18話
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「……―――!……浅葱!」
「みあか…?」
「よかったぁー!何回呼んでも起きなかったから死んじゃったんだと思ったよぉ~!ふがっ!?」
芋虫の如くムクムクと動きながら近寄ってきた美朱を、反射的に肩で押さえつけ周りを見渡す。
どこかの建物のようだ。村などの簡単な建物ではなく、どこか頑丈そうな部屋から権力者の屋敷のように見える。
しかし、何も置いていないことから、権力者の屋敷ではないと見当をつける。自分たちが襲われたことからみて、賊的な輩の根城だろう。
なんて厄介な所に運ばれてしまったのだろう
厄介な二度目の知らない場所に思わずため息を吐き出し、拘束されている手足に再度ため息をついた。
「美朱、スカートなんだからそんな動きしないの。見えちゃうでしょ?」
「はわっ!」
「……反応遅い。柳宿、星宿様も無事でよかったです」
「気を失っていただけだからね。それよりアンタの方が心配よ。
美朱も言ってたけど、呼んでも全然反応がなかったから血の気が引いちゃったじゃないの!」
「しかしみんな無事でよかった。気絶させられただけですんだのが幸いだったな。う…っ」
四人とも見知らぬ部屋で手足を縛られているらしく、自由の利かない体で上体を起こした星宿が息をつまらせた。
敵の罠と思われるあの針板の仕掛けで傷をうけてしまったらしい。見える範囲で確認したが、キズの手当てもされていないようで、服に血が付着している。
血の量からあまり深手ではなさそうだが、利き腕である右を負傷しているので、あまり動かさない方がいいだろう。
「星宿様、あまり動かさない方が。せめて止血できればいいんですが、縛られてる状態ではムリですし……。腕の他に傷はありますか?」
「いや腕以外にはないから大丈夫だ」
浅葱を安心させるように微笑みを浮かべた星宿は、彼女の後ろですまなそうに眉を下げた美朱と視線が合い目を反らす。
二人から漂う居たたまれない空気に、柳宿が話を反らすように浅葱に声をかけた。
「ね、ねぇ浅葱。聞きそびれたけど、なんであの時モノを投げたりしたのかしら?」
「あの時?」
「ほ、ほら小屋で襲われた時よ!」
「……私、そんなことしたんですか?」
「は?」
コテンと首を傾げる浅葱に、柳宿は「あんなに暴れてたじゃないの」呆れ顔で浅葱を見やり再度「え?」と彼の口から声がこぼれた。
どうやら暴れた本人にその自覚はなかったらしく、そうなの?とでも言いたげに妹へ振り向いた。
「あはは……。説明いる?」
「そうね。いるわ」
「そうだな」
別に説明しなくても問題ないんだけどな。などと言いながら、美朱は苦笑いしつつ「年に一回か二回キレることがあるの」と言った。
「あら、そうだったかしら?」
「そうなの!もう!浅葱はキレた時のこと覚えてないんだもん!しかもいつキレるか分からないから、皆驚いてよけい怖がるんだよ!」
「そうなの?」
「そうなの!」
美朱の記憶では幼稚園の頃に一度、イジワルな男の子にお気に入りの絵本を奪われたことが初めてキレた時だったと思う。
初めは意に返さず別の絵本を読み始めた浅葱だったが、その男の子はまた奪ってしまい、浅葱はまた別の本をと言うことが繰り返され、最後はキレた浅葱が男の子に向かってかなり強烈なビンタを繰り出していた。
当然男の子は大泣き。騒ぎを聞きつけた保育士たちが慌てて宥めつつお互い事情を聞き、ビンタした浅葱も悪いが、何度も絵本を奪う男の子も悪かったと喧嘩両成敗ということになっていたはずだ。
当時はまだ離婚もしていなかった両親が、事情はともかく暴力を振るってしまったことは事実だからと、相手の親に謝っていたのを子供心に納得いかなかったので覚えていた。
今考えれば、あれは好きな子をいじめてしまうという行動だったのだろう。
ただ、その行為により彼は浅葱に嫌われ、その彼も浅葱に怯えるという結果になってしまったが。
そういうことが、年に一回から二回発生し、当の本人はまったく覚えていないということが度々発生した。
その度に、相手から怖がられてしまうという、なんとも不憫な目にあうたび、浅葱自身も知らないうちに相手を傷つけてしまうと、積極的に人と関わろうとしなくなってしまった。
だからこうして身内以外で仲良くなっていることが美朱にとっても、浅葱にとっても幸運以外の何物でもないのだ。
ともあれ、そういった理由により浅葱が突然キレることが分かり、星宿と柳宿は呆気にとられつつも何となくだが理解した。
浅葱を怒る美朱といういつもと逆な構図に、柳宿と星宿はお互いに目を合わせ苦笑しあう。
手足を縛られてなければ微笑ましい光景だが、しかしあいにく窮地に陥っている今手放しでは笑えない状況。
これをなんとかしなければならず、「二人ともいい加減になさい」という柳宿の一喝でなんとか収まった。