倶東国編
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13
朱雀の巫女と鬼宿との仲をこじれさせ、共倒れを狙た心宿の計画は、鬼宿が正気を取り戻したことで破綻した。
とはいえ、それは共倒れしてくれれば万々歳といった所だったこともあり、影響のほどは皆無……とはいかなかった。
鬼宿に恋心を抱いていた唯を振り切り、朱雀の巫女の元へ戻ってしまったことにより、より一層朱雀の巫女へ執着してしまった。
そんな時、向こうに潜入していたらしい七星士の一人の気配が途絶えたという報告がもたらされた。
「……かける言葉が思い当たらないな」
双子の片割れである亢宿が死んだらしい。らしいというのは、まだ正確な情報が来ていないからだ。
この情源は亢宿の弟の角宿から得た。双子のなせる業なのか、存在を常に感じていたり、ときに痛覚を共有したりするらしい。
秋風は物陰から抱き合う唯と角宿の二人を見守りながら、何とはなしに呟く。
悲嘆にくれる双子の片割れ――角宿と慰めるように唯が抱き締めているその雰囲気は近寄ってはいけない神聖なものに見える。心から心配し慰めている唯を感じつつ、秋風は瞑目した。
優しい子だった。そしてどこか寂し気な瞳をした子。亢宿は青龍七星士の中では唯一まともだった。直情的な弟とは反対に思慮深く、よく他愛もない話をしては笑っていた。
――――優しすぎる子だった。
ふと気配が動くのを感じ、目を開ける。少し離れたところにいる心宿が眉をしかめ、僅かに二人から視線をはずし虚空を見つめ忌々しそうに何かを呟いたようだった。
(まさか角宿が羨ましいとか?……いやいや、あり得ない。まったく、全然、あり得ない)
考え得ることは、七星士の一人が欠けたことで青龍召喚が出来なくなったことが原因なのだろう。しかし、なぜそこで仲間が死んだことを悲しまないのだろうか。
仲間であった期間は短くとも、少なくとも言葉を交わしていた程度の交流はあった。
それにその結果を招いた最大の原因は、彼の能力と優しさに目をつけ潜入任務を与えた心宿自身
鬼宿に会いに来た巫女と、仲間のために戦った七星士たち。
例え巫女の独断行動だったとしても、信頼関係が良好でなけば巫女と仲間のために敵国に乗り込むなどという行動にはならなかったはずだ。
朱雀七星士と青龍七星士との根本的な違いはきっと、「絆」といわれる目に見えない不確かな結びつき。それが強固になっているかどうか。
それに関していえば、青龍側は皆無に等しいのだろう。本来巫女が自ら探し出さなければならない七星士を、心宿が探し出しかき集めた烏合の集が青龍七星士なのだから。
心宿は一体何がしたいのだろうか。巫女を手元に置き大事に囲っているが、それ以外は巫女を傷つけるような行動がしばしば見受けられる。
まるで疑心暗鬼になるように仕向けているような。
(そんなまさか、な……)
まるで何を考えているのか分からない顔の綺麗な不気味な男――それが心宿という男だと秋風は思っている。考えれば考えるだけ疲れてくる。軽く頭を振るい、心宿のことは思考から追い出すことにした。
ふと頭に関西弁の目付きが悪い男が浮かび、ピクリと片眉が動く。
何を考えているのか分からない心宿とは正反対の、考えていることが顔に出るほど分かりやすい男だった。
(なんでヤツが出てくる)
まったくもって理解できないが、それだけ印象が強かったということだろう。柱に括(くく)りつけられながら、虚勢を張ったのが強烈だっただけなのだ。
(はぁ、考えるだけムダムダ)
今はただ居なくなってしまった者を偲ぶこと。ただそれだけ。
秋風の耳に優しい笛の音ががどこからか聞こえてきたような気がした。
アレから一日がたちコツコツと硬質な音をたて、角宿と唯、秋風は青龍廟に向かっていた。
護衛役は自分がいると言い張ったものの、一人では不十分だと角宿を使いに寄越したのだ。
それに不満を持ちつつも、実質巫女の身の回りの責任者でもある心宿の命令には背けない。結局、渋々ながらも従うことにした。
だが早くも後悔しそうである。目の前の光景に口元をヒクつかせながら、極力表情を変えないよう気をつける。
(ツンデレ……。リアルツンデレがいる)
初対面で唯に対して反感を抱いていたと言うのに、彼女を目の前に顔を赤らめこの懐きよう。
あれか? 初めてあったとき冷たかったのに、抱き締めて慰めてくれてグッときたのか?
恥ずかしいほどに青春してるな。こっぱ恥ずかしいわ!とツッコミをいれたくなるほど、角宿は純情少年だったようだ。
赤くなりながら唯を気にしている角宿に対して、唯は涼しい顔であとをついている。
自分のことじゃないのに、悲しいくらい一方通行の様子に見ていられない気持ちになってくる。
しかし自分の周りには片想いが溢れてる気がするなと、秋風は現実逃避することにした。
初出2015/04/18
修正転載2023/11/11