15話
夢小説設定
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先を行く唯は、どう行けば皇帝に辿り着けるか知っているらしい。
それがここに馴染んでいた証拠のようで、後ろを走る浅葱は僅かに悲し気に顔を歪めていた。
幸い誰にも会うことなく目的の場所についたらしい。唯は浅葱を柱の影に隠れるよう指示し、大丈夫だと頷いた。
それは本当に大丈夫なのだろうか。声からして複数人。うち1人はあの金髪将校のようだ。あのどこか冷たく、得体のしれない男だ彼女がどう扱われるか。
「あんたはここで待ってて」
「でも大丈夫なの?」
「大丈夫。なんとかしてみせるからさ」
「………わかったわ」
渋々頷いた浅葱に唯はじゃあ行ってくると、兵士に指示を飛ばしている男の前に姿を現した。
「唯様!どこに行ってらしたのだ!朱雀の巫女と行動を共にするのは感心しませんな」
「あたしは青龍の巫女じゃない!その話はとっくに断った!美朱たちは友達だ!あたしのためにここまで来てくれた!四神天地書を返して!あたしはあいつらと紅南国へ行く!」
「唯……」
唯の声は反響し浅葱の耳にも入ってくる。
あの心配はいらなかったのかもしれない。きっと美朱たちの関係を知っても彼女なら大丈夫だろう。
傷つきはするかもしれない。でもきっと笑って「よかったね」と言ってくれるはず。
胸を撫で下ろした浅葱は金髪の男が不意に唯に近づいたのを見て、僅かに身を乗り出した。
何か話をしているようだがここからでは聞こえない。
唯に危害を加えているようには見えないし、一応様子見に留めて置かなければ。金髪の男の囁きに唯の身体が一瞬だけ揺れた。
(何を言われたのかしら?)
この位置からでは二人の姿が見えるだけだ。
心配そうに見つめる浅葱は、二人が離れたことに詰めていた息を吐き出し肩の力を抜いた。
唯が不意に駆け出した。その腕の中には四神天地書らしきものが抱えられている。無事に取り戻したらしいが、彼女は一体何に驚いたのだろうか。
「よかった、ゆ……い…?」
「なにもなくてよかった」と言おうとした浅葱の横を駆け抜け、唯は足早に去っていく。
その尋常ではない様子に思わず柱の影から身体を出してしまった。
「……これはこれは、部屋で休んでおいでではなかったのですかな?」
「迎えが来たので帰ろうかと思いまして。探し人も見つかりましたから」
見つかってしまったのなら仕方ない。浅葱は腹をくくり、ゆっくりと振り向いた。
金髪の男がはっきりと視界に入る。冑でよく見えなかった金色の髪に青い瞳が光に晒され、綺麗だと純粋に見惚れてしまった。
「そうですか……残念だ」
「残念?」
「残念以外何があるというのだ、『形代の娘』」
口調が変わり青い瞳が冷たく光る。何を言われたのか理解できず、浅葱は男をから視線を外し一歩後退する。
「言っている意味がわかりません。要はそれだけですか?すみません、唯が心配なのでこれで失礼します」
「なるほど、自身の存在理由を知らぬとみえる」
「だから、何を言って………っ!」
訳の分からない事ばかり並べ立てる男に、浅葱は怒鳴り付けようと勇気を振り絞り一歩踏み出す。
しかし、浅葱よりも早く男の方が近づき彼女の細い腕を掴んできた。
(怖い………っ)
綺麗な微笑の奥にある冷たい瞳に居竦められ、身体が動かない。
本能的に危険だと察知したが、身体がいうことを利かず浅葱は身体を震わせた。
「己の役割を知らぬとは哀れな娘だな。いや伝承にも記されていない存在故にか。
朱雀の巫女と共にいたと言うことは、既に『形代』としての機能を得ているということだな。
フッ、面白い。我が一族の口伝にしか存在せぬ『形代』の役割……確かめさせてもらおう」
「な、何をする気ですか…っ。つぁ……っ!」
男の尋常ではない雰囲気に一歩後退した浅葱は、笑みを深くした男に腹を強か殴られ意識をなくしてしまった。
「『青龍の形代』にするつもりだったが、まあいい。伝承に埋もれた『形代』。さて、どのような役に立つ存在か試させてもらうぞ」
そう言うと、男は喉を震わせ浅葱を抱えて『巫女たち』がいるであろう『青龍廟』へと歩み出した。