出向~女誠国編
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潮風がまとわりつく。
朱雀の巫女に先を越されまいと、北甲国に向けて航行中だ。ただし――唯がであるが。
秋風と同行者のもう一人は、小舟に乗り彼女とは別行動で朱雀の足止めとして別行動中だ。その船内では秋風は口を引き結び、ムスッと顔を顰めていた。
出港の前に人事異動があり、唯の護衛の任から正式にはずされ、代わりに彼女の護衛には角宿がついたからだ。戻り次第また補佐として護衛することになっている。
補佐の話に反論した時、諦めたと思っていたというのに。まさかここで外されるとは思いもしなかった。
しかし、どんな思惑が心宿にあるのか知らないが、唯に危害を与えることはないだろう。彼女は青龍の巫女。青龍を召喚するまでは、大事な大事な存在のはず。
それに、角宿は唯に好意があるのだから、守りきることも想定内に入っているに違いない。
ただ分かっていようとも、納得などはできるはずもなく、そのことに苛立ちへそを曲げ現在不機嫌真っ最中。
乗船してからというもの、会話は「ああ」や「そうか」などと言った一言で終わるものばかり。
そんなピリピリした雰囲気に、同行者の房宿は呆れたと言わんばかりに大袈裟なため息をした。
「とっとと諦めて、気持ち切り替えたらどうだい」
「言われなくともそうしてる」
「ならその殺気をしまってくれないかい。これから一仕事あるというのに、朱雀の巫女たちに気づかれちまうだろ」
「気づかれても手出しできないだろう。海で天候変化と落雷にあえばな」
「あ、そ。じゃあたしの為に機嫌直しな。精神衛生上悪いしね」
房宿の言葉に従う訳ではないが、秋風は肩を竦め気配を薄くすると眼前に見える大陸を見据えた。
襲撃に動転してるであろう朱雀の者たちはどうでもいいが、やはり気分がのらない。
今の唯を心宿の近くにいさせることや、彼女に懸想している角宿のことが気がかりで、どうしても気がそぞろになってしまう。
「……まったく。もうすぐ、上陸するから着替えてきな」
「は?別にこのままでもいいだろう?」
「死にたいならそのままでもいいけどね。あそこは女だらけの国だから、見つかったら最後、命はないよ」
「女だらけの国?そんな国があるのか」
「代々女王が治めている国さ。男が手に入れば、種馬と愛玩に使われ、搾り取ったあとは殺される。
生まれた女は生かされ、男は労働と新たな種馬になるって国だよ。あんたのその成りは男と勘違いされそうだ」
すごい国があったものだ。女ばかりの国という新鮮さに驚きと興味をおぼえる。
秋風は先程までの不機嫌を和らげ、ふむ、とひと頷きした。
見下ろした自分の服装は、動きやすさ重視の男装だ。男に間違われる確率が非常に高いだろう。
だが完璧に男に見える訳ではない。胸をつぶして体形を誤魔化しているわけでも、顔を隠しているわけでもない。誤解さえとけば大丈夫な気もする。
ぶっちゃけ、秋風は着替えるのが面倒と思っていたりしていた。
女物ということは、動きにくい服装だろう。剣を得手としている自分には少々向かない。
そんな彼女の思考を見抜いてか、房宿は「ヒラヒラしてるのがイヤとか言わないでよ」と言った。
「あんたが宮廷に来たとき着ていた服、あれもヒラヒラしてたじゃないか」
「……確かに」
言われてみれば、男物を着ていたとはいえ、着物は袖や袴がヒラヒラした作りだ。着なれてしまっていたので、なんとも思わなかったな。
ついでに房宿に「面倒事を増やすな」と釘をさされ、秋風は渋々着替えることにした。
房宿の術は足止め程度のものだったので、きっと朱雀一行もその国に難破という形で流着するだろう。
女の国に、男ばかりの朱雀一行は足止めをくらう。
そこで始末してもらえるなら万々歳。もし無理でも、かなり足止めをすることになる。こちらが優位に立つわけだ。
きっとこの作戦を考えたのは心宿だ。えげつない作戦に、秋風は無意識に眉をひそめた。
初出2016/01/09
修正転載2023/11/11