倶東国編
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10
「で、話を戻すがお前一人なのか?仲間は?」
「だ、ダレが言うか!」
「……お前は自分の立場を理解していないようだな」
するりと腰に下げていた刀を抜き、翼宿に突きつけた。
切っ先を眼前にもっていけば、翼宿は自身に向けられた刃に顔を強ばらせている。こころなし冷や汗も流しているようだ。
柱に括りつけられ身動きがとれないばかりか、心宿によって術も使えない――これはそもそも自由でなければ出来ない――ようになっているので焦っているのだろう。
「し、知るか……っ。うそです!強がっていただけですぅ!やから、そんなに近づけんでぇ!オレはただ騙されて縛られているだけや!」
「お前たちは仲間じゃなかったのか?騙し騙されて放置するか。はっ!まさかコレは罠か!?」
仲間一人を囮に奇襲をするつもりか。
慌てて周囲を見回す。外から兵たちの慌ただしさしかわからない。
全神経をもってしても、柱男以外の気配はなかった。
「……なにしてるんや?」
「……」
微妙に間を置いて話しかけてきた翼宿になにも言えない。
正直にいえば恥ずかしいの一言。
思わず翼宿から顔を背けてしまった。その頬に朱がさしているのに秋風は気づかない。
「今のは見なかったことにしてやる」
「……」
「せやから、これほどい」
「却下」
交換条件とでも言うつもりか翼宿の提案を一刀両断し、秋風はわざとらしく咳をした。
「ごほん。仲間がいないのはわかった。ならここで待ち構えていれば現れるな」
「ちょ……、待ち伏せちゅーのは卑怯やで!」
「ふん、何とでも言え。勝つためなら手段は選ばない」
そう、勝つためなら。でも『何に』勝つために手段は選ばないのだろう。
不意に出た疑問に秋風は振頭をりかぶる。
(決まっている。朱雀に、紅南国にだ。
……唯に仇なす存在は敵。彼女が妬み嫉みの個人的感情で動いているのは知ってる。分かってる)
分かっていてこちら側にいるのだ。
だがそれで彼らが『自分の敵』になったのかと問われれば否。
敵であるはずなのに、敵であるとは言えない。
その事に気づいた秋風は、なにか苦いものを飲み込んだように身の内が濁り渦巻くのを自覚した。
唯は大切だ。
彼女は凛としている風情だが、内面は脆く弱い。
妹のような存在なのだ。守ってやらなければ、いつか崩れてしまいそうな気がするのだ。
だから彼女の憂いを少しでも取り去りたい。
(唯の敵は朱雀の巫女。倶東国の敵は紅南国。では私の敵はなんだろうな)
視界の端に金色を見つけた秋風は、ただじっとそれを待つ。
気づいてしまったことで生じた疑問を持ちながら。
初出2015/04/04
修正転載2023/11/04