北甲国編
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2
「やっぱり納得いかないよ……」
ぽつりと呟き唯はそのまま押し黙ってしまった。
彼女がここまで気落ちしているのは、尾宿のことだけではない。彼を使い老学者を嬲り殺したこともある。
それに加え、神座宝を得るため朱雀七星士たちをも利用しようとしていると知り、様々な事柄を昇華しきれずにいるのだ。
聞きかじっている彼女の生い立ちは、いたって平凡な日本の女子中学生だった。だからなのだろう、他人を利用し捨てるやり方に反発を感じずにはいられない。
日本だって利用し捨てる人間などごまんといるはずだ。ただ彼女の傍にそんな人間がいなかっただけである。
平凡な15歳の少女には、この世界はただ残酷なだけなのかもしれない。
それに彼女にはこんな世界は似合わない。ごく普通の女の子として笑っている方が似合っている。
秋風は唯の後ろに立ちながら、彼女の苦悩を思いそっと彼女の肩に手をのせた。
その数時間後、偵察部隊が朱雀七星士の一人が死んだことをが報告され、さらに数時間後、狼となった尾宿が神座宝を加え心宿の天幕に戻ってくるが心宿に殺されることなど、彼女たちは知らない事だった。
**
「……房宿の次はお前か、
朱雀組が西廊国に入る前に心宿と罠を仕掛けると言い、先に出ていった房宿に続き、今度は奇妙な格好と白塗りの顔をした氐宿が秋風の前に現われた。
まるで雑技団と言えそうな奇抜な服装と顔で近寄りがたい男ではあるが、青龍七星士の中でも術に関しては心宿に次ぐ力の持ち主なのだそうだ。
その氐宿は、不機嫌な秋風を見て実に楽し気に口を開いた。
「そう不貞腐れるものではありませんよ。今回の役目は貴女が適任なのですから」
「適任? 体のいい厄介払いだろう。アイツは私が邪魔らしいからな」
「いいえ、心宿は貴女を高く評価していますよ。評価しているからこそ、こうして大事な役目が与えられたのですから」
「大事ね……」
巫女を護る方がよっぽど大事な役目だと思うが。
氐宿の楽し気な表情に舌打ちし、秋風は「で?内容は?」と氐宿に問う。
心宿の底のしれない腹の内が気に喰わないが、ヤツの中の今の自分の立ち位置は七星士より低い。
恐らく一兵卒より上、七星士より下程度だ。有用性があるから生かしている程度でしかない。
氐宿もそれを知っているので、こうして揶揄ってくるのだからタチが悪い。
「私の幻術で心宿が朱雀の巫女を足止めしている間に、この先にある砂漠で術を仕掛けます。貴女はその幻術にハマった朱雀七星士たちを始末してもらうことになりました」
「砂漠に幻術? なら何もしなくても衰弱死するだろう」
「念には念を、ですよ。どうも朱雀七星士たちは強運の持ち主のようですからね」
まあ、確かに。こちらが罠を仕掛けては、なんとか逃げ延びている輩だ。一理ある。
納得はいかずとも、説得するには分かる理由に秋風は渋々頷いた。
心宿の計画は以下の通り。
氐宿の術で誘い出した仲間たちと巫女を引き離す。そして巫女を手籠めにし、巫女としての資格を無くす。巫女は処女でなければならないという理を崩すという。
同じ女としては、嫌悪する行為だが、今までの作戦では成功しないと分かり強硬手段にでたということだろう。
ついで、先行させた朱雀七星士たちを砂漠で術に嵌め衰弱させる。ただの幻術ではリアルさが足りないので、そこに生身の人間である秋風を加える。
もし仮に正気に戻ることがあれば、その場で処理することも許可されている。
「回りくどいな」
「全員を確実に仕留めるためですからね」
イヤそうに言う秋風に、氐宿は笑みを湛えて答えた。
2025/08/10