倶東国編
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04
頭が痛い。どうしてこうなった。
秋風の視線の先には鬼宿と唯の二人。鬼宿は憂い顔で、唯は笑顔で話している。
思い返せば、出会いからして予感があった。だがこうなった経緯は理解しがたい。
唯の希望で、彼女の親友である朱雀の巫女を見逃し、国に帰すことになった。
そのため、四神天地書を取り戻すことになり、唯の護衛として二人の元から離れてしまったことが悔やまれる。
唯と共に四神天地書を心宿から受け取り戻ると、朱雀の巫女と鬼宿のラブシーン。
オプションはキスと朱雀の巫女たる美朱の「あなたに会いに戻ってきたの」宣言。
おいおい。そういう事は自国に戻ってからやれよと呆れてみれば、唯は絶望と嫉妬に顔を歪ませていた。
これは疑いようもない。
朱雀の巫女と鬼宿は相思相愛。そして唯は鬼宿に片想いなのだ。
これだけなら唯に次の恋を進めるが、不味いことは「朱雀の巫女が唯のためではなく、男のために来た」ことだ。
助けに来てくれたと思っていた相手に、男が目的と言われれば、片恋に終止符は打てそうにないだろう。逆に奪い取る気で嫉妬と独占欲を募らせるだけだ。
結果、本当に奪ってしまったという訳だ。
朱雀の巫女と敵対する「青龍の巫女」になって。
深いため息をつきながら、壁に張り付き唯の警護をする。夜なのだ、日中より近くにいなければならない。
声は聞こえないが秋風の目には完全に唯の一方通行に見えた。
あんな優男のどこがいいのか秋風にはわからない。好みの問題だとしても、取り合うだけの価値があの男にあるのだろうか。
一途そうだがそれだけ。強そうではない。頭の回転も普通の様で、無難な会話をするのみだ。特技は金銭に絡んだ時にだけ発揮する瞬発力と計算力。
ただそれだけの男にしか見えない。それとも、唯たちにとってはそれが魅力的に映るのだろうか。恋とは不思議なものだ。
そこでふと、では自分の好みでいえば誰だろうと思った。倶東での知り合いは少ない。
まずは心宿。
青龍の巫女を守る青龍七星士である彼は、底が知れなく油断ならない相手にしかならず脚下。
他の七星士たちも掴み所がなく、恋の相手にはならない。それどころか、人間かも怪しい者が数人いるので考えるだけ無駄のようなものだ。
唯一好感が持てた少年も、双子の弟に威嚇され距離を縮めるまでにはいかなそうだ。
……というか、あのブラコンぶりで二人して婚期を逃しそうな気がする。
七星士以外に会う機会もあるが、巫女と七星士たちと懇意ということで遠巻きにされているのが現実だった。
かわりに女官たちとは割りとよく話す。彼女たちからよって来るからだ。
……なぜだ。
頭を振りかぶり足音がする方を見れば、女官が恭しくしく頭を下げた。
これは紅南国を探らせている心宿の密偵が戻ってきたか。
夜の逢瀬は終わりだ。
「唯、心宿が呼んでる」
「心宿?あ、そっか…、仕方ないよな。じゃあ、鬼宿……すぐに食事を用意させるからね」
「ああ、悪いな」
チラリとこちらを窺いながら鬼宿は頷いた。秋風はそれを無視し唯の後を追う。
鬼宿がどう思おうがどうでもいい。自分は唯を守るだけだ。
あの日、あの路地で泣きじゃくり怯えていた少女を。
ただそれだけだ。
初出2015/03/22
修正転載2023/11/04