18話
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今、柳宿と美朱と浅葱の三人は農村部の食事処にいた。
あれから一日が過ぎ、悲しみや戸惑いはあるものの、それで立ち止まれないと己を奮起させた美朱に付き合い残りの七星士を探しに来ている。
途中までは井宿とも一緒に出てきたのだが、気がつけば姿が消えてしまったので、また単独行動に出たのだろう井宿のことは放置することにし、休憩と情報収集がてらこうして食事をすることになったが。
「おじさーん、メニューないですかぁー?んー、じゃあお金いっぱい貰ったしありったけの料理ください!」
「美朱、無駄遣い禁止」
美朱の威勢のいい声に浅葱がたしなめる。
まるで鬼宿のことなどなかったかのように元気に振る舞う美朱と、いつものように呆れを滲ませながら淡々と妹に声をかける浅葱の様子に、柳宿は軽く息を吐き出した。
「美朱、ムリに明るくしなくていーわよ!鬼宿が気になるんでしょ?」
「ああ!それはね、もういいの!ねぇそんなことより美味しいの沢山でるといいよね!」
「そんな事って、あんた…っ」
―――バン!
鬼宿の事をそんなことと言い切った美朱に柳宿が反論しようとテーブルを叩く。
テーブルは見事に真っ二つに割れ、柳宿は誤魔化すようにテーブルを直し座った。
なかったことにしたいようだが、それはムリというもの。真ん中から折れひしゃげたテーブルは最早意味をなさないガラクタとなり果ててしまっている。
おほほなどと誤魔化し笑いで取り繕おうとする柳宿に、浅葱は「いい加減力加減間違えないでくださいね」とチクリと刺し、店の主人に場所の移動を願い出ていた。
主人も呆気に取られながら怒りだしそうな様子だったが、そこは手持ちのお金をちょっと握らせることで黙らせる。これは決して袖の下ではない。正当な弁償だ。
そのかいもあって、三人は別の席へ移動することができた。ただし、何やら近くに座っている男たちの視線がイヤな気になるなと浅葱は僅かに体を震わせた。
「と、ともかく、鬼宿なしで平気なの?」
「だって……いっちゃったものは仕方ないじゃない!」
「ま、あたしの口出すこっちゃないけど……」
美朱の言う通りだが、どこか納得のいかない柳宿は、自分だけ熱くなっている気がして目を反らした。
こんなに心配してるのに、いたって普通に過ごす美朱を見ているとなんだか滑稽だ。
浅葱は浅葱で口出しせず美朱を見守ることにしているらしく、自分達の会話に加わる素振りもなかった。
その浅葱は、美朱が盛大に注文した料理の数々が運び込まれてくるのを見て頬をひきつらせていた。
星宿から旅金として渡された金を本当にここだけで使いきるつもりかと、ジト目で料理皿を見つめる。
やっぱりこれからは自分が財布の紐を握ろう。美朱に持たせたらまた食べ物地獄に陥ってしまう。
そう固く心に近い、近くにあった皿に箸をつけようとしたが。
「ねぇいらないの?ならあたしが貰うね!」
「え?ちょっと!?」
なかなか箸を進めない浅葱の皿をも食べ始めた美朱に、浅葱は唖然とする。
自分の料理まで奪うとは、鬼宿がいなくなって相当堪えているらしい。
それを食欲で誤魔化すのはいただけないと、奪え還すため手を伸ばした時、柳宿の鋭い声が響いた。
「アンタたち!!食べちゃだめよ!!」
「遅いです。柳宿の分も美朱の胃袋に収まりました……」
「そうじゃないわ……よっ!ちょっと美朱!?」
残念そうに首を振る浅葱にツッコミを入れた柳宿は、お腹を押さえ目の前で倒れこんだ美朱に駆け寄ろうと腰を浮かす。
慌てる柳宿に浅葱は淡々と「食べすぎです」と答え。恨みがましい目で美朱を見下ろしている。
いつものこととはいえ、おいしそうだった料理を取り上げられてしまったのだ。
しかも倒れた拍子に取り上げられた料理は地に落とされてしまっている。
まだ一口すら食べていない浅葱にとって、食べ物の恨みでちょっと周りが見えなくなってしまっていた。
腹を抱え蹲る美朱と、恨みがましい目で見下ろす浅葱。
アンタたちはどこまでマイペースなのよ!!と叫ぼうとした柳宿は、不意に隣の男たちの様子がおかしいことに気がついた。
彼女たちの背後から男たちが歩み寄ってくるのが見え、柳宿はハッと声を荒らげる。
「二人とも後ろ……っ!?」
客に扮していた二人組の男たちに気を取られ、柳宿は自身の背後からも斧が振り下ろされるのに気づくのに遅れてしまう。
振り下ろされた斧はかろうじて空を切り、柳宿が座っていた椅子を破壊した。
「うげっ!?」
斧で砕け散る音に振り向き、バラバラにされた椅子を目にし、呻く柳宿に再び斧が振り下ろされた。
それを白羽取りで受け止め持ち前の怪力で刃を折ると、柳宿は男の腹に蹴りを一発入れ急ぎ双子に近寄ろうとした。
「美朱!浅葱!逃げなさい!コイツら山賊の手下だわ!! 浅葱!?あぶな……ッ!!」
柳宿の叫びに美朱と浅葱はぴくりとも反応しなし。美朱は腹を押さえ蹲り、浅葱は俯き立ちでこちらも動く素振りすら見せることはなかった。
二人……いや美朱は食べ過ぎだから浅葱だけか。
彼女はいったいどうしたのかと、さらに焦る柳宿は、店の主人と隣客以外からも続々と立ち上がった男たちによって、それどころではなくなってしまった。
周りにいた男たちの仲間が一斉に襲いかかり、美朱と浅葱に刃物を振りかざす。
間に合え!と近寄ろうとした柳宿が見たのは、ゆっくりと顔を上げ冷たい目で山賊を見据える浅葱。
彼女はテーブルに並べられてある空の器をおもむろに取ると、それを何の迷いもなく山賊の一人に向け放つ。皿は山賊の顔にぶつかり派手に割れた。
これで一人は無効化したがまだ仲間がいる。一瞬呆気にとられた柳宿は、まだ残っている敵がいることを思いだし、浅葱を庇おうと腕を伸ばした。
「浅葱!」
「……うるさい」
ひどく低く唸るような声に、伸ばしかけた柳宿の手が震える。
常にあまり抑揚のない話し方をする浅葱とは思えない、不機嫌を隠しもしないそれに戸惑いが増す。
「……お腹すいてたのに美朱に横取りされるし、襲われるし、鬼宿がいなくて美朱ウザいし」
「浅葱、ひどい…」
「井宿はトンズラするし」
「ちょっと!?浅葱どうしたのよ!?」
ブツブツと呟き始めた浅葱に柳宿が叫ぶ。浅葱はそれに構うことなく、他の食器も投げつけ始めた。
極めつけは、食器で倒せなかった山賊の一人を、見事な一本背負いで地に投げ飛ばしたことだ。