16話
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「…浅葱っ、お前大丈夫か…!」
美朱の部屋の前でうろうろしていた鬼宿は、浅葱を見ると心配そうに駆け寄ってきた。
「ごめんなさい、鬼宿。心配をおかけしました。私は大丈夫です」
「そうか」
「はい」
こくりと頷いた浅葱に鬼宿は、複雑そうな顔をして彼女の頭をくしゃくしゃに撫でる。
感情があまりでない浅葱が、精一杯の強がりをしているのが分かってしまったのだ。
少しは頼ってくれてもいいだろうに、こんなとこは似ている双子だと少し寂しかった。
されるがまま撫でられていた浅葱の前で、ゆっくり扉が開かれ中から笑顔の美朱が出てきた。
「……ごめんね、心配かけて。でも、もう大丈夫!紅南国へ帰ろう!」
「みあ…」
「美朱。大丈夫、私も同じよ。現実を受け入れ、先に進むことにしたのね」
「浅葱………うんっ」
両腕を広げ抱擁しようとした鬼宿の横を抜け、浅葱が美朱を抱き締めた。
美朱は僅かに眉を下げ、ギュとすがり付くように抱き返す。
行き場のない腕を広げていた鬼宿は、呆けたように頭を掻き、脳内に?を浮かべ二人を呆然と見つめた。
「ふむ、行くのか」
「はい!お世話になりました!」
にっこりと笑い敬礼までしてみせた美朱に、太一君は嘆息すると懐から水晶を取り出し彼女の手の上に乗せた。
「四神天地書は倶東に置いて来てしまったのじゃろ。手掛かりもなしに七星士を探しだすのは困難じゃ。コレを持っていけ」
「これは?」
「近くに七星士がおるときその水晶から字が浮かび上がる。それを頼りに探すんじゃな」
「げ…っヒントってこれだけなの!?」
「げっ、ではない!水晶を貰えるだけ有りがたいと思え!大事な四神天地書をなくしおってっ」
「……ご、ごめんなさい」
肩を竦めしおらしくなった美朱に太一君は一瞥すると、隣にいた浅葱に視線を落とす。
何かを言おうと口を開きかけたが、太一君はそれを止め僅かに目を細めると浅葱の胸元に手を翳した。
「た、太一君?」
「『形代』とは巫女の依代じゃ」
「え……?」
囁かれるように言われた言葉に浅葱は目を瞬かせた。
「……心宿に抉じ開けられた穴を埋めることはできぬのでな、代わりにじゃが制御するモノをそなたに授けるぞ」
そういうと翳した手が胸元に触れた。
「た、太一君っ!」
美朱の驚く声がするが、浅葱はされるがままだ。
太一君に触れられた所が熱い。
僅か数秒の間のことに美朱たちは呆然としていたが、浅葱は太一君に触れられた所に手を持っていった。
コリ、と硬質なモノがついている。
訳がわからず太一君を見上げた浅葱はコテンと頭を傾げた。
「これで無闇に巫女の全てを背負うことはないはずじゃ」
今はまだ何も言えないと言われ、それ以上何も言えなかった。
結局、謎が残ったまま浅葱たちは太極山を後にした。
※
「ただいま…星宿」
「星宿様、ご迷惑をおかけしました」
「美朱……!浅葱も無事かっ」
宮殿の中を歩きすまなそうに笑った美朱に、星宿は駆け寄り力強く抱きしめる。
美朱は困ったように笑い、井宿を星宿に紹介し始めた。
それを静かに見ていた浅葱は柳宿がどこにいないことに気がつく。
もう夜更け近くだから寝てしまっているのかもしれない。チクン、と何故か痛む胸を押さえ浅葱は目を細める。
会いたい。美朱のように抱き締めて欲しい。
じくじくとする胸の痛みに目を伏せると、奥から誰かが駆け足で近づいてくるのが聞こえた。
「美朱!浅葱!」
「柳宿……?」
「あんたなんて顔してるのっ」
耳に馴染んだハスキーな声が自分の名を呼ぶ。
反射的に顔を上げた浅葱の目に飛び込んできたのは、泣きそうな顔で走ってくる柳宿だった。
「……柳宿っ!!」
会いたかった。寂しかった。苦しかった。
次々と押し寄せてくる感情の波に、浅葱の目から涙がこぼれ落ちる。
周囲が驚く中、浅葱は顔をくしゃくしゃにしながら柳宿の胸に飛び込んだ。ギュと柳宿の服を掴み、顔を押しつける。
尋常ではない浅葱の様子に柳宿は目を見開いたが、彼は優しく笑むと何も言わず胸の中で嗚咽をもらす彼女を優しく抱き締めそっと頭を撫でてやった。
「………あいつ、やっぱり無理してたんじゃねぇか」
「のだ。柳宿の前だと素直になるのだ。よかったのだ」
浅葱が心配だった鬼宿と井宿はほっと身体の力を抜く。
泣くまい、心配をかけまいと虚勢を張っていた彼女の傍に、感情を出せる存在がいることに安心した。
柳宿を見れば慈しむ瞳で浅葱を見ている。彼にとっても彼女はかけがえのない存在なのだろう。
どんな感情でお互いを抱き締めているのか測れないが、抱き締めあっている二人を周囲は温かく見守っていた。