倶東国編
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11
なんだコレは。
秋風は目の前に佇む心宿を見つめる。
どこか違和感が漂う相貌をじっくり観察するように見るが、違和感の正体が掴めず知らず知らず顔をしかめた。
「何をしている」
「観察だ」
「そ、そうか……」
「……」
どうしてそこでどもる。そしてなぜ朱雀の巫女が共にいる。
「心宿、唯はどうした。それになぜ朱雀の巫女がいる。
護衛には鬼宿がいると言っていたが、ヤツは目が覚めたのか?というか、ヤツは護衛などできたのか?」
あんなに唯に激昂し、朱雀の巫女の元に行こうとしていたヤツが。
あの薬で気持ちを改めたのだろうか。
いや言い方に問題があるか。この場合、操るといった方がいいのかもしれない。
実際は見ていないので憶測でしかないが、そうでなければ鬼宿が唯の護衛などならないだろう。
「せい……唯さまならば一人にして欲しいと命じられた。鬼宿に関しては――」
そこで心宿が言いよどんだ。まるで考えているかのように。どう言えば彼女が納得するかといった感じだ。
いつもならば冷静で高圧的に命令を下すと言うのに、まるで姿は心宿で中身が別人のような。言葉の端々からそれが窺えてくる。
「たまほめ……」
心宿のよどみの間を突くように朱雀の巫女から掠れた声で呟かれる。
ぎゅっと腕を掴み、何かに堪えるかのように唇をきつく噛み締めている姿は痛々しくもあるが、秋風とっては知ったことではなかった。
秋風はそれらをあえて無視し、スゥーっと刀を朱雀の巫女に向けて構えた。
「わかった。心宿この話は後だ。朱雀の巫女、お前には怨みはないが、私の仕事は唯の邪魔者を排除することだからな。お前はここで消えてもらおう」
「あたしは…」
「ちょーっとまちぃ!オレを忘れとるで!美朱は殺らせるかい!」
さっきまで柱に縛り付けられていたはずの翼宿が、自由の身で三人の間に割り込む。
「お前、どうやって抜け出した」
「なんや、知らん間に無くなってたで」
「なんだと…っ」
秋風がはっと目を開く。違和感のある心宿、いつの間にか自由になった翼宿。この答えは簡単だ。術者が侵入者の中にいたのだ。
そして考えられるのは一人。井宿という僧。一度心宿の結界を破ったことがあった。
力を封じたとはいっていたが、それほどな実力者なら小さい術などは扱えるだろう。
現に朱雀の巫女の機転で一度逃げおおせている。
(と言うことは、だ)
秋風は唐突に走り出し、素早く心宿に近ずく。
(なんか知らんが自失気味な朱雀の巫女は却下。ただ吠えていた翼宿もバカだと発覚。あとはこの心宿のみ!――もらった!)
滑り込むように懐に飛び込むと刀を下から上へ振り上げた。
ギィンと金属がぶつかる音が響く。
「ちっ、防がれたか」
「あ、危なかったのだぁ~。……あ、とっさに術を解いてしまったのだ」
「心宿は井宿だったんか!」
「むぅ、中々の名演技だったはずなのに見破られてしまったのだ。しかたないのだ、ここは一先ず逃げるのだ!」
言うのが先か行動が先か。
ほぼ同じタイミングで僧姿に戻った井宿が翼宿の襟首と、美朱の手を引いて走り出した。
そのさい翼宿が潰れた声をあげ、美朱は顔を歪めていたことに井宿は気づかなかったようで、実に素早く姿を消してしまった。
心宿が別人に変わる瞬間を見て固まった秋風が我に返ったときには、三人の姿はとうに見えなくなっていた。
「……術というのは何でもアリなのか」
記憶にある術は自然界の力を借り受けたものだ。
こちらに来て能力で術を行使するのを見てきたが、姿事態をかえる術を生で見たことはなかった。
無意識に唇が笑みの形をとる。その目はギラギラと輝き細められていく。まるで獲物に狙いを定めた獣のように。
「朱雀の巫女はどうでもいいが、七星士は興味深いな」
それはこの世界に来て初めて感じた高揚感。そして好奇心だった。
初出2015/04/04
修正転載2023/11/05