17話
夢小説設定
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襲撃のあと、妹が不安がるからと部屋に残ろうとした浅葱を、半ば引き摺るように連れ出したのは確かに自分だ。
恋人同士の二人がいる中に居座るなんて居たたまれなくなるだけだと説得し、分かったのかないのか浅葱は曖昧な返事を返してきた。
どうせまた同じベッドに寝ようとしていたんだろうと、呆れ半分で連れ出し自室に送り届ける途中、彼女に覇気がないのに気がついた。
いつも通りに見えるが何処と無く違和感のようなものを感じたのだ。
そこで浅葱に聞いていた話を思い出した。親友と妹の間に走った亀裂。そしてその原因。
あの侵入者が倶東の人間であるのは間違いない。
ならば鬼宿を差し出せと言ってきたのは、彼女の親友の確率が高かった。
(まったく。辛いなら辛いって言えばいいに……)
美朱の部屋に残ろうとしたのは美朱が心配だというわけではないということか。
いや、心配はしているがそれ以上に、不安と恐怖を感じて安心する場所に居たかったんだろう。無意識の行動で、彼女自身は自覚はしていないようだったけれども。
さみしがり屋でトラブルメーカーな美朱に隠れてしまい、浅葱の感情の起伏まで誰にも知られなかった。
だから二人でいるときは浅葱が美朱を守っているように見えるのだ。
本当は浅葱が誰にも知られずこっそりと守られているのに。
「あ~思い出したわ…」
あの後、仕方ないと自室に引き入れ互いに抱き合いながら寝てしまったのだ。
あんな心細そうな様子を見てしまっては一人にするのも気が引けたことも一因だったりする。
「不安なら不安だといいなさい。黙って堪えてたらあんたが壊れてしまうわよ」
「……」
「いい?浅葱」
コクリと無言で頷く浅葱にため息を落とし身体を起こす。
寝巻きではなく普段着で寝てしまったのでお気に入りの服がシワだらけになっていた。
風呂にも入ってなかったことも思い出し、どんよりと肩を落とす。
美容に関して妥協しない柳宿にとって一大事件。1日入らなかっただけでもショックが大きい。
「…………後でお湯を持ってきて貰いましょう」
「ええと、よく分かりませんけど、お陰さまで昨日はよく眠れました。ありがとうございます」
「そう、それはよかったわ。とりあえず着替えて美朱の様子でも見てきましょうか」
柳宿の言葉に頷き、浅葱もいそいそと起き上がる。
着崩れした服を直そうと手をかけたが、襟元に触れた瞬間硬質なものにあたり浅葱はコテンと首を傾げた。
指で触れてみると滑らかな石を触っている感じだ。いつの間に鎖骨の間にこんなモノがついたのか。
「ほら部屋に送るから早くしなさい。あら?どうしたの?」
「え、あの…鎖骨辺りに違和感が…」
戸惑いながら襟元を寛がせて柳宿に見せる。
浅葱の首を見た柳宿は目を丸くし、「なによ…」と声を詰まらせる。
親指の爪くらいの朱色の石が彼女の鎖骨の間に埋め込んである。僅かに透き通っている所をみると宝石のようにも思えた。
「あんたこんな石ついてたかしら?」
「あったら今こんなに驚いてません!」
「それもそうね。なら何かあんたの身に起きたのね。心当たりある?」
「心当たりと言われても……」
「まさか青龍の……って事はないわよね」
「ありません」
それは太極山で確かめました。と言い切った浅葱はそこで言葉を区切る。
何かが引っ掛かり単語をだけで考えてみることにした。太極山、石、太ー君……制御。
「あ!」
「思い出したの?」
「はい。太ー君と別れたとき、力を制御するモノを授けるって」
「砂かけババアもとい、太ー君が?」
「心宿に無理やりこじ開けれた穴を塞ぐことは出来ないから、代わりに制御するものをつけると言われてたんです。でもこれがソレ?」
指で石をなぞる。滑らかな曲線を描きキュと手を握りしめた。
痛みや違和感などまったく感じなかったから気付かなかった。
心宿と太ー君だけが知っている『形代』。その力を制御する石。
じわじわと自分の中で何かが変わりつつあるのをまざまざと見せつけられたようで、浅葱の背に言い知れない恐怖が立つ。
「浅葱、太ー君のお墨付きなら心配ないわ。なんてったって天帝様なんですもの。きっとアンタの身を守るためにくれたのよ」
恐がる浅葱を安心させようと彼女の肩を叩き柳宿は笑う。
その顔を泣きそうな目で見ていた浅葱は、恐怖が一瞬にして消え去ってしまったことに驚き言葉を詰まらせた。
「あら?どうしたの?」
「柳宿は凄いです 」
「なによそれ」
「凄いです」
微笑みだけで不安を払ってくれた。今だけではない、ちょっとした事があるたび自分を救ってくれる。
その事に今更気付き浅葱は自分を恥じるように俯く。
不思議そうに見てくる柳宿の視線から逃れるように手早く身支度を整えた浅葱は「なんでもありません」と小さく頭を振った。
「私も柳宿を見習って真っ直ぐ前を見なくちゃ」
ウダウダ考えても仕方ない。
浅葱の言葉は小さすぎて柳宿の耳には届かなかったが、柳宿は「元気が出たようね」と微笑んだ。