倶東国編
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02
日差しが入る窓辺の近くにある椅子に座り、唯は切な気に空を見上げていた。
その姿を視界の端にいれつつ、秋風は手持ちの刀の手入れに勤しんでいる。
二人の間には会話はないものの、包み込む空気は温かいものだ。
秋風は刀の手入れに触れながら、この2ヶ月間のことをなんとなく振り返ってみた。
あの出会いからあまり時を経たず――たぶん数分程度だろう――この国の将軍だという金髪の美丈夫に出会い、そのまま宮殿へ連れてこられた。
そこで言われたのは、ここは倶東国と言われる東に位置する国といこと。そして四神の青龍が国を守護しているということだった。
だいぶ大雑把で曖昧な説明だけで終わらせられたので、本当に漠然とした知識しか得られなかったが、所在地が分かっただけでも僥倖だろう。
倶東国以外にも3つの国があり、現在その内の一つ、南に位置する紅南国と争っている。目的は領地拡大といった所だろう。
別に何か感じるわけでもないが、漠然とした説明に四神が存在し、それぞれの国を各一神ずつ守護していると聞かされ僅かに眉がよった。
四神――。
北の玄武、西の白虎、南の朱雀、東の青龍。思い出すのはその言葉と8人の男達。
少しの間だけだが、その四神の守護を受けた8人の男達とつるんでいたことがあった。
一神を天地で割り計8人。そしてそれを束ねる「神子」という存在。
「神子」と書いて「みこ」と呼ぶ。書いて字のごとく神子とは「神の子」。神が守護する愛し子のことだ。
秋風はとある縁で一時期彼らと行動を共にしていた。その記憶を刺激されるキーワードが「四神」だった。
倶東国は東に位置する、守護は青龍。くしくも前の世界での相棒が守護を受けていた四神だ。
皮肉にもとれる運命に目が細まる。
刀身に映りこむ顔は自嘲で歪み醜かった。不意に外が騒がしくなり、気持ちを切り替えるつもりで刀を鞘に仕舞う。それと同時に扉が開いた。
「唯さま。将軍がお呼びでございます」
「将軍って、たしか心宿だっけ。わかった。でも秋風さんも一緒でいいよね」
「はい。秋風さまもご一緒にと言付かっておりますゆえ」
淡々と返す侍従の言葉に、秋風は脳裏に不敵に笑む金髪の美丈夫が浮かんだ。
あの男はいったい何を考えているのやら。ほの暗い何かを秘めた目をしたあの男は信用ならない。
知らない世界で途方にくれていた所を助けてくれた恩人だが、ただそれだけだ。
彼の駒になってやる気はさらさらないが、唯があの男を信用しつつある今、できるだけ唯の側にいて干渉させないようにしなければ。
あの男は唯を使い何かを企んでいる気がするのだから。
秋風は唯の視線に無言で頷き立ち上がった。
これが分岐点だと知るのは先の話。
初出2015/03/22
修正転載2023/11/04