15話
夢小説設定
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――――――
石造りの関所を見上げ、紅南国と負けず劣らずの立派さに二人は思わず感嘆の吐息をした。
「ここが倶東国か…立派だなぁ」
「2日かかったけど、なんとか辿り着けてよかった。荷車の持ち主夫婦がいい人で助かったわね」
「うん、あとは鬼宿が伝言を聞いてくれたらいいんだけど」
ここまで来る間にお世話になった若夫婦を思い出す。
夜の道を若い娘たちが行くことは危険だと、宿として一晩世話になっていた。そのあと、立ち去る時に美朱が言付けを頼んでいた。若い男が自分達の事を訪ねてきたら「追いかけてこないで」と。
彼が夫婦と会うかは分からないが、伝言を頼まないよりはいい。自分的には少し不安だが、美朱の想いをムダにしないため口出しはしていない。
さてと浅葱は城壁を見あげる。あとはどうやって中に入るかだ。
城門を守る兵士たちが何やら紙を改めているところを見ると、通行書が必要らしい。
ふぅ…と軽いため息をしていると、美朱がなんの迷いもなく門番に話しかけていた。
「ちょっと、美朱ぁ!?」
「浅葱~!通してくれるって!」
「はぁ?」
はしゃぐ美朱に浅葱はあんぐりと口を開け、目を瞬かせる。
浅葱が呆けている間に、門を抜けようとしていた美朱は門番に捕まってしまった。
通してくれると嬉しそうにいった傍から捕まったことで、再度目を瞬かせた浅葱は、深々と息を吐き出し前に進み出た。
(どんな説明したのよ……)
「すみません。その子の手を離してくれませんか?」
やれやれと首を振り、門番に声をかける。不審人物として拘束している人間と親し気に話す浅葱に、門番の鋭い眼差しがそそがれる。
うまく誤魔化せる気はしないが、拘束はまぬがれなくては。自分たちは紅南国から来た人間であり、異世界から来た人間。ここで朱雀の巫女バレるわけにはいかない。
ばれたら最後、紅南国に攻め入る口実を与えかねないのだ。浅葱はぎゅっと手を握り締めた。
これはもう、しくじった。ここに来る前に服装だけでも平民か農民、もしくは行商人の服装にしておくのだった。
自分の服は平民と変わらないと思っていたが、用立てていたのは王宮だ。
平民に紛れこむためにやや質素な仕立てだが、生地は上質で都で暮らす人間が着用している物だと一目でわかる。旅の間にそれに気づかなかった自分の落ち度だ。
美朱に至っては制服のまま。一目で現地人ではないのがわかる。
見慣れてしまっていたために、美朱は制服を着ているものと思い込んでしまっていた。
どうする。そう切り抜ける。考えるがいい案が浮かばない。
服装から農民ではないのが分かるし、少量の荷物のため行商人という言い訳は苦しい。
段々と門番たちの眼差しが険しさを増す。
うまい言い訳を考えているとピキンと門番たちが固まってしまった。まるで見えない糸で拘束されているように微動だにしない。
いきなり動かなくなってしまった兵士たちを不思議に思いながら、好機と美朱を引き寄せる。
そのまま中に入り込もうと足を踏み出したその時、一頭の馬が退路を遮ってしまった。
(金の髪に…青い瞳……)
珍しい容姿の騎乗している人物は浅葱達を見下ろし、ついで兵士逹を一瞥した。
「おお、動く!」
「一体この騒ぎはなんだ」
「はっ、この娘が『青龍の巫女』だと申しまして」
「青龍の……?」
冷たい眼差しに美朱は震え浅葱の腕にすがり付く。浅葱もまた緊張に身体を強張らせた。
これはもう捕まる一択ではないか。 しかも、ここを通るために『青龍の巫女』などと美朱が言ったことで、最悪な状況下。
イチかバチか美朱のウソを利用し、彼女を青龍の巫女ということにしてやり過ごすべきか。
いやしかし、兵たちの様子を見るに、どうやらこの男は身分が高いらしい。
このまま皇帝の所まで連れられ謁見されそうだ。
男の今後の動向で自分たちの未来が決まる。金髪美丈夫の男の様子を窺うも腹の内が読めない。ただ綺麗で冷たい気配を纏う男に、背筋にヒヤリと冷や汗が伝う。
男は暫く固まっていた二人を見ると、にっこりと優しく目を細めた。
「これは願ってもない!お探し申しておりました。おい誰か、すぐに都の陛下にお伝えしろ。今から『青龍の巫女』を連れて参上するとな」
「はっ!」
「では参りましょう」
そう言うと男は美朱に手を差し伸べる。服装から美朱が『青龍の巫女』と判断したようだ。
男から手を差しのべられ、美朱は慌てて手を左右に振る。
「こ、困ります!あたし人探しに来たんで、またの機会に……」
美朱の声を遮るように後ろの城門が騒がしくなった。
振り返ると鬼宿が門番二人ともめている。ここにいるということは、あの若夫婦の伝言は聞いていないのかもしれない。
いや、聞いたから連れ戻しに来たと考える方が、鬼宿のあの必死な顔と行動としては考えられるか。
(鬼宿?追い付いたのね…)
城門から聞こえる声で美朱も振り返りぎょっとした顔になっている。彼女は目を見開くと次の瞬間には辛そうな表情をした。
そして勢いよく振り返り、先ほどの言葉を撤回し金髪の男に皇帝の元へ行くことを望んだ。
その際、美朱は自分を守るため『姉』が男装し一緒に居ると言い放った。
(バカ!私のことはいいのに!!)
彼女は巫女の伝承を知らないのだろうか。
巫女とは『異世界からきた少女』のことをさす。
つまり自称とはいえ『青龍の巫女』である姉も、『異世界からきた少女』ということになる。
ここで矛盾が生じてしまった。巫女は一人に対して、候補が二人。
どちらかが『朱雀の巫女』であるという矛盾を。