第十三話
夢小説設定
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皇后崎から逃れた深夜は再び街中を逃げていた。
しかし、背後に気配を感じた彼は振り返る。
「?」
そこには追いついた皇后崎が壁を渡って降りてくる姿があった。
「逃げてんじゃねーよ!」
「くっ!」
迫る皇后崎を前に深夜は再び左目を手で覆って右目で彼を捉える。
ドッ
視界を奪われた皇后崎は上手く着地できず、地面に体を叩きつける。
その間に深夜は逃げ果せた。
「くそ!厄介だな、あの能力!」
皇后崎は起き上がって深夜の後を追う。
一方で深夜は目の痛みに苛まれていた。
「(連続で能力使い過ぎて目がいてぇ)」
その時、彼の目の前に人影が現れる。
深夜は立ち止まった。
『なるほど、左目で相手の視界を覗くことができて、右目で自分の視界を見せることができるんだ?』
「"死を呼ぶ蝶"…!」
『そのあだ名好きじゃないけどさぁ…お望みなら死だろうとなんだろうと呼んでやるよ覗き野郎』
「ひっ…!」
殺気を放ちながら睨みつける命にビビった深夜は、横の道へ逃げていく。
2人で追いかけると、深夜は建物の中へ入って行った。
「(建物!?)」
皇后崎と命もその建物に侵入する。
階段を駆け上がって行き、深夜が潜む一室の前までたどり着く。
「あんたは後ろにいろ。俺が片付ける」
『…気を付けて』
「あぁ…」
それだけ交わすと、2人は部屋に侵入した。
無機質で何もない部屋の窓辺で、深夜は座り込んで項垂れていた。
追いつめられた彼は、憎々しげに皇后崎を睨みつける。
「しつけぇんだよ…」
「追い詰めたぞ…」
「…っ!」
深夜は歯を食いしばると、これまでの苛立ちを吐き出すように皇后崎に罵詈雑言を浴びせる。
「なんで計画通り死なねぇんだよクソがぁ!ゴミクズが…一丁前に頭使ってんじゃねぇよ…計画通り動いて計画通り死ねばいいのによぉ。あとちょっとで上手くいったのに…殺す上手くいったのに…殺すのかよ…?俺をよぉ…」
「殺す」
「俺が桃太郎だからか…?」
「それに加えて、お前は人を巻き込み過ぎだ」
皇后崎は深夜に疑問をぶつけた。
「なんで子供を巻き込んだ、なんで関係ねぇ人を巻き込んだ、お前らは一般市民を守るのが仕事だろ…そんな奴に…!ゴミ呼ばわりされる筋合いねぇんだよ!」
「…!くだらねぇ…知らねぇ奴が死のうがどうなろうが、知ったこっちゃねーんだよ!俺は俺が偉くなるためなら、なんだってやるしそれ以外はどーでもいい!」
聞くに堪えない言葉が皇后崎にぶつけられるが、彼は黙ってそれを見ていた。
「ガキ!?知るかバーカ!ガキ数人殺して出世できんなら喜んで殺すだろ!市民を守るだぁ?くだらねぇ!桃太郎全員そー思ってるわけねーだろ!むしろ鬼に殺されてくれた方がありがてぇんだよ!そうだよ!はは、お前らもっと市民殺せよ!殺せ殺せ!その方がその鬼ぶっ殺した時、俺の評価が上がんだろ!」
正義を語る人物とは思えない下衆な考えを吐き出す深夜を見ながら、皇后崎は別のことを思い出していた。
「(こいつを見てると、少し前の自分を思い出す。あの時、無陀野と蝶世がキレてた意味が少しわかる…)」
かつての自分と重ね、嫌悪を露わにした表情で深夜を睨みつけた。
「大っ嫌いだよ…!テメェみてぇな奴は…!お前は生かしておいちゃいけねぇ…鬼にとっても…人にとっても…だから俺が殺す!」
彼は血蝕解放をしながら深夜に迫っていく。
「出世がしたいんだろ?喜べよ、死んだら二階級特進だ」
本気で自分を殺す気だと悟った深夜は青ざめる。
「来るんじゃねぇ!クソクソクソ…!こんなガキに…俺がやられるなんて…ありえねぇ…どこで何を間違えた…?いや…俺は間違えてねぇ…間違えるわけがねぇ…」
「なさけねぇ…最後ぐらいシャンとしろ」
「こんなの間違ってる…絶対に…ありえない…絶対にありえない…ありえない…
あっりっえっな~い♪」
カコ
歩いていた皇后崎の足元が僅かに沈んだ。
「!?」
「死ねバーカ」
ボッ
爆発音とともに、強い衝撃波が部屋を破壊する。
窓は割れ、部屋はボロボロになった。
土煙が舞う中で、深夜の笑い声が響く。
「ひひひ…(バカが!余裕綽々で近づきやがって。この部屋のタイルにはいくつか爆弾を仕込んであんだよ。巻き込まれないように小型だけど足くらい吹き飛ぶ。ぶっ殺してやりてぇが、今のうちに撤退だ…立て直して殺してやる…必ず…)」
ビュッ
その時、深夜の喉元を何かが掠めた。
彼の隣には爆発に巻き込まれたはずの皇后崎がいた。
「え?」
驚いたのも一瞬で、その次には彼の喉元はくぱ…と切り裂かれた後だった。
そこからドロ…と血があふれ出て、みるみるうちに大量出血が始まる。
「あ…」
深夜は咄嗟に傷口を抑えるが、傷が大きすぎてどうにもならなかった。
そんな深夜に皇后崎は言い放つ。
「お前は本当に汚い奴だな。だから想像しやすかった、お前みたいな奴は必ず仕組んでるって」
『ほんの僅かに、違和感のあるタイルがあったからね。なんかあるって一目でわかったよ』
皇后崎の人差し指から、小さな血の刃が飛び出ている。
彼の背後では邪眼を発動する命が控えていた。
「お前は色んな人を巻き込んだ、そして嘲笑った、その結果がこれだ」
「息が…ヒュー…でぎな…ヒュー…」
血まみれで地面に這いつくばって、涙や鼻水を流しながらもがく姿は…
「無様だな」
皇后崎は深夜を冷たく見下ろしながら吐き捨てる。
「せめて地獄では罪を悔いろ」
深夜は彼を憎々しげに睨みつける。
最早、言葉すら発せられない様子だった。
『…大丈夫?』
「なんともねぇよ。こんな奴殺して胸が痛むと思うか?」
『なら…よかった』
「……」
皇后崎が殺しに気を落としていないことに安堵する命。
一方で深夜がもがきながら吐き出したのは、懺悔ではなく願望だった。
「俺だって…欲しかったよ…圧倒的な才能ってもんが…」
命は深夜を見据えながら考えた。
視界を覗くだけの能力で、花形の戦闘部隊の隊長になるのは並大抵の努力ではできないはず。
彼なりに努力はしたのだろう。
しかし…その方向性を間違えてしまった。
その結果がこの結末だ。
もう長くないと察した命は皇后崎の肩を叩いて、戻ろうと促す。
彼もそれに了承して、深夜に背を向けた。
「次だ…ガハッ…次はこうならねぇ…ゲホッ、来世は絶対…圧倒的才能を…引いてやる…」
背後で深夜が力尽きる気配がしたが、2人は振り返らなかった。
