倶東国編
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01
ゆらゆらと青い光が揺らめく。蛍のように儚い光をそっと手で包めば、それは雪のように消え失せた。
「……まぼろし?」
小さな呟きは遠くから聞こえる喧騒に消され、発した本人にしか聞こえない。
その人物はじっと己の手を見つめ、やがて周囲に目を向けた。
土壁が並んだら細い道。鋪装されていない土煙がたつその道の先。日の当たる大通りが見える。
さらに行き交う人を観察し、深々と息を吐き出した。
「なんで中華風なんだよ。平安末期から中国とか、なんの嫌がらせだ【龍神】」
お世話になっている一族がやっと幸せを手にし、これから彼らを絶対に守りぬこうと誓ったばかりだったのに。
荷造りくりも終わり出航するばかりだったために、今は簡素な服と一振りの刀しか持っていない。とりあえず、状況を把握することから始めなければ。
2回目の異世界移動にかの人物は慣れたものと歩き出した。
「やだ……っ!触んないで!美朱…助けて!美朱ぁ!」
「うるせぇ!大人しくしろ!」
「――――大人しくするのはお前だ」
チャキリと硬質な音が男の耳元で鳴った。振り向けば白銀の刃が己の顔を映し出ている。
さらに数ミリ動かせば確実に首が飛ぶ。本能的な恐怖に男の動きが止まり、額から汗が流れ落ちてきた。
仲間が状況を覆してくれれば勝ち目はあると目だけを動かせば、とうの仲間たちは白目をむいて気絶していた。
ヒクリと頬がきひつる。こうなれば捨て身で反撃するしかない。……と思った瞬間、男の意識は途絶えた。
「ひ……っ」
「大丈夫、峰打ちだ。それより頬が腫れてるな。すまない、もう少し早く助けていれば」
「お、おんなの人……?」
「ああ。頬以外は怪我はないな」
「……っ」
「もう大丈夫。だからガマンしなくていいんだ」
その言葉をきっかけに、男に乱暴されかかっていた少女は泣き始めてしまった。
少女の細い体を抱き締め、トントンと優しく背中を叩く。
それが少女にはガマンすることはないと言っているように思え、ますます少女は泣き出してしまった。
「まいったなぁ…」
男達に襲われているのを黙って見ていられなかったから助けただけなのに、すがられ号泣するされるほどとは。
でも確かに襲われるのは怖い。身をもって知っているから尚更だ。
女はゆっくりと少女の短い髪を撫でながら、苦く笑んだ。
それにしても、この少女の服装はこの地に合わない。
なんで一人だけ制服なのか。そもそもなんでこんな所にいるのか。
こんな辺鄙な所にいるようなお嬢さんには見えない。
疑問は尽きないが、今は彼女が落ち着くのを待とう。
それが本郷唯と秋風の出会いだった。
初出2015/03/22
修正転載2023/11/04