倶東国編
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09
月が高く煌々と光る中、兵士に連れていかれた朱雀の巫女から視線を外し秋風は心宿を見上げた。
月明かりに彼の金髪が輝く。
「秋風、お前は朱雀の者を探せ」
「はっ、唯の側に居させないようにか」
「ちょっ、二人とも少しは穏便に」
何やら険悪な秋風たちに、慌てて唯が割りはいる。
しかし彼らは「大丈夫だ」といい唯を下がらせた。
「ふっ、ムダな詮索をするな。唯さまは朱雀の巫女と話すのを望んでいる。それを邪魔させないためにだ」
「……」
「護衛ならば唯さまには鬼宿がいる、今のヤツは我らに歯向かいはしない」
鬼宿――。
あれから目覚めないが、身体に異常は見られなかった。
なんの薬が気になるが、彼の口調から唯に害を与える物ではなかったらしい。
「……これ以上唯に戯れ言を吹き込むなよ」
「戯れ言とは心外な。私は客観的に現実を言っているのみ」
「客観、ね。思惑が絡んだものを客観的とは言わないと私は思うぞ」
「ご託はいい。朱雀七星士たちは宮殿内にいる。見つけ次第捕らえろ。……場合によっては斬りすてろ」
どこか含みのある言い方に秋風の眉が僅かに上がる。
「斬り捨てるとは穏やかではないが……。ま、相手次第だな」
そう言うと秋風は唯の肩を軽く叩き、朱雀七星士たちを探すために歩き出した。
今心宿に逆らい強引に彼女の護衛につくのも考えた。だが、彼女の安全面を考えるのならば、敵国の人間が侵入しているのは放置しておけないのも事実だ。
青龍の加護があるこの国では、朱雀の巫女の力は弱く対して抵抗できないのは分かっている。
ならば、最大の懸念である朱雀の巫女の仲間を捕らえることが最重要という考えに至ったのだが、この隙を見て心宿が何か企てる可能性も視野に入れておく。
あの男の思惑に、言いようのない不快感がこみ上げてくる。唯と朱雀の巫女を引き合わせる意味も、鬼宿に薬を盛った意味も。なにもかも。
力も権力もある心宿の影響力は強大で、自分の力だけではどうしようもない。何一つ彼女のために動けない歯痒さに、唇を噛みしめる。
もし自分の思い違いでなければ、この思惑の内の一つであるのなら二人の関係が壊滅的な物になるだろう。朱雀の巫女はどうでもいいが、唯がこれ以上傷つかなければいいと思う。
ただそれを願うばかり。
朱雀七星士たちを探すために兵士たちが行き来し騒がしいな……と秋風は若干現実逃避に近い感覚で頭を押さえた。
「な、なんじゃ。いまオレを倒しても仲間がおるさかいムダやで……っ!」
「いや、私が気になってるのはその姿なんだが……。それはお前の趣味か?それとも仲間の?」
「どないしてこれが趣味に見えるんや!?」
「敵地の柱にくくりつけるとか、いたぶられるのが趣味じゃなきゃやらないだろ」
なんとなく入った広間に何故かいた人物を見下ろす。
太い柱にぐるぐる巻きにされたその人物は、さっきまで朱雀の巫女と共にいた内の一人だ。
たしか翼宿と心宿がいっていた。
「これは井宿が……っ」
「井宿?ああ、あの僧か。面白い仲間だな」
それにしても、朱雀七星士というのは美形ばかりだ。暗闇ではあまり判別がつかなかったが、こうして明るい所で見るとその顔の良さが分かる。
鬼宿はもちろんのこと、井宿や翼宿も趣の違う美男ばかりなのが気にくわない。
青龍七星士たちを思い浮かべ、比べるとなんだか虚しくさえある。
いや、美形がいないわけではないのだが、なぜか負けた気持ちになってしまうのだ。
(く…っ、なぜだ。私は七星士でも奴らの仲間でもないのに!)
八つ当たりとは分かっても秋風は翼宿を睨んだ。
それもこれも朱雀の巫女のせいだと、こちらも八つ当たりに近い気持ちで顔見知り程度の少女を思い浮かべ悪態をついた。
唯とは違った意味で朱雀の巫女を嫌う秋風だった。
初出2015/04/01
修正転載2023/11/04