第十一話
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4人は東京の空を飛んでいた。
命の近道とは、建物の屋根や屋上をジャンプして飛び渡ることだった。
鬼の身体能力があってこその方法である。
「この調子ならすぐ着くよな!」
『5分もかからないよ』
病院まであと少しというところで、異変が起こる。
「命、皇后崎、四季。先に行け」
「先生は?」
無陀野はビルの屋上に降り立つと、ローラースケートで器用に方向を変える。
「招かれざる客だ」
それだけ言うと、彼は確認するように視線を動かして別方向へ飛んで行った。
「行っちゃったよ」
『お気をつけて!』
命は遠ざかっていく背中に言ってやった。
残された3人は病院へと急ぐ。
人気のない路地裏に降りると、そこを抜けて大通りへ出る。
「もう着くか?」
「あぁ、ここを曲がれば…」
建物の角を曲がって、目的地の病院が目と鼻の先という所で3人は思わず立ち止まった。
ゴオオ
病院は真っ赤な炎に呑まれていた。
「燃えてんぞ!?」
『(どういうこと?タイミングが良すぎる)』
皇后崎が危惧した通り、少女が入院するという病院が火事になった。
だとしてもあまりにもやることが早いと命は思った。
呆然としていると、燃える病院に向かって皇后崎が走り出す。
「おい馬鹿!どこ行くんだ!」
『待って、迅君!』
「チヨ先は此処にいて!俺が行くから」
命が追おうとすると、四季が止めて彼が皇后崎を追いかける。
「おい待て!君たち!」
一般人の静止も無視して、2人は燃える病院の中に入って行った。
『怪我しないでね…』
静かに呟くと、命は燃え続ける病院を見つめながら冷静に分析を始めた。
『(火をつけたのは半グレで間違いないとして、どうしてこんなにもすぐに行動を起こせたの…?まるでこっちの動きが読まれてるみたい)』
彼女は拘束された皇后崎を思い出した。
目立った外傷はなく、暴力を振るわれた形跡はない。
強いて言えば…体が濡れていたくらいだ。
『(濡れてる…水をかけられた…?)』
その時、命のスマホの着信音が鳴った。
突然のことに少し驚きながらも、彼女は人込みから離れてスマホを取り出す。
画面には“四季”の名前が表示されていた。
ピッ
『四季君⁉大丈夫?』
(あっ、繋がった!チヨ先、俺ら今病院の中にいるんだけどさ、ちょっと頼みがあるんだ!)
『頼み?』
(そう!俺と皇后崎とチヨ先で逃げ遅れた人達を助けるんだ!)
『…方法はあるの?』
(ある!でも俺達だけじゃ無理だ、だからチヨ先も協力してくれ!)
『…私は何をすればいい?』
今は分析より人命救助が先だと、命は四季達を手伝うことにした。
………___。
『四季君!こっちこっち!』
「おぉおぉ!」
命は病院の非常口を開けて、走ってくる四季に手を振る。
彼の背中には年老いた老婆が背負われていた。
「ばあちゃん、ここから外出れるから!さっさと逃げろ!」
『おばあちゃん、私が安全な場所まで案内します。安心してください』
「爺さん置いていかないでおくれ!あの時、布団の中で一生離さないと言ったじゃないの!」
「やめろ気持ちわりぃ!」
『大丈夫ですよー。本物のおじいちゃんなら向こうにいますからー』
なんとか老婆を言いくるめて、安全な場所まで案内した命。
四季から頼まれたのは、自分が救助した患者を誘導することだった。
『でも…どうして逃げ遅れた人の場所がわかるの?』
「あれだよ、偵察の兄ちゃんがくれた血」
『え?…あぁ、あれ!』
四季は馨の血が入った小瓶を持っていた。
その血を使って、病院内に取り残された人達を把握したということだ。
『でも四季君使えなかったじゃん』
「皇后崎だよ、あいつ普通に使えんだぜむかつく…」
『……』
だとしても負荷はかなりのものだろう。
しかもこの炎の中だ、彼の体が持たないかもしれない。
自分が代わろうかとも思ったが、あの皇后崎が素直に言うことを聞いてくれるとは思えなかった。
『四季君は熱くないの?』
「ああ、なんか知らねぇけど全然。もしかしたら鬼神の力が関係してるのかもしれねぇ。だから俺がみんな連れてくるからチヨ先はこのまま誘導し続けてくれ」
『わかった。どんどん連れてきて』
