敵に追われたら異世界に落ちたらしい



 嵐は突然やって来るものだとつくづく思う。


「はじめまして。君が赤井君の言っていた女性だね。私はこの家の家主の工藤優作だ」
「まあ!こんなに可愛らしい子だったなんて!もっと早く知ってたらよかったわ!私は工藤有希子よ。よろしくね」
「……その節は電話でのご挨拶ですみませんでした。あらためまして、野風と申します。こんな不審な人間を住まわせていただきまして、ありがとうございます」
「あらまあ。そんなに堅苦しく考えないでちょうだいな。困っている子がいるのなら助けなくちゃね」
「ああ。それに私個人的にも、君の話は興味深いものだしね」


 そう言って笑う家主夫妻に、私はあいまいな微笑みを浮かべるしかできなかった。
 数分前に玄関を開けた私に言いたい。心の準備をしておけと。
 玄関ではなんだからと、リビングへと二人を通す。今目の前でにこやかに話す夫婦は、この家の持ち主の工藤夫妻その人たち。
 そして彼らの前には私と、いつもと変わらない変装姿の昴さんもとい赤井さん。
 ああ、なんて居心地が悪いの……。



「それにしても、見た目はかわいらしいお嬢さんで、忍者と言われてもいまいちぴんとこないものだね」
「あら優作。女は見た目で判断できないものよ。
でもそうねぇ……私もちょっと不思議には思っちゃうわねぇ。
映画みたいに、こう……手裏剣をバババって敵に投げる事とかあるのかしら?それから煙をだして消える事とかできる?身代わりの術とかもあるのかしら?
そうそう!野風ちゃんは向こうで何をしてたの?それにご両親心配してないかしら?お友達も忍者かしら?あ、不安になってない?」

 優し気な眼差しと真摯な態度の優作さんが茶目っ気たっぷりにそう言うと、今度は可愛さと美しさを兼ね備えた有希子さんが、好奇心を押さえきれないと聞いてくる。
 二人の勢い――おもに有希子さん――に押されながら、私は気圧されつつ答える事しかできなかった。

「はあ……。手裏剣術もクナイも一通りは使います。体術も人並にはできますし、忍術もおなじです。
身代わりの術程度ならアカデミー生……ここでなら小学生くらいの子ですね。アカデミー生もできますよ」
「まあ!そんな小さい子も!凄いわぁ!」

 すごいのか?そうか。この世界ではすごいことになるのか。
 目を輝かせる有希子さんに苦笑いで返す。
 忍びの隠れ里で生まれ育ち、自身も忍者となったからそれが普通だったけれど、忍者がいないこの世界では未知の話になるらしい。
 もちろん、里にも一般人はいるけれど、忍びの里だけあってちょっとのことでは動じない豪胆な人が多い。
 そもそも里が作られて以来、何度も襲撃や壊滅危機を経験すればさもありなんなのだけれど。

「忍術の腕前は分かりませんが、体術はそうとうなものですよ。忍具とやらを使えば、瞬殺だろうと思われます」
「それは凄い!ぜひ今度、取材させてもらえないかい」
「しゅ、取材!?」

 昴さんなんてこと言ってくれちゃったんですか!
 彼の言葉に感化されて優作さんの目が輝きましたけど!?
 聞けば彼は世界的にも有名な作家であり、その妻は元女優なのだそうだ。どうりでこんなに大きな屋敷を持っているはずである。

「あー、すみません。私の存在は秘匿にしていただけるとありがたいんですが……。
それから忍術に関しても、できればこの世界に影響がでないようにしたいので、小説の資料としての取材はご遠慮くださるとうれしいです。
それと優作さんはミステリー作家でしたよね。おそらく私の話を元に書いてもこの世界ではファンタジー小説になると思いますよ」
「ファンタジーか……そうか。うーん、書けないこともないが、忍術がトリックになってしまいそうだな。すまないね、少々興奮してしまった」

 冷静さを欠てしまったと笑う優作さんは、「取材抜きにそれでも」と前置きをし忍者とはなにか、忍術とは何かと聞いてきた。知識欲が止まらない御仁のようだ。さすが作家。
 忍者に関しては血生臭い歴史がつく。
 とりあえず、簡単に忍者とは元来人が持つ精神エネルギーの「チャクラ」を自在に操れる人で、忍術とはその「チャクラ」を使い風や火を起こすなどの術のことだと説明しておいた。
 以前、赤井さんたちに見せたように軽く術も披露し、優作さんの感嘆と有希子さんのはしゃぎっぷりに、なんだか自分がスゴイ人のような気がして、ちょっと照れてしまった。気づかれてなければいいけど。
 さて小難しい話になってしまったので、気持ちを切り替えるために一休みで飲み物を変えた。
 先日、お隣にお菓子を持っていった時に、お礼に頂いたハーブティーだ。
 どうやら紅茶のクッキーが思いのほか灰原という少女に好評だったらしく、珍しい茶葉があったからとわざわざ届けてくれたものなのだ。
 スッキリとして飲み心地がよかったので、暑い中来てくださったお客様に丁度いい。
 そして私の思う通りに、工藤夫妻に好評をえた。これはあの少女にお礼を言わなければ。

「さていつまでも遠回しで話すのも疲れますし、さっさと済ませましょう。それで?私の試しはすみましたか?」

 気持ちを切り替えて、今度はこちらから質問してみる。だって明らかに個人情報の質問をされた。
 忍者関連の質問なら昴さんにもコナンにもされたけれど、二人は私個人の質問はしてこなかった。つまり敵ではないと確信したので、それ以上聞いても意味はないと判断したのだろう。

「まぁ、急にどうしたの?試してなんてしてないわよ?
たまたま日本に用があって、それなら一度迷子のネコちゃんに会ってみたいわよねって話してただけだもの」
「そのわりに、私のことを事細かく聞きだそうとしてましたよ?有希子さん。
優作さんは取材という名目で、有希子さんよりさらに聞き出そうとしていた。つまり、あなた達は私が保護するに値するのか見極めようとしてるんじゃないですか?」

 そう考えれば、最初の質問にも納得する。忍者の話を持ってきたのは、本物か確認するためで、私個人の質問をしたのは情報を漏らす人物かどうか。
 この世界にも忍者といわれる者がいたらしいことは、初日の出来事で知っている。
 それが実在していたのであれ、作られたものであれ、おそらく忍びの本来の役割である情報収集といった点は同じなはず。
 赤井さんやジェームズさんからの依頼もまた、情報に関わるものがもっとも多かったからだ。

「それでどうです?合格ですか?」

 ニッと勝気に口の端を上げ笑う。私の予想はおそらく間違っていないはず。
 ここで弱気になってしまえば、こちらが喰いつくされそうな気がする。目の前の穏やかで無邪気な夫婦に。
 やや沈黙が流れる。最初に声を出したのは優作さんだった。

「やれやれ参った。降参だ」
「やだ優作!認めるの早すぎるわよ!」
「まあまあ有希子。君も分かっているだろう?彼女は最初の質問にしか答えていない。それに聞かれても当たり障りのない話ばかりだ。それこそ小説の題材にしても、ファンタジーだと言わしめるようなね。
忍術とやらに関しても、小規模でしかも実践にはまるで役に立たないレベルのものだった。これ以上聞いても、はぐらかされるだけだろう」
「そうだけど……もうわかったわ。野風ちゃん、試すようなマネをしてごめんなさいね」
「いえ、当たり前のことですよ。気にしてません。むしろ、赤井さんたちがすんなり懐に入れたことの方が驚きです」

 国家組織に所属しているなら不審な所があれば疑うはずが、赤井さんたちは初めから疑うこともなくすんなりと信じてしまっていた。それでいいのかFBI。

「それはそうだろう。いきなり目の前で号泣されたうえ、気絶すれば警戒心も薄まる」
「それは忘れてください!」

 仲間そっくりの男と知らない世界でバッタリ会ったんだから、気が緩んでしまったのはしょうがないでしょう!

「君は中々に面白い人のようだ。さて、本題といこうか。君はなぜ私たちが君のことを調べられていると思う?」
「それは、自宅に身元不確かな人間を置きたくなかったからではないんですか」
「うん。それも理由の一つだ。それ以外には?」

 え?それ以外にあるの?私てっきりそれだけだと思ってたんだけど……。
 えーと、目の前の工藤夫妻は世界的にも有名で、知らない人を懐に入れるようなことはできない。それは自分や家族に危険が及ぶかももしれないから。
 でもこの世界を調べた限り、電子機器が発達し情報化社会とまで言われる時代になってる。
 そんな社会では情報を規制してもわずかに漏れることはある。だから少しでも危険を回避しなければいけないはず。
 つまり夫妻にはそこまでして守りたい「大切な何か」があって、それをを守るために、あえて情報を守れるかを試した。
 ではその「大切な何か」とは何か。
 ここに住むことになった時、夫妻には一人息子がいるが、今は所用で留守にしていると説明されている。だから建物の管理の意味も含め、赤井さんが居候として住んでいると言っていた。
 所用とは何か知らないが、居候して数日経つのに夫妻以外接触がないことから考えると、旅行などで出かけているため居候がいることを知らないのか、もしくは何か身を隠さなければならない事情があると考えた方がいい。
 前者であれば、たとえ旅行だろうと連絡は行くはずだ。そして自分の家に他人が住むことに疑問や不快を示すはず。でもここ数日の間アクションの一つすらなかった。ということは後者の方。
 工藤夫妻の息子は、現在なにか不慮のことが起こり身を潜めているとすると、夫妻が探りを入れるのもうなずける。そして二人の落ち着いた態度から、子供が身を隠していることを工藤夫妻は承知している。
 だから万が一情報が漏れてしまっては、子供に危険が及んでしまうと危惧し、ここに住む以上秘密が守れるのか試した。
 赤井さんは微妙な所だけれど、私たちの会話に口を挟まないことから、ある程度のことは察しているのだろう。
 くっ、涼しい顔で寛いでる……っ。
 
「どうやら、もう一つの理由も分かったようだね」
「ええ、さすが偉大な作家さんですね。こんなことをしなくても、私は誰にも話しませんし、まして探るなんてことはしませんよ。秘密を暴くなんて趣味じゃありませんからね。
私は私が帰るために動くだけで、この世界には極力干渉しないことにしているんです。
現に私の行動範囲はこの屋敷と近所。そして、とある縁で行くことになった喫茶店のみ。そしてそのどれも、私本来の姿ではなく仮の身分といつ姿を消しても記憶に埋もれる程度の変化した容姿です。
……まあ、生きていく上で多少金銭を労働で得てはいますけれどね。
忍びとして知っているのは、あなた方と身元保証人の赤井さんとその上司。この世界で初めて接触してしたあなた方の遠縁だというコナン少年だけ。
彼にはやむを得ず説明しなければなりませんでしたが、年齢のわりに頭の回転が速い。それに様子を見る限り私のことを周囲に話していないので恐らく大丈夫でしょう」

 少し心配なのはコナンの友人の子供たちと、あの安室という男。
 あの後子供たちはごっこ遊びをしていたというし、少し(私が)痛いけれど大人が忍者遊びをしていたと思っていそうだ。
 ただ安室という男は違う。にこやかな笑顔の裏に潜む探る視線。初めて会った姿が本性だとすれば、彼に知られるのはマズイ。
 それにどこまでも追いかけてきそうな気がする。

「……すごいわねアナタ。この数十分でおよそのことがわかっちゃったみたい」
「買いかぶりすぎですよ。私は今まで見聞きした情報を纏め、その中で導き出しただけです。
実際どうなんだか知りませんし、知ろうとも思いません。私が知った所でどうにもならないことなんですからね」

 目を丸くして驚く有希子さんに肩を竦ませ笑って返す。

「そう謙遜することはないよ。私たちは少々君を侮っていたようだ。すまないね」
「いいえ。ではこれで試しは終わりでいいですか?」
「ああ、どうやら君は信用するに値する人物らしいからね」

 優作さんが頷く。どうやら合格を貰えたようだ。これでひとまず、帰るまで住む所は死守できた。
 
「では元の世界に帰るまで、引き続きよろしくお願いします」

 どれくらいかかるのか分からないけれど、彼らの厚意は本当に助かる。心の底からの感謝と安堵と共に、私は深々と頭を下げた。
 そんな私に工藤夫妻はにこやかに笑い返してくれた。ちなみに、赤井さんは珍しく失言少なく表情を緩めて成り行きを見守っていた。
 従兄というのはただの設定だったはずなのに、彼の態度は年の離れた妹を見守る兄のようで、ちょっとこそばゆい。兄がいたらこんな感じなのかも。
 そのあとは、和気藹々と世間話に花を咲かせた。
 私は二つの世界の生活の違いを、夫妻は家庭内で起きたちょっとした笑い話を、赤井さんはアメリカと日本の生活習慣の違いなどを話、意外に楽しい時間を過ごしている。
 その話の中で、友人が街中で口寄せ動物である大蝦蟇を呼び出し、里内で騒ぎになったということを笑い話の一つとして話した時、優作さんの目が光った。
 え?メガネじゃなくて目が光ったんだけど……。
 
「その口寄せとはどういったものなんだい?」
「え……? えーと簡単に説明すると、契約した動物を別空間から呼び出す術ですが……」
「それは先ほど見せてもらった五行系統の術ではないということだね」
「あ、はい」
「ふむ。やはり君の世界の忍術というものは面白いな。まるで魔法のようで、聞けば聞くほど興味深い」

 そう言うと顎に手をあて考える仕草をした優作さんは、そのまま黙り込んでしまった。
 対して有希子さんは優作さんとは別の意味で目を輝かせ、とびっきりの笑顔で身を乗り出している。「本当に魔法みたいよね!」と見たいオーラを出しながら笑顔全開だ。
 ど、どうしよう。見せるも何も、前回呼び出そうとして何も出なかったんですけど……。あ、思い出して軽く落ちこむな……。
 助けを求めて赤井さんを見れば、諦めろと言わんばかりに無言で肩を竦める始末。
 以前口寄せの術を試して失敗したのを見ているんだし、有希子さんを止めてくれてもいいと思う。
 これでまた術を発動させて失敗したらもう立ち直れないよ。
 しょんぼりとそう思っていると、なんと赤井さんが「ここでは実力を発揮できないようなので、動物を呼び出すことはできないようなんですよ」と有希子さんに言ってくれた。

「え?そうなの? でもさっきはびゅーんって風を出してたじゃない? てっきり動物を呼び出すのも同じだと思ったんだけど」
「すみません、あれはちょっと忍術とは違うものなんですよ。チャクラを使って風をおこしているのは確かなんですけどね」

 あれはチャクラを使って周りの空気を集めて回転させていただけの話。口寄せとなるとまた話は別になる。

「野風さん、実力が発揮できないと言うのは今もそうなのかい?それからチャクラといったかな。それの回復はどの程度なのだい?」
「そう……ですね。ある程度の術は使えるようですが、口寄せとなると原因不明で失敗してしまいます。それとチャクラの回復は通常の半分といった所です。
こちらに初めて来たときは、回復するまでに三日かかってしまいました」

 考え事が纏まったのか、それとも話の内容が気になったのか、優作さんもこの話に加わってきた。
 話していて分かったけれど、優作さんは頭の回転が速い人だ。今の話でなにか気になることでもあったのかもしれない。
 その隣では有希子さんが残念と肩を落としていた。
 有希子さんごめんなさい!私も毛並みが自慢の忍猫を自慢したいけれど、こればかりはムリなんです!また煙だけだったら立ち直れない!

「野風さん」
「はい」
「これは私の推測なのだが、もしかしたら君の身体はこの世界に馴染んでいないのかもしれない」
「はい?」

 何を急に言いだすのか。首を傾げる私に、優作さんは左右の指を交錯させ少し前傾姿勢になりながらこう語った。
 事故のような形でこの世界に来てしまったために、私の身体はこの世界に対応できず、体調不良になったりチャクラの回復が遅いもそれが原因かもしれないという。
 もし正式な手順を踏んでさえいれば万全の状態だったかもしれないらしい。
 もちろん、これは推測で実際はどうなっていたのかはわからないけれど、優作さんの言葉には頷けるものがあった。
 そもそも、どうして術が発動したのか分からないのだから、それが時空間移動で私の身体にどんな影響がでたのかも分からないのだ。
 
「先ほど風を巻き起こした時、どこかおかしな感じはなかったかい?」
「いえ、特にはありませんでした」
「ふむ。ということは、力を使いすぎると体が自己防衛に入り、できるだけエネルギーを使わないようセーブしているといったところか」
「あら、それじゃ動物を呼び出すことはできないの?」
「ああ、そうだね。過剰に放出すればその反動で体に大きな負担を強いてしまう。恐らく発動と同時に倒れてしまうだろう」
 
 それはつまり、大きな術を使うことはできないということで、結果帰るための試行錯誤もできないということ。
 え……。まって。それってつまり、ここに永住する道も模索しないといけないの!?
 というか、この世界に体が馴染んでないなら、永住もムリなんじゃないの!?

「ぜ、絶望再び……」

 神様、仏様、六道仙人様。私なにかいけないことしましたか!?

「まあ、そう落ち込まず前向きに物事を考えてみよう。つまりは君の力が完全戻れば、解決の糸口も見えてくるはずなのだからね」
「そうだといいんですけど……たとえ戻ったとしても、手がかりがない以上はどうにもなりませんよ」

 優作さんの励ましに頷くことはできず、返事はため息しかでてこない。
 図書館で探しても嘘くさい話ばかりだったし、この世界には手がかりといえるものはないことは既に分かっている。
 私の知識なんてたかが知れているし、本当に糸口すら見つからないんですけど……。

「うーん……。そう落ち込まなくてもいいと思うわよ?
アナタがいなくなったってことは、向こうのお仲間さんたちも分かっているだろうから、こちらから出来なくとも向こうから何かアクションがあるかもしれないわ」

 あまりにも落ち込みが激しい私を見かねてか、有希子さんも励ましてくれる。
 でもね、有希子さん。もしかしたら私、殉職扱いになってるかもしれないんですけど。
 いやでも、六代目は仲間想いの方だし、一介の忍者でも死んだことが確認できなければ探してくれてる可能性もあるかも。
 あ、仲間という言葉に思い出すのも腹立たしいヤツを思い出した。
 ……アイツ今どこを放浪してるのかしら。アイツなら輪廻眼があるし、もしかしたら世界を繋ぐこともできそうなんだけれど。
 六代目かナルトが連絡してくれてるといいなぁ……。アイツに助けられるのは癪だけどさ。
 二年前のあの日、どてっ腹に風穴をあけてくれたこと忘れてないからね!

「……おい、遠い目をしたと思ったら、いきなり鬼の形相になったぞ」
「あらやだ。ちょっと昔を思い出しただけですよ」

 うふふ。なんて白々しい笑いで返す。赤井さんは何を思ったのか、ポンポンと軽く頭を叩いてきた。
 え?なにそれ。元気づけるためなの?それとも宥めるためなの?
 赤井さんて言葉少ないし、口で言うより物理的に行動で示すから時々頭が混乱するんですが。
 でもポンポンはいいなー。はぁー落ち着く。

「そう簡単に解決するものではないのだろう。なら長期戦でいく心構えの方が幾分気が楽になるだろう」
「……そうですね。もう、あとは里の仲間たちに賭けてみます」
「あらあら。二人は随分と仲がいいのねぇ。一つ屋根の下なんだし、ロマンスなんて起っちゃったりして」
「こらこら」

 有希子さん、今の会話でなんでそんな考えに繋がるの? 優作さんも苦笑いしないでちゃんと止めてください。
 一緒に住んでるから、余所から見ればそういった展開になると思うのも分かりますよ。でも私たちはお互いに一切そんな感情はないのであしからず。
 そういった欲求は、お互いに湧きませんでした。ちなみに赤井さんは私の好みじゃないのです。赤井さんも同じらしいですよ、有希子さん。
 住み始めて最初の二日はお互いの気配に敏感で、ちょっとのことで距離感を測りかねてたけど、三日目にはお互いの存在に慣れてきたと、顔を見合わせて肩を竦め合いましたよ。今では同居人かつ疑似兄妹みたいな感じです。

「赤井さんは兄枠です。それに私の好みは爽やかで優しい人なんですから」

 この人は頼りになる兄貴分ですよ。そう言いながら、有希子さんにニッコリ笑いつつもすっぱり否定しておく。
 そんな私に彼女は「つまんないの」と口をとがらせた。つまらなくて結構です。

「さてと、随分話し込んでしまったな。二人とも急に押しかけてすまなかったね」
「いえ。元々お二人の家なんですから、いつでも帰ってきてください。そうそう、息子さんにもそうお伝えください。
ご厄介になっているのに、息子さんに挨拶もしていないので一度くらいは会っておきたいですから」

 なにか身を隠さなければいけないようなことがあったとしても、二人の息子さんには一度きちんと挨拶しておきたいし。

「野風ちゃんは真面目さんねぇ。わかったわ。新ちゃんにも伝えておくわね」
「はい」

 息子さんは「しんちゃん」というのか。随分可愛らしい呼び名だけど、もしかして思っているより小さい子なのかしら。
 息子さんに家を任せて外国にいるって聞いてたから、てっきり十代後半かそれより上だと思ってたんだけど。

「時計を気にしてましたが、お二人はこの後どこかに用事でもあるんですか」
「うん、まあね。まだ少し約束の時間に余裕はあるんだが、向こうで出版した本を今度日本でも出すことになったからその打ち合わせがあるんだ。
とはいっても、大体のことは向こうで話し合って決まっているし、こちらでは少し詰める作業をすることくらいになるだろうね」
「新作が……それは楽しみです」

 優作さんの新作の話に赤井さんの目が輝いた。読書家だしミステリー好きだから、優作さんの新作に興味を惹かれたのだろうな。
 私はといえば、闇の男爵シリーズ一作目を現在読み進めているといった具合なので、新作を読むのはもう少しあとにしておこうと思う。
 家主が出してる本を読まないのは失礼かと思って読んでるけれど、それが中々に面白くて先が気になってしかたないのだ。
 
「そうなのよ。だからね?野風ちゃん。 少しだけ時間あるし、さっき話てた動物を呼ぶやつ見せてくれない?」
「あ、諦めてなかった……」

 話が反れてハイ終わり!だと安心してたのに、まさかのおねだりだなんて。持ち上げて落とす人ですねアナタ。

「おいおい、先ほどの話をきいてたかい? 彼女は万全ではないのだから、そんな無理なお願いは控えるべきじゃないかな」
「それもそうだけど、やっぱり一度見てみたいじゃない! それに仮に失敗しても、優作もいることだし他の原因とかも見つけられると思うのよねー」
「ほかの原因か……。それは一理あるが、彼女顔が引きつっているぞ」
「まぁ!そんな顔しないの! 大丈夫よ、ここには世界的な頭脳の持ち主が二人も揃ってるんだから!」

 いえ、そういうことじゃなく、アナタのその謎の迫力に引いてるだけです。そして少しだけでも、私がぶっ倒れることを心配してください……。
 出会いからずっと、謎のハイテンションな方でビックリですよ。きっと優作さんは、普段振り回されてるんだろうなぁ……。
 止めてくれと縋るように男二人を見上げるも、二人同時に顔を背けられた。
 ちょっと待って!私に味方は誰もいないの!? 

「……わかりました。でもさっき赤井さんが言ったように、一度試して失敗たので何も出てこないと思いますよ」

 深々とため息をつきながら、ソファーから立ち上がる。どうせ失敗するんだろうけど、万が一ってこともあるし。
 広い所まで行き、軽く深呼吸。前回は今よりもチャクラ量が足りてなかったし、精神的にも不安定だったから落ち込みが半端なかったんだよなぁ。
 横目で三人を窺えば、表情は違うものの皆の目が輝いてる。うわー、やめられない雰囲気……。
……もう、どうにでもなれ!

「――口寄せの術!」

 ボフンという音と共に煙が立ち込める。
 あ、やっぱり失敗…………じゃない。え?なに?
 白い煙から覗く黒い何かが、人の足だと理解するのに時間がかかった。
 私の契約動物は猫だから!人じゃないから!そもそも、人と契約できないから!

「…………ここは、どこだ?」

 煙が晴れ現れた人物はそう言うと、警戒するように周囲を見回していた。でも私はそれどころじゃないの!





「……うちは、イタチ……」

 私は目の前の男を凝視しつつ、前回同様膝から崩れ落ちた。
 なんで死んだ人間が呼び出されるの!?






 一人激しく落ち込む私の周りでは、成り行きを見守っていた三人が驚き声をあげていた。

「ウッソ!?人が出て来たわ!」

 しかもイケメン!と驚く有希子さん。

「これはまたすごいなぁ……」

 感嘆の声をこぼす優作さん。

「猫じゃなかったのか……?」

 若干残念そうな赤井さん。

「え……、なにこの状況……」

 最後にいつの間にか来客していたコナンの戸惑う声。
 というか、コナン少年、なんでこんな時に来ちゃったのかな!? 君にはあれ以上秘密を知られたくなかったんだけど!?
 恨み節をコナンにぶつけると、「安室さんのことで話があって……」引きつった顔で返された。今はあの男のことなんてどうでもいいわ!!

「これは一体どういうことだ……。穢土転生ではないようだが……」

 そうだよね。普通そう思うよね。警戒してかイタチと思われる男の目が黒から赤になる。
 ――写輪眼! やっぱり本物の『うちはイタチ』かよ!
 嵐は突然やって来るものだとつくづく思う。本当にね。二組もいらなかったけどね!
 このまま打ちひしがれたけれど、この場を治めないと収拾がつかなくなりそうだ。
 なんとか気力で立ち上がり、――チャクラ切れや倒れるようなことはなかった――とりあえず確認の意味を含め再度男の名を呼んでみる。

「うちは、イタチ……よね?」
「……お前は?」

  私の言葉に肯定はない。でも否定もないと。

「えーと、木ノ葉の忍よ。今ちょっと特殊な状況に陥っているけどね」
「……」

 味方であると証明できれば一番だろうか。
 証明できるようなものといえば、額当てと腕の入れ墨くらい。でも第三者のいる今、入れ墨は出さない方がいいだろう。
 必然的に暗部の話もしなくちゃいけないし、それはこの世界の一般人には理解しがたい話になる。できるだけ、彼らにはただの無害な忍者と思っていてほしい。

「名前は……ここでは野風と名乗っているわ。あなたとは二度、ナルトと一緒にいたときに会ったことがあるはずよ」
「……ああ、あの時のくのいちか」

 イタチはやや考え、思い出したのか理解したと頷く。
 出会いが木ノ葉崩しでごたごたしていた時だったし、そのあとは風影奪還の時。どちらも急を要する場面だったので、記憶に残っているとは思わなかった。
 うちはきっての天才と言われていただけあって、変化している私のことを理解した洞察力だけじゃなく記憶力までいいらしい。
 
「それでここはどこだ。なぜ俺は生きている」
「あーうん。あはは……。それはなんというか、私にもさっぱり……」
「……?」

 原因なんて分かるはずもない。だいたい、口寄せで死者がでるなんて、それこそ穢土転生くらいなものなんだし。それも媒体が必要な禁術だし!

「保護してもらっている方に、口寄せを見せようと術を発動させたら、なぜか貴方が出てきたのよ」
「穢土転生をしてたんじゃないのか?」
「いやいや!私、そんな外道な術なんて使わないわよ!ていうか、使えないし!」

 誰があんな術使うかっていうの!
 心外だと顔を顰めイタチを睨む。彼はそうかと頷くだけで、特に何も言わなかった。
 表情が動かないから、何を考えてるのか分からないわ。この人……。
 
「えーと、お二人さん。話中すまないが、私たちにも分かるよう説明してもらえないだろうか」

 私とイタチの話に、優作さんが戸惑いつつ口を挟んできた。
 説明と言われても、説明できないことが起こってるので、思わずふにゃっと誤魔化しの笑い方をしてしまった。

「ほう……、それで誤魔化せてると思っているのか?Kitty?」

 昴さんに変装しているのに、もろに素が出てる赤井さんに冷や汗が流れる。
 変装していて優し気な顔立ちなのに、今はそれが威圧的な笑顔と雰囲気で怖い。めっちゃブルブルする!

「この人、野風さんの術で出て来たよね?」

 赤井さんに続いて、コナンがこの目で見てんだよ!なに誤魔化そうとしてんだ。といった目で聞いてくる。
 君、まだ子供でしょ? なんで大人顔負けの笑顔の威圧をしてくるの!?
 
「……わかりました。でも本当に分からないいです。私の契約動物は猫なんで、本当は忍猫が出てくるはずなんです。
それが、なにがどうなってか人を呼びだしたみたいで……」

 体調に変化はないし、チャクラの減りは大きいけれど切れる寸前でもない。
 そう三人に言うと、優作さんはメガネを掛け直し、何か考える素振りをした。
 赤井さんも普段の糸目が前回で、たぶん頭をフル回転させてると思う。コナンも同じ。
 有希子さんに至っては、イタチを見ながらニコニコと笑っていた。もしかして、イケメン好きですか? そうですか。

「煙が出てたのは前回と同じだったな。ボウヤ」
「うん。でも今の方が煙の量は多かった気がするよ。それから少し赤い電気みたいなのが走っていたと思う」
「ああ。前は光すらなかった」

 一度目を見たことがある二人が、前回との相違点を話し合う。
 よくもまあ見ていること。術発動なんて、一瞬のことなのに二人には差異がわかったらしい。頭が良すぎて怖いんですけど。

「赤い光……?」
「え、あ、うん。一瞬だったけれど、確かに光ってたよ?」

 いきなりイタチに話しかけられ、コナンが驚きつつも答えた。
 いまだに写輪眼だから、その目力に気圧されたらしい。しかも瞳の中には巴模様が浮かんでいるから、異様に見えるみたいだ。

「普通口寄せは術発動時、時空間移動の際の歪みが煙となって現れる。光を発し口寄せされた話は聞いたことがない」
「でもボク確かに見たよ?」
「いや、疑っているわけではない。ただ彼女が行った口寄せは、どうやら忍術に何かの力が加わったらしい。……しかし、俺が呼び出されるとは――」

 うん、わかる。死んだハズの人間が普通の口寄せで蘇るはずもないもの。呼び出した私もビックリよ。

「うーん。話を聞く限り、見せてもらった術は失敗っていうことになるのか?
……野風さん、この術の継続時間はどのくらいなのかな?」
「術者のチャクラ量や契約動物によりますが、およそ三十分から一時間っていったところでしょうか。私の場合は三十分程度で戻ることが多いです」
「ふり幅があるということか。まあ、一応成功ということになりそうだけど、彼が一時間以内に消えるかはわからないか」
「そう、ですね……」

 死者を呼び出して成功と言えるのか甚だ疑問だけど。

「ねえ、もしも消えなかったらどうするの?」
「そうだなぁ……」

 コナンの疑問はもっともで、彼の疑問に優作さんは少し間を置いただけでニッコリと笑った。

「その時は、問題が解消されるまでここに居たらいい」
「あら!いい考えね!」
「え!?だって知らない人だよ!?」
「二人も最初はそうだっただろう? 大丈夫、彼を見る限り何かをするような人間じゃなさそうだ」

 なんの確信をもって言ってるんですか優作さん。
 チラッとイタチを盗み見、小さく息を漏らしてしまった。彼がビンゴブックといわれる、抜け忍や犯罪者が載る本に載っていたと知ったらどう思うんだろう。
 私の視線に気がついたイタチが静かに見下ろしてくる。整った顔立ちはまったく動かない。感情の起伏がない人情みたい。
 でもその目はどうして蘇ったのかと言いたげな眼差しで、私は少し罪悪感で胸が痛んだ。
 戦後、彼の真実を知った身としては、本当は安らかに眠っていてほしい。里のために生きた人だから。

「そういうわけで、赤井君。すまないが、一時間以内に何も変化がなければ、彼も一緒に住まわせてあげてくれないか」
「私はかまいませんが、よろしいので?」
「かまわないよ。それに、彼がいることで彼女の戻る手がかりが得られるかもしれないからね」
「……わかりました」

 優作さんの言葉に、赤井さんが了解と頷く。赤井さんはこれといって反対する理由もないからね。
 その隣ではまだ納得がいかないと、コナンがむくれ顔で優作さんを見上げている。
 コナン少年、これはイタチが消えなかったらという前提の話だから、そう不満顔でいないの。

「――というわけだ。すまないが、彼のこともあるし有希子はここで留守番を頼んだよ」
「ま、そうなるよね。大丈夫。元々は私が無理なわがままを言った結果なんだし、いいわよ。こっちのことは気にせず打ち合わせに行ってきて!」
「すまない。助かるよ」

 胸を張って請け負う有希子さんに、優作さんが苦笑いで返した。
 約束の時間が迫ってきてしまったらしい優作さんは、イタチに「自分が帰って来てもこの状態が続くのなら、あらためて挨拶をするから」と言い残し、リビングから出ていった。
 残ったのは、状況を見極めようとずっと沈黙を保つイタチと、その姿にどんな人間か探るコナン。
 さらにその二人を観察し今後を考え始めた赤井さんと、思わぬハプニングに遭遇しつつも赤井さんとはタイプの違うイケメンを前に微笑む有希子さん。
 私はと言えば、この空気をつくってしまったことに、軽く落ち込みつつどうしようかと久しぶりに頭を回転させていた。
 でも考えても何も浮かばない。私頭よくないからなー……。

「えーと、とりあえず自己紹介……かな?」
「そうね!もしかしたら、しばらく一緒に住むことになるかもしれないし、名前くらいは知っておいた方がいいわよね!」
「……なんかムダにテンションたっけーな。ほんと面食いだよな」
「あら―?コナンちゃん、何か言ったかしらー?」
「べ、別にー!」

 笑う有希子さんと顔がひきつるコナンに、私は首を傾げる。ずいぶんと仲がいいわね、この二人。親戚というより親子みたい。
 おっと、二人のことは一先ずおいて、軽くイタチに三人のことを紹介しておくのが先ね。三人もイタチの名前くらいは知っておいた方が、後々よさそうだ。
 ただここで一つ注意すべき点は、赤井さんの名前と変装のこと。イタチの正体も話せる範囲が限られるいうことよね。
 赤井さんの変装は、イタチの事だから見破っていると見ていい。というより、もう既に色々と察していそう。あの写輪眼だし、あのうちはイタチだしさ。
 赤井さんとコナンは頭の回転が速く敏い。イタチの話を通して、こっちも色々と察しそうで怖いんだよねぇ。
 有希子さんも結構侮れない人だから、ボロが出ないようにするのに一苦労しそうだ。……うわ、なんか全部投げ出して部屋にこもりたい。

「えーと、とりあえず名前だけでも知っておいて損はないってことで。
イタチ、この人たちは私がお世話になっている方々で、右から工藤有希子さん、赤井秀一さん、江戸川コナンくんよ。
――で、この人はうちはイタチ。私と同じ世界の人間で、色々事情があって死んじゃった人なんだけど、どうしてだか生身の体つきで呼び出しちゃったみたい」
「はあ!? この人死んでんの!?」
「うん。そうなんだけど、なんで肉体があるのか私にもよくわからなくて。あったかいし、血は通っているって分かるんだけど……」

 無防備に落とされているイタチの手を取って確認しつつ、驚くコナンに頷く。
 どうやらこれには赤井さんも驚いたらしく、糸目から大きく開かれた。文字でいうなら「くわっ!」という効果音がつきそうな食いつきだ。
 え? なにかスイッチはいっちゃった? しきりにイタチの手を見ちゃってるんだけど。
 
「本当に不思議……」

 フニフニとイタチの手を揉んで確認しても、生きている人間と同じ感触。温かさと柔らかさに私は首を傾げ唸る。
 うー、少しでも医療忍術かじっておけばよかった……。



「うふふ!なんだか、とっても面白くなりそうな予感がするわ!」
 
 なぜか有希子さんが生き生きとした笑顔で、そう言っているのか分からず、手をフニフニしつつ私は「何がですか?」と首を傾げた。



―――――――――――
登場人物


▼ 色々テンパってる女

お世話になっている家の人にやっと挨拶できた!
話の流れで試されたと思っていたら、披露した忍術で人を呼びだしてわたわた。
なにがどうなってるの!?


▼やっと居候に会えた夫婦

想像よりも小さいのにバイタリティーあふれる女性でビックリ。
息子を守るため、彼女の個人情報を引き出せるか試してみたけどダメだった。
自分の情報を出さずはぐらかされたけれど、頭の回転も悪くないし察しもいい。これなら息子の秘密も守れる。
うん!合格!
我がままを言わなければよかったと、ちょっと反省しました。


▼姿は好青年

変装した姿だけど、わりと素で話していた。
先生の新刊!? それは是非とも読みたい!今から原書取り寄せるべきか。
死んだ人間を呼び出したことにビックリしたけど、それよりも手をフニフニしている姿が胸に突き刺さった。
ネコのふみふみ……。


▼抗議と相談しにきただけなのにな小学生

三つの顔の人に笑顔で質問されまくってヘロヘロ。
もうどうにかして!と勢いよく乗り込み、結果別の心労を得た。
は!? 目が赤くなったし! つーか、なんで瞳孔以外に模様があんだよ!オマケに死人だと!?
もう色々分からないし、突然出て来た男が怖すぎて信用できない!


▼生き返った男

穢土転生を解除して弟ときちんとお別れで来たと思ったら、目の前に知らない人がいた。
幻術かと写輪眼で観察して、小学生に怯えられた。地味にショック。本当は子供好きなのに。
口寄せで呼ばれたらしいけど理由は不明。とりあえず、口寄せ時間が切れるまで待つに異存はない。
手をフニフニされちょっと緊張がとけた。きもちいー。
10/14ページ
スキ