくりと下ろした。そのままこてんとソファの上で寝転んだカフカの頭をひと撫でして、キッチンへと向かう。冷蔵庫から水を取り出し、すぐさままたリビングへと戻る。
「カフカ、寝る前に水飲んどき」
そう言って、ソファの上に寝転がっている彼の目の前にペットボトルを差し出すが、一向に受け取る気配がない。目線はこちらを向いているので、言われていることはわかっているはずだ。
「なんや、どうしてほしいんかちゃんと言わな分からんで」
すると、僕の服の袖を引きながら『のませて』と言ってきた。だから、僕はペットボトルの水を口移しで飲ませてやる。こくこくと嚥下していることを確認してから唇をはなした。飲みきれなくて口の端から垂れている水をカフカの唇をなぞるようにして拭ってやる。
そのまま手を引っ込めようとすると、その手を追うようにカフカの手が付いてきて、僕の唇を同じようにその指がなぞっていった。そして、そっとカフカ呟く。
『しないの?』か『したいな』か声が小さくて判断がつかなかったが、意味合いとしてはどちらでも同じなので問題ないだろう。
素面の時のカフカはこういうことはほぼ言わない。夜のお誘いは専ら僕の方からで、彼はただただ顔を赤くするだけ、僕を受け入れてされるがままだ。別にそれに対して不満があるというわけではなく、何でも1から10までしてあげたい派の僕としてはむしろ嬉しいくらいだったりする。
それがどういうわけかカフカは酔うといつもより積極的になって、自分から誘ってくる。これはこれで珍しいもん拝めたなぁと最初のうちは喜んでいたのだけれど。
「もうこの先の展開、よめてんでーカフカ」
これは所謂、既視感というやつだ。
カフカが飲み会に行く、酔ったカフカを迎えに行く、夜のお誘いを受ける。この1連の流れはもはや定型文のように、毎回と言っていいほど同じである。そして、最終的にどうなるかというとカフカが途中で必ず寝落ちするのだ。家で1度寝てしまったら、どんなに揺すっても起きない。そう、どんなにこちらが盛り上がっていようともだ。
もう何度もたどった道なので、今日こそは違えない。
かわいい嫁の貴重なお誘いを泣く泣くお断りして、おとなしく寝てもらうほかないのだ。そう思っているのに、思い通りにならないのが世の常というもの。
「いや、もう服脱がしにかかってるやん。お前こんなんテキパキしたこたとないやろ。酔うてるほうが手はやいって······どないなっとんねん」
カフカはくすくすと笑いながら、僕の手をひいてソファに座らせる。ズボンのバックルに手をかけてはずし、ファスナーを口で下ろしそのまま下着の上から舌を這わせはむはむと甘噛みする。
「宗四郎さん、俺これ舐めたい」
人のムスコをこれとか言うなやとつっこみをいれてはみたけれど、そこだけ解像度が高くなったみたいに妙に鮮明で。普段の彼からは想像つかないほどの妖艶さを纏っていた。それを直接浴びたせいか体温が急激にあがった気がする。
こんなにも自分は学習力がなかったのだろうかと自問自答しても、もう遅い。
「カフカ、お願いやから途中で寝らんとってや」
そんなお願いも虚しく、今日もまた同じ道を辿っていく。
たどたどしくて決して上手くはないが、懸命にご奉仕する様が愛らしくて。上手やで、ええ子やなと褒めるように優しくカフカの頭を撫でてやったのがいけなかったのだろう。
途中から全く動かなくなってしまったので、疲れたのだろうかと覗き込むと案の定寝てしまっている。
「僕の咥えたまま寝るなや·····こうなることは、最初からわかってたけどな! もう、どないすんねんコレ······」
窓から覗く夜空は無情にもきれいで。
力ない僕の声が静寂を纏った夜空にのまれ、虚しく消えていった。
終
