出向~女誠国編
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3
「お、お前……ッ!?」
「なるほど」
突然出てきた秋風を指さし、翼宿が驚愕と共に言葉を詰まらせる。対して秋風は騒動の中心人物に納得顔で頷いていた。
初めて会った時から騒がしいヤツだとは思っていたが、ここでも騒動を起こしているのめ見て、あらためて騒動の才能を有しているらしいと感心した。
「貴女は護衛の……。そこの男は危険でございます!さあ、こちらへ」
「いえ、腕に自信がありますので心配には及びません。しかしこれは一体どうしたというのでしょうか? 外の騒ぎに主が怯え見てくるよう指示を受けたのですが……」
ここは女の国で男はいないのではなかったのか?と聞けば、一日違いで流れ着いた者たちが男だったので捕えるため大騒ぎになってしまったと言う。
下っ端の兵士には朱雀七星士ということは伏せられているのだろう。責任者の隊長は別部隊を引き連れ、逆方向にいる。彼女たちは、彼らを殺せば国際問題に発展するとは思っていないようだった。
青龍七星士たちも抹殺を目論んでいるので人のことは言えないが、かの国は皇帝が国盗りに動いているので既に国際問題と化している。いまさら問題が起きようが、動じることはない。
それにこの国がどうなろうが、部外者の自分には関係ないと秋風は手にしていた刀を鞘から抜いた。
「助太刀する。主には安心してお休み願いたいのでね」
「そんな、お手を煩わせるわけには」
「他も騒がしい。まだ残党がいるんだろう? なら人手が多いにこしたことはないだろう」
「承知しました」
秋風の申し出に兵士たちの了解は渋々ながら了承した。これで横やりは入らない。
刀を翼宿に向け「大人しく捕まれ!」と周りを騙すため偽りの言葉を紡ぐ。
「抵抗しなければケガしなくてすむぞ」
「んなことできるわけないやろ!!」
「なら力ずくで捕らえる」
刀を振りかぶり翼宿に斬りかかる。ガキン!と硬質な音をたて鉄扇で防がれてしまった。軽く振り回していたので、それほど強度はないと思っていたが、想像より硬いらしい。
ならばと薙ぐように振り、攻撃を防いだところで足蹴りをいれる。こちらは剣術一本で生死の境目を潜り抜けて来たわけではないのだ。
敵将には卑怯と罵られたが、勝つためには手段など選んでいられなかった。自分の力量では、剣術のみで勝つことは難しいと分かっていた。師である兄にも筋は良いが、甘さが捨てきれないので剣筋ブレると注意されていたから尚更。
繰り出した足蹴りが翼宿のわき腹にはいり、ヤツは後ろに吹き飛ぶ。立ち上がる前に追撃したが、また防がれてしまった。ちっ!本当に固いな。
「防戦一方だな。反撃くらいしたらどうだ」
「やかましいわ! オレは女に手をあげる趣味はないんじゃ!」
「そりゃ崇高な思想で」
一般人相手なら称賛されるだろう。しかし今対峙しているのは一人の剣士。剣を持ち戦いに身を置く剣士の前で、女だから戦わないなど侮辱。
女であろうが戦う理由を持ち、死に物狂いで技術を身につけた者に言うこと言葉ではない。ゆえに女だからなどという言葉で全てを片づけるのは、秋風が最も嫌悪するものであり、嫌いな言葉である。
嫌悪をあらわに眉を寄せ、刀を大きく振りかぶった。――瞬間、秋風と翼宿との間にほどほど多いい石が落ちてきた。
ドゴン!と重い音と土煙が視界を塞ぐ。
「まったくもう! なにこんな所でもたついてんのよ!」
「ぬ、柳宿ォ!? おま、お前助けるんやったら、もうちっとマシなことせんかい!」
「だってぇ、彼女本気で斬る気でいたんだもの。怖いじゃない」
「ぶりっこすんな!」
少し低めの男とも女とも聞こえる声の人物と、翼宿の声が聞こえる。会話から七星士の仲間だと分かるが、
こうなったら見えなくとも斬るしかない。
秋風はそこに翼宿がいるであろう場所を目掛け、刀を振り下ろした。
「わぁぁああ!! か、間一髪やった……っ!」
「もたもたしてらんないわね。ほら早く逃げるわよ!」
「待て!!」
何かが走り去る音が聞こえる。制止をかけるが、土煙がおさまった場所にが石以外何もなかった。
取り逃がした。好機だったのにもかかわらずだ。ぐっと口を食み秋風は顔を歪め視線を鋭くさせる。
見えるのは西の城壁。房宿がいるそこで、奴らは合流するだろう。この屈辱はそこで晴らすべきだろう。
敵が逃げたことで騒ぎだす兵士たちの脇をすり抜け、秋風の足は西へと向かっていた。
結局は房宿と合流も、朱雀七星士たちとの戦いも出来ないまま、秋風は逃走用の道を抜ける羽目になるとは、この時には思いもしなかった。
初出2023/11/18