倶東国編
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05
「朱雀七星士の『翼宿』は死んでたって。ねぇ、秋風さんは本当に死者を生き返させられると思う?」
密偵の報告にあったことを嘲笑いながら唯は秋風に聞く。
前にいる心宿をみれば口を挟む気はなさそうで、秋風はそっと瞼を伏せた。
「普通に考えればありえないな。だが決してないとは言えない。神に近い――もしくは神ならばできるだろうな」
「へぇ、秋風さんは神様を信じてるんだ。無宗教な考え方なのに」
「神を知っているからな」
「へぇ…って、それマジ!?」
ガタンと音をたて椅子から身を乗り出した唯に、秋風は瞼を伏せたまま頷いた。
「ああ、四神のさらに上に君臨する『龍神』をな。
あの力は人知を超えた奇跡の力だな。時空を超え、大気を正常にし、……死者を甦りさせる」
「甦りさせるって、もしかして見たことあるの?」
「…………死者は甦らせてはならない。あれは哀しい存在だから」
唯の疑問に秋風は是も否も言わず、だが是ととれる言葉を言うとそれ以上はこの話は言わないと口を引き結び唯越しに心宿を見た。
「お前は随分と面白い体験をしていたようだな」
「生きるためには何だってしたからな」
「ふん。ならこれからも足掻くことだな」
「……」
それは見過ごしてやると言いたいのだろうか。それとも興味がないということなのか。
いや、彼のことだから放置するから、自分を楽しませろということかもしれない。龍神の話は食い付きそうなものだが。
秋風は心宿の考えを読もうとしたが何も見えず諦めた。
「あのさ、悪いけど見つめ合うなら、あたしがいない所でやってくんない。……めっちゃ居心地悪い」
「見つめ合う?はっ!冗談。彼は趣味じゃない。それに好意ではなく興味からくる物言いだっただろう」
「世間じゃ、興味から好意に変わる愛もあるけど」
「それこそあり得ない。いいか、この話はこれで終わりだ」
反論も許さないと言葉を切ると、唯は苦笑いで立ち上がった。
もう彼女の中では秋風が心宿を憎からず想っていると思ったらしい。
しかし秋風はなにも言わず扉へ向かう。周りがどうだろうが自分がブレなければいいだけだ。
それがさらに誤解を招かせる要因だと知るよしもない秋風だった。
「死者を甦らせる神、か。……くだらん」
心宿の呟きは誰にも届かず静かに空気に溶けていく。
その瞳は凍えるような冷たさを湛えていた。
初出2015/03/22
修正転載2023/11/04